この事態における教員養成四方山話 (愛知教育大学教職大学院 野木森)

 教職大学院生にとって、修了報告書の作成につながる教育実習は、最も大切な学修です。ところが、この事態で実習計画を何度も作り直す事態となっています。
 まず、「協調学習」を実践しようとしていた学生は、現場から「授業で話し合いをするのはダメ」と言われ、やむなくテーマを「振り返り学習」に切り替えて理論を書き直しています。また、体育の学生は、「マット運動」で一単元分の指導案をほぼ完成させたところで、「カリキュラムを組み直したので、ハードル走になった」と言われ、新たに指導案を作り始めました。
 現職の院生は、現任校で若手を指導する「メンター実習」で苦慮しています。計画では、若手教員に授業カンファレンス等を行い、指導助言をした上で効果的な指導のあり方について省察するという内容です。ある院生は、メールで「メンター実習を、昨年度の未履修分野の内容が終了し、且つ分散登校の対応が終了する6月1日から開始します。実習時間が35時間以上とあるので、およそ6月1日から2,3週間でしょうか。今後、休校期間や分散登校の期間が延びた場合、実習の開始日がずれ込むことが予想されます。いつ実施できるか分かりません。」と相談してきました。授業日に行うという、平時の実習モデルにこだわっています。今は緊急時です。発想を転換する必要があります。私が返したメールの概要は、以下の通りです。
―以下、メール文―
コロナの影響で、授業再開が見通せない中、苦慮していらっしゃることと思います。そこで、提案ですが、思い切ってこの機会を利用してはどうしょうか。つまり、教材研究は、子どものいない今こそチャンスです。教材づくりや単元計画、及びその助言は、子どもがいない今でもできます。むしろ、休校中に子どもに出すべき適切な課題の検討や、遠隔授業のやり方を共に研究するなど、この事態に適した内容を取り入れてもいいかもしれません。授業カンファレンスも、模擬授業を通せばできます。複数の先生方に生徒役になっていただくなど、ご協力いただけばいいのです。授業日に2〜3週間などと固定的に考える必要はありません。授業再開を待たず、できる時に随時行いましょう。いやむしろ、既に行っているのではありませんか。教科に関して相談されることがあれば、それは既に若手育成の実習です。
それらの日時や指導内容を随時記録して35時間に達すればいいのです。そして、それらを最後に振り返って、自分の若手育成にどんな効果があったか、どんな課題が残ったかを自己省察して報告書にまとめれば、実習は成立します。この機会に、当該若手教員への指導の機会を積極的に仕組んでください。今後、事態の悪化は、いくらでも起こり得ます。手をこまねいていては、時間が過ぎるばかりです。これを機会に、自らの実習をセルフコーディネートしてみてください。今できることに取り組みましょう。
―メール文、以上―
いかがでしょうか。折しも、学習指導要領が示す「予測困難な時代」が、こんな形で急来してしまいました。今必要なのは、「変化に受け身で対応するのではなく主体的に向き合い、自らの人生を切り拓く力」(どこかで聞いたような言葉ですが・笑)です。教員こそが柔軟に対応したいものです。

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