ゼミ生スクールライフノートの活用について話し合う・その1(玉置)

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 玉置ゼミでは、今後、スクールライフノートの活用実践を始めます。そのために、以下のように、5期生で活用について話し合いを始めました。その記録です。

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 こんにちは!五期生の北神です。今回は、5月27日のゼミでの学びについて書きます。今回のゼミでは、「スクールライフノート」をどのように活用していくかについて話し合いました。

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 「スクールライフノート」では、「心の天気」を朝と帰りに押すことができます。まず、私達玉置ゼミ五期生は、今まで通り一日一回押すことにするのか、それとも一日二回押すことにするのかを話し合いました。

・嫌なことがあった日も最後が良ければ晴れでいいと考えており、一日の一番最後に天気をつけるようにしてきた。だから一回で良い。
・朝に雨を押したとしても、その後に良いことがあり、気分が変わったと感じた時には天気を変えてきた。二回の方が後から見てもその変化が分かりやすい。
・二回にすると、やらなければならないという思いが強くなり、本来の趣旨とズレてしまうのではないか。天気が変わったと感じた人だけが変えれば良い。
・心の天気は気軽に押すことができる所が良い所。時間は決めずに、変わったと思う時に押せば良いのではないか。

 上記のように、今までの「心の天気」の体験をもとにした意見がたくさん出てきました。自分にはない視点がたくさんあり、なるほどなと思う意見ばかりでした。最終的に、全員が一日一回は押し、天気が変わった人は二回押すことになりました。

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 また、「スクールライフノート」には「学びの天気」という機能も加わりました。時間割に合わせて、授業ごとに天気を押すことができます。私達玉置ゼミ五期生はゼミ後に行うことを決めました。そして、「心の天気」は非公開(教師のみ見ることができる)になっていることを踏まえ、「学びの天気」はどうするのかについて話し合いました。

・非公開の方が、素直な気持ちを表すことができるのではないか。「全然分からなかった」ということを全員に公開することには勇気がいる。
・まずは非公開にし、教師が他の子にも見せて良いと判断した場合に公開にする。
・子どもが公開か非公開を選択する。先生だけに伝えたい内容の時には非公開にしたい。

 私達のグループではこのような意見が出ましたが、こちらは全体の最終的な結論をまだ出していません。この時には、公開に対して肯定的な意見はあまりありませんでしたが、栗木先生のお話をお聞きした上で「学び合い」の視点から考えると、公開した方が子ども達同士で支え合うことができるのではないかと思い始めました。他のゼミ生の意見を聞いて更に学びを深めたいと思います。(北神)

玉置ゼミ生「心の天気」1ヶ月半の感想

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 玉置ゼミでは、EDUCOMとの共同研究をしています。その一つが「心の天気」の実践です。

 以下の資料は、2月中旬から3月まで、自分自身で「心の天気」を入力しつづけての感想です。お読みいただくと、学級経営に確かに生かせるものだと確信していただけると思います。

 <資料> 「心の天気」に取り組んだ1ヶ月半の感想

 長文ですが、ぜひお読みください。ぜひとも我が学校で、学級で活用したいと思っていただけると思います。(玉置)。

この事態における学校でのICT活用四方山話 Topic3<神戸>

緊急事態宣言が関西3府県でも解除され、段階的緩和がさらに進んでいくことでしょう。緩和されつつも、「3密」を避ける手立てが講じられ、今までとは違った「新たな日常」の様子が、多数報道されています。学校も、緩和されたからといって、以前と同じように授業等を進めていくことはできないでしょう。緊急事態宣言が解除され、子どもたちが登校し始めたときが、新たな取組のスタートになるのではないでしょうか。
 学校が、「3密」を避けるための一つの方法として、分散登校があります。分散登校で、登校できない子どもたちのためには、学校から配付されるプリント教材や、動画教材が考えられますが、ここでは、テレビ会議システムについて考えてみたいと思います。
 テレビ会議システムを使って、どんな形の分散登校ができるかは、Topic2で紹介させていただきました。今回は、テレビ会議システムそのものについて、先生方とのおしゃべりから耳にした四方山話を書いてみようと思います。

◆ 教室で行う授業と、オンラインで行う授業との併用が、これからの「学校の新たな日常」となるかもしれません。そうなると、各自治体・学校は、オンライン授業を行うためのシステムを選択しなければなりません。教育専用のテレビ会議システムは、あまり聞いたことがありません。企業がテレワークで使っているシステムを、教育でも活用しようとしているところが多いのではないでしょうか。ところが、授業と会議とでは、どうしても違いがあります。
 オンライン授業では、授業に参加している子どもの雰囲気や表情を把握することがやや困難です。特に、小学校や中学校の授業では、子どもたちの表情や反応で、授業を変化させていくことが多くあります。そうなると、少なくとも参加している子どもたちの表情が見られることが、大切なポイントとなってくると考えられます。分散登校を行う場合、40人学級を半分に分けて登校させる学校では、20名程度の顔が見られるシステムがあるといいと思います。また、学級単位や学年単位で分散登校を行う学校となると、36〜40名程度の顔が見られるシステムが必要になると思われます。
 あるテレビ番組で、大学教授が「オンライン講義中、多くの学生は、ビデオを停止させています。だから、真っ黒な画面に向かって一生懸命話しかけているのです。」と仰ってました。と言うことは、多くの参加者の顔が見られなくても、特に問題はないということです。せいぜい、発言者(講演者)の表情が見られれば十分と言うことになりますね。
 どんな授業を計画しているか、どんな学年(年代)のオンライン授業かを考えてシステムを選ぶことと、子どもたちとの約束事を決めていくことがとても大切になってきます。

◆こんなテレビ会議システム?
 テレビ会議システムは、動画配信と違って、リアルタイム双方向の授業が可能になっていくのではないでしょうか。新学習指導要領の趣旨から考えても、一方通行の一斉型授業にならないような工夫は、これからの授業づくりの重要なポイントとなっていきます。
 そのような点を考慮し、次のようなことができるテレビ会議システムがあると、少しは教室で行う授業に近づけると思いませんか。
 1) 参加者全員の表情が見られる。
 2) 参加者全員の作業内容が見られる。(PC画面やノートなど)
 3) グループでの話し合いができる。(話し合い、資料等の共有が可能)
   教師は、すべてのグループの様子がリアルタイムに一覧できる。

今、思いつくことはこの程度になりますが、実践を重ねていくことで、さらにいろいろ出てくることと思います。

 今後は、教室の授業とオンラインの授業の併用が円滑に行われ、どんなときにも、子どもたちの学びが途切れることなく保障されるよう、1人1台のPC導入と、それを活かせるシステムの導入が課題となっていくことと思われます。

保護者の声に耳を傾ける姿勢を見せましょう(大西)

新型コロナウイルによる休校で、学校と保護者の連絡手段としてホームページが大きな役割を果たしました。子どもの姿で伝えよう(大西)でも述べたように、学校の再開後もその重要性はますます高まります。保護者はニュースなどで先進的な学校の安全対策や授業への取り組みなどが紹介されると、自分の子どもの学校はどうだろうとホームページを見ることと思います。その時、安全対策などの情報や子どもたちの様子がきちんと公開されていれば安心できます。逆に、更新が止まっているようだと不安を抱かせてしまいます。たとえ情報が公開されていても、紹介されていた取り組みと比べて見劣りすると、なぜ同じようにできないのかと疑問を持たれるかもしれません。地域や学校ごとに置かれている状況は異なるので同様にはできないことも多いのですが、保護者はそのことを理解できていないので、どうしても疑問や不満に思うのです。それでも、直接学校に電話して質問する方はまれです。学校が大変な時期であることはわかっているからです。自分の気持ちを吐き出せずにもやもやした気持ちを抱える保護者も一定数いることになります。学校も、保護者から質問をいただければきちんと説明できるのに、保護者の不安や不満を解消する機会を失くしています。

この問題を解消するには、保護者の疑問や不安、不満を学校の方から聞く姿勢を見せることが大切です。すぐに思い浮かぶのはアンケートですが、紙のアンケートでは保護者も学校も負担が大きく、回収率を上げることも難しいです。また、学校再開後はどうしても想定外のことがおきたり、不備があったりします。その改善には保護者から素早く情報をもらうことが必要です。ホームページや双方向の連絡システムのアンケート機能を活用することが有効です。例えば、子どもの様子や不安を選択肢で回答してもらうと同時に自由記述欄を設け、心配事、疑問何でもよいので記述してもらうのです。学校が一人ひとりの子どもの様子を気にかけている、保護者の疑問や不安を聞こうとしてくれていると感じるだけで不安は和らぎます。
ここで注意しなければいけないのは、アンケートの後どれだけ素早くレスポンスするかです。この点でもネットを活用したアンケートシステムは有効です。回答の集計やグラフ化は一瞬でできます。また、双方向のシステムでは確実に保護者に届きますし、既読かどうかも確認できるので、アンケートの期限を短くしてすぐに集計に入れます。アンケートの結果が忘れたころに公表されるといったことはありません。
もう一つ注意すべきは、集計結果を公表するだけでなく、簡単でよいので必ずその結果に対して学校の考えを伝えることです。保護者からの回答を学校ではどのように受け止めているのか、特にネガティブな回答に対しては、具体的にそうなっている理由や対応を伝えることが必要です。たとえ実現が難しい要望であっても、その裏にある保護者の思いに寄り添い、難しい理由をてていねいに説明して理解を得ようとすることが大切です。要望が通らなくても、学校が真摯に受け止めてくれていると感じれば、学校は聞く耳を持っていると納得してくれます。不安や不満を減らすと同時に学校のへの信頼を増すことにつながっていくのです。

学校再開後は、保護者からの信頼が学校経営にとって今まで以上に大切になります。そのためには、学校が聞く耳を持っていると保護者に感じてもらえることが何より大切です。忙しく余裕のない時だからこそ、積極的に聞こうとする姿勢が求められます。ネットを活用したアンケートシステムを上手に使って、保護者の信頼を得てほしいと思います。

(株)EDUCOMでは、アンケート機能付きのホームページ作成ソフト「スクールWebアシスト」と、学校と保護者を結ぶツール「C4th Home & School」を現在無償提供中です。是非この機会をご活用ください。
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子どもの姿で伝えよう(大西)

新型コロナウイルスによる休校からの学校再開が一部の地域を皮切りに進み始めています。とはいえ、新型コロナウイルスの脅威が完全に去ったわけではありません。学校では子どもたちの安全を確保するために多くの対策をとることが求められます。地域や学校の状況によって異なりますが、机や昇降口の消毒といったことも先生方の負担となっているところもあります。除菌シートを求め、先生方がスーパーマーケットを手分けして探しているといった話も聞きます。学校の再開は先生方に大きな負担をかけることになります。それでも先生方は嫌な顔をせずに子どもたちの安心安全のために全力を尽くされるのだと思います。頭が下がる思いです。

子どもたちの安全のために、座席の配置や給食の配膳方法など新しいルールや方法が考えられ実施されることと思います。先生方は子どもたちにはそのルールの意味や大切さを毎日の生活の中できちんと伝え、徹底されると思いますが、ここで忘れないでほしいのは保護者の中には学校再開を不安に思っている方もいるということです。そういう保護者のためにも学校がどのような安全対策をするのかを正しく伝えることが大切です。伝えるということは単に対策を書いた紙を配ればいいのではありません。保護者が不安なくお子さんを学校に送り出していただけて初めて伝わったということです。

学校の安全対策は多岐にわたります。その一つひとつをていねいに説明すると膨大な量になります。文部科学省や教育委員会からの通知をそのまま載せて、これに沿って対応しますといったものは論外にしても、せいぜい、代表的な対策を例にして、「三密をさけて」「しゃべる量をへらす」といったキーワードを使って大まかな方針、方向性を伝えるにとどまらざるを得ません。十分とはいえないまでもこういった文書を配布することは重要です。紙で配布するに加えてホームページで文書を公開することもよい方法ですが、それでもすべての保護者が目にするとは限りません。伝えたい人に確実に伝わる方法が必要となります。保護者全員、特定の学年学級の保護者を選択して、必要な情報をスマホのアプリを通じて届けることや、アンケートをとることができるツールを利用している学校もあります。緊急配信用のメールを利用してもよいでしょう。まずは、保護者の手元に確実に情報を届けることが必要です。

しかし、先ほども述べたように、文書では学校側が行っている対策を伝えきるのは限界があります。そこで威力を発揮するのが、ホームページの記事です。授業の様子の写真と共に、「ソーシャルディスタンスを確保するためにこのような配置をしていますが、子どもたちは元気に頑張っています」「話すことを削減するために、サインを出して自分の考えを伝え合っています」と説明を付け加えるのです。休み時間の様子や給食の様子、学校がとっている安全対策を子どもたちの姿と共に説明することで、わかりやすく納得のいくものになるはずです。合わせて、保護者の手元に記事の更新やリンクを伝えることで、確実に学校の安全対策が伝わり、理解を得ることができると思います。

子どもが登校するようになれば、課題の指示や配布の必要性がなくなるので、ホームページでの発信は少し休んでもよいと考える学校もあるかもしれませんが、それは間違いです。保護者に安心してもらい、学校の信頼をえるためにも今まで以上にホームページでの発信を心がけてください。

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「心の天気」で心の変化を「見える化」(玉置)

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 小学館月刊誌「総合教育技術2020年6月号」では、「個別最適化」で子どもを伸ばす!という特集が組まれました。

 その中で、「『心の天気』で心の変化を『見える化』し、サインを見逃さず個に応じた生徒指導を」と題した私へのインタビュー記事が掲載されました。

 以下にそのごく一部を掲載します。全文はここをクリックしていただくと読んでいただけます。ぜひご一読ください。

声がけのきっかけになる

 個別最適化学習を進めるには、まずは個を知らなくては始まらないと思うのです。いくら個別最適化で子どもの習熟度に合わせた問題に取り組ませても、その子の気持ちが学習に向いていなければ、効果は期待できないでしょう。やはり、一人一人の心の状態を捉え、必要に応じて心理的な支援や生徒指導をしながら、学習の助言をしていく必要があります。

 そんなときに役立つのが「心の天気」システムです。操作はとても簡単で、子どもたちはタブレットで、「晴れ」「曇り」「雨」「雷」の4つの天気の中から、そのときの気持ちに最も近いマークを選んでタッチする、たったこれだけです。非常にシンプルですが、これにより子どもたち一人一人の気持ちが「見える化」され、毎日続けることで教員は子どもの心の変化を見取ることができます。子どもからのサインに気づきやすくなり、声掛けのきっかけになるのです。つまり、「心の天気」システムはICTを使った子どもとのコミュニケーション・ツールのひとつだと考えていただくといいと思います。

 「心の天気」は株式会社EDUCOM(エデュコム)が開発したシステムですが、実は私が出したアイディアが基になっています。(以下は、ここをクリックしてお読みください)

この事態における学び合い 先生の挑戦と生徒の思い その後<栗木>

以前、一公立中学校の社会科の挑戦を紹介しました。この先生の挑戦が、全教員に広がり、学校を元気にしたということも。その学校の「今」を教えてもらいました。

1 先生達の学び合いが始まった
5月11日に課題を生徒に配布し、休校中でも新学年の学習が始まりました。プリントを配って宿題にするだけではなく、ほぼすべての教科、すべての先生が動画を作って生徒に語りかけたり、生徒から送られてきたメールをつないでまた生徒に投げかけたりしています。返ってくるメールも日々増加し、今では全校生徒約4分の1数が毎日送られてくるようになりました。もちろんメールには「ありがとう」の一言を添えて各先生が返事を書いています。また、全職員がそれを読むこともできます。職員室のあちらこちらから「この考えいいね。」「〇〇君頑張っているね。」という言葉が聞こえます。最初は動画作りに躊躇していた先生達も挑戦するようになってきました。PowerPointに音声を入れて作る先生、生の声で臨場感たっぷりに語る先生、自宅にあるソフトを用いて工夫している先生・・とその方法も様々です。先生方の隠れた特技や個性が発揮されました。お互いに見合って、「これ、どうやって作ったの?やってみるから教えて。」「こういうのもいいね。」という先生方の「学び合い」が始まりました。

2 生徒の学び方が成長した
 動画とメールでの学び合いを継続する中で、気づいたことがあります。段々と生徒の学び方が成長しているのです。メールで「○○がわからない」だけではなく、「僕は〇〇と考えたけれど、その考え方であっていますか?」と質問してくる生徒が増えました。また、仲間の疑問に応えるメールでは、「僕もこれが気になって調べてみたら△△とあって、そこから××と考えました。」とありました。家には手元にICTがあります。それを用いて調べた上で考えを伝えてくるのです。まるで、これからの学びを象徴しているかのようです。

3 今後に活きる
学校が始まっても、またいつ休校になるかわかりません。その時にこの動画が役立ちます。音楽の先生は、自分でリコーダーを吹いている様子を撮影し、楽譜と合体させて運指が見やすい動画を作成しました。体育の先生は、学校独自のストレッチ体操を実演し、ポイントを紹介して動画にしました。それらは今後一人一台PC時代になったとき、配信して家庭でも学校でも練習を促すことができます。いつも会っている先生が実演しているところがいいのです。自分でやってみるとうまくできないことを先生はやれてしまう、そこが「すごいな」って思ってもらえます。逆にいつもはキリッとしている先生が動画の中で「あ、まちがえた。」とかつぶやいているのを見れば、親近感が湧きます。そういう人間性が垣間見えることも今後に必ず活きます。

5月15日、文部科学省は、「新型コロナウィルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における『学びの保障』の方向性等について」を通知しました。そこには、「新型コロナウィルス感染症とともに生きていかなければならないという認識に立ちつつ、子どもたちの健やかな学びを保障することとの両立を図っていくことが重要です。」とあります。学校が再開されても、今までと同じような教育活動をするわけではありません。先生も生徒も試行錯誤でしょう。でも、この学校のように手探りしながら前に進めば、必ず得るものや生まれてくるものがあります。その学校独自の「新しい学び」を創っていくのです。なんだかワクワクしませんか?先生と生徒の新たな挑戦と工夫の時がもうすぐやってきます。

この事態における学校でのICT活用四方山話 Topic2<神戸>


◆ 2教室の間の壁を取り除く
2つの教室の間にある壁を取り除けば、2教室分の広さの教室で授業が行えます。さぁ、壁を取り壊そう!と言っても無理です。そこで、ICTの活用を考えます。

1) タブレットのカメラとマイクを使い、大型提示装置(プロジェクタ)で一方の教室の様子を隣の教室へ投映するという、簡易のテレビ会議のような仕組みを作るのです。先生は、授業を進めながら、2教室の様子を観察することもできますし、簡単に行き来することもできます。ICTが、2教室の間の壁を取り除く役割をするのです。(WiFi環境があるとさらによい)
 タブレットは、できるだけ子どもの学習用に使いたいというときは、ビデオカメラを使うでしょうが、そんなに台数もありません。そんなときに活躍するのが実物投影機です。実物投影機のカメラは、普段下を向いていますが、このカメラかなり自由に動くので、子どもたちや先生に向けさえすれば立派なビデオカメラの代用品となります。
 2つの学級をつなぐソフトは、既存の「学習活動ソフト」。本来は、自分の教室のタブレットの画像を自分の教室で投映するのですが、それを隣の教室に投映するようにするだけの簡単な方法です。
 「学習活動ソフト」で投映できる環境のない教室は、タブレット2台を使って、windows10のプロジェクション機能で、隣の教室の様子を投映するという方法も考えられます。
 これで、2つの教室の間にある壁は取り除かれます。
 1教室の子どもを2教室に分けるのですから、「3密」を避けることも可能になるでしょう。

2) 同様に、互いの学級をテレビ会議システムでつないで壁を取り除くことも可能でしょう。2つに分けた学級それぞれに、1台のPCがあれば最低限できます。家庭で行っていた、テレビ会議システムによる授業と違って、先生はいつでも2教室を行き来でき、分からない子どもに寄り添うこともできます。ここでの経験は、今後も起こり得る緊急事態時に、今回のような長期間、授業が行われないということがなく、即座に対応していくことができるようになると期待できるのではないでしょうか。今が、「学校生活の新たな日常」を築くチャンスかもしれません。(テレビ会議システムが使える環境が必須)

3) 教室にゆとりがない学校は、なかなか難しいと思いますが、分散登校させるという前提で考えると、2)の方法の一方の学級を家庭で行うという方法もあるのではないでしょうか。分散登校で、半分の子どもたちが家庭学習するのもいいですが、テレビ会議システムを使って、一緒に授業に参加すればいいと思いませんか。家庭で授業に参加した子どもへは、少なからずフォローが必要でしょう。次時登校したときが、フォローのチャンスになると思います。(各家庭、テレビ会議システム参加のための端末と環境があるか、または貸し出せることが必須)

どうでしょうか、そんなことできるわけないと言われるかもしれません。大切なことは、今までの常識にとらわれず、今できることを考え、実践していくことではないでしょうか。
 しばらくは、コロナウイルスと共存しなければならない日が続くと思います。
 子どもが安心して登校できることを一番に考え、「学びを保障」する実践を行っていく必要があると思います。

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この事態における学校でのICT活用四方山話 Topic1<神戸>

 39の県で、国の緊急事態宣言が解除されました。徐々に、学校生活が日常に近づこうとしています。「学校生活の日常」といっても、昨年度2月までの日常と今年度6月からの日常は大きく違うはずです。どんな、「学校生活の新たな日常」が築き上げられていくのでしょうか。

 授業再開に伴うICT活用の話を、「Topic」として記録したいと思います。

 子どもが登校し、授業が始まります。分散登校一つとっても、子どもたちを守るためにいろいろな手立てを講じる必要があり、簡単に行えるものではありません。登校方法も、小学1年生と中学3年生では違ってくるでしょう。
小学1年生は、まだ、一度しか登校していない学校もあると思います。分団で登校といっても、「3密」を避けることを考えると難しい課題があると思いませんか。
 一つずつ検討し、多くの人の支援を受けながら解決していくことになるのではないでしょうか。
 
 さて、どんなことを行ったらいいのでしょうか?

 授業については、1学級を2つのグループに分け、1日置きに登校させたり、午前と午後に分けて登校させたりする方法をよく耳にします。確かに、「3密」を避けることからすると、必要なことになるでしょう。しかし、これを続けていくことは難しいでしょう。そこで、授業再開から1〜2週間後には、通常(いつ頃の通常なのか?)登校にしていくと発表している自治体が多くあります。大丈夫なのでしょうか?そんなに早く、ワクチンや治療薬ができるのでしょうか?「3密」を避ける必要がなくなるのでしょうか?

 文部科学省は、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における「学びの保障」の方向性等について」(令和2年5月15日付け2文科初第265号通知)で示したとおり、『各設置者においては、「新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学校運営上の工夫について」(令和2年5月1日付け2文科初第222 号初等中等教育局長通知)で示したとおり、感染防止対策を徹底したうえで、段階的に教育活動を開始し、学校における教育活動を充実していくことが必要』と記しています。
 現状を考えると、分散登校や「3密」を避ける取組は、重要な要素になっていると思われます。

 「3密」の「密閉」については、今の時季ならば、対策がとりやすいと思います。窓を開けて風通しをよくすればいいのですから。しかし、「密集」と「密接」は、あの狭い教室に40名弱の子どもが入るのですから、何らかの対策をとる必要があるのではないでしょうか。

 教室にゆとりのある学校は、1学級を2つに分け、T.T.で行っていくことが可能になります。また、広い特別教室を一つの学級とすることも可能でしょう。しかし、そんな教室ばかりはありませんし、T.T.ばかりが可能にもなりません。
 そこで、2つに分散した教室をつなぎ、授業を行っていくという方法を考えてみてはどうでしょうか。当然そこには、ICT機器の活用が必須になってくるでしょう。(こんなことを考えてみませんか)

 Topic2へ続く

この事態における学び合い オンライン模擬授業その4 <栗木>

オンライン模擬授業の最後です。授業後にフェローによる「授業深堀」をしていただきました。

テーマ1 オンラインで学び合いはできるか?
・オンラインだからというのではなく、人が人と繋げる繋がる環境が必要だ。生徒は人の意見を聞いて変化している。それは表情や発言からわかる。教師は無意識のうちに学びが起きる計算をしている。
・つなぐことで新しい学びができてくる。一方でわからないっていう言葉が出てこなかった。これがオンラインの苦しみ。
・発問で学びが引き出せる。聞いてもらえた?言えた?聞けた?聞くと話すの双方向指示が必要。話すではなく聞くを捕らえないとオンラインでは疲弊する。また、意図的使命に陥る危険性がある。

テーマ2 オンラインで学びを生みだす心得は?
・グループに入る時の投げかけ。聞けたか言えたか、二つの視点をなげかける。
・意図的使命ばかりではなく、子供同士の、この人の話が聞きたいという場を作る。
・質問や反対意見、もう少し聞きたいというのが出てくるような仕掛けをしていく。そしてそれが言えるような保障をしていく。
・表情を見ての指名は通常よりしにくい。つぶやきとか、「でもさあ」とか子供同士でやっていくのが通常。それが出来ない苦しさがある。
・分からなないや誰かが言ったことへのわからなさが出てこない。気持ちがわからないと学び合いにならない。
・どこから思ったの?と根拠で繋いでいた。それが大事。
・価値付けをする。オンラインであっても体全体で認める。
・反応やつぶやき、誰が言ったかがよく分からない。教室だとなんとなく感じられるちょっと待った機能とかあるといいかな?
・どうつなぐのか、つなぎ言葉が特にいる。言葉は武器になる。
・教師がつなぎ言葉で、つながったことへの価値づけをする。

授業者自身のふり返り
最後に、オンライン授業をするにあたってと望むことを記します。
一つ目は、教材の持つ力が大きいということです。教室でもオンラインでも基本的に授業作りは一緒です。学び合いの楽しさを知っている子どもたちは、自然につながって探究していきます。ただし、そこには子どもが知りたい考えたいという教材が必要です。そしてフェローの指摘のような工夫がいります。

二つ目は、教室でも同じことですが、よりいっそう言葉を選び正しく伝える必要性があると授業記録を見て感じました。教室なら何となく雰囲気で伝わります。それがないのですから、画面上の一人一人に語り掛けるように話すことが大切でしょう。

三つ目に、学び合いは形ではなく一人も落とさないという理念です。オンラインでは教師主導型に陥りやすいと感じます。加えて通常教室なら近くの仲間にわからないが言える子どもに育っていても、オンラインではできません。わからなさをどうにかして拾う手立てを考え、それをスタートにした学びを展開するという「ぶれない信念」をもちたいものです。「わからない、困った」を全体に広げ、考える視点を提示し、そして子どもに返す、その繰り返しでしょうか。幸いオンライン授業は毎時間記録できます。繰り返し見ることで授業の中での留意点が見つかるのではないでしょうか。ふり返りも大いに活用したいところです。今回、授業記録とふり返りを見て、何人かの生徒を置いてきてしまっていることに気づきます。ふり返りで曇りマークにした生徒のうち2人は授業で発言できていません。見落としです。目の前に生徒がいれば雰囲気や表情で感じることもできます。記録されたものを活用することで教師の「勘」を養いたいものです。

四つ目は、「学びの作法」です。模擬授業でも前日に「学び方」「聴き方」「ふり返り方」等を研修しました。生徒役は見事にそれを身に付けて参加しました。しかし、小中学生は一回でできるものではありません。まず、聴くことが難しいでしょう。通常の教室でも4月当初は「学びの種まき」から始めます。その一つとして、子どもたちが自分たちで大切にしたい作法オンラインバージョン(わからないことはわからないと言う・グループでは話していない子に声をかける・一人で考えたいときはちょっと待ってサインを出す等)を考えるとよいですね。

五つ目は一番大切、且つなくてはならないグループのことです。本来ならば安心を生むためにも教室の中では人と人との間隔をできるだけ狭くします。しかし、この事態はその逆です。よく行われる「コの字隊形」も大人数だと無理だし、少人数でもかなり広いコの字になります。全体で意見を交わし合うのは聞き取りにくくなります。そこで絶対に必要なのが、グループによる探究です。それなくして学びを起こすのは至難の業です。今回の模擬授業でも、グループ内で生じたことを多くの生徒が伝えていました。彼らはグループとグループをつないで、そこに化学反応が起きて学びが成立しました。近づくことなくグループという少人数探究の場をどのようにして生み出すのか。そこには、一人一台PCでのつながりが必要です。

学びはつながることで起こる、どんな形であれそれが一番だと感じました。

この事態における学び合い オンライン模擬授業その3 <栗木>

 その2では、授業後半の様子を授業記録で記しました。学びやその深まりは個人によって異なります。それを知る手立てがふり返りです。ふり返りを記録することで自分自身の変化、学びの足跡、他からの働きかけ等を再認識できます。また、それを読むことで、授業者は授業をふり返ったり、学びの成立や不成立等を確認できたりして
授業改善に生かせます。ふり返りの一部を紹介します。

<学びの天気 晴れの人のふり返り>
・eさんやfさんの話を聞いて、また別の命の見方もあると知った。命に関する考え方を自身でも捉えなおすことができた。
・eさんの”桜目線”じゃないかという話から、新たな歌の見方ができたように感じた。
・こんなにも様々な考えが生まれることは個人的には楽しかったし、意見交換をしていくことで考え方の幅を広げることが大切だと感じました。
・最終的に、桜が広く人間界を客観的にみているような場面が浮かびました。mさんの、「人間も肩の力抜いていけよ」みたいな考え方も素敵だと感じました。
・「桜目線ではないか」という意見が斬新で、目から鱗でした。歌を詠むときの頭に巡るイメージが、桜を見上げる視点から、人を見下ろす桜の視点に一気に変わって大変興味深かったです。
・aさんが「わが」は人ではなく桜の根本の生き物なのかもと考えたり、tさんの聞き手によって捉え方がかなり変わるのではという意見だったり、cさんの「死期が近い人が詠んだのかも」という考えに納得したり、他の人の意見を聞き、その意見に対する疑問を訊き、それを重ねたことで、はじめは自分では浮かばなかった映像という新しいものが生まれたことを実感し、とてもうれしく思った。
・自分には無かった見方がたくさん出てきて、それらを自分の中に落とし込むことが楽しかったです。
・はじめは作者の状況を想像することから句の意図を考えることを考えていたけれど、視点の転換の話があってから、話が広がりました。みんなの意見を聞いていくうちに自分の中で、解釈が固まっていった。
・あらかじめ「わからない」ことを聴くことを意識して取り組めたので、どうしてそういう考えが生まれたのかを聞いて話を広げることができた気がします。

<学びの天気 曇りの人のふり返り>
・もともと国語が苦手なので、話し合いでもほかの人の意見を聞いてなるほどと思ったり、発表で意外な見方が知れたりととても頭を使う授業でした。
・自分の脳みそのスカスカ感を感じ、地味にショックを受けている。
・この詩は何を伝えたかったのだろう、作者は何をイメージして作成したのだろうと考えるとモヤモヤが残る。

今回、ふり返りは「スクールライフノート」を使って記入しました。自分の学びを「晴れ」「曇り」「雨」「雷」で示すところから始まります。19名中5名が曇りで14名が晴れでした。スクールライフノートを用いれば互いのふり返りを読み合うこともできます。「〇〇さんの△△という考えで自分の考えが□□から××に変わった。」という記入が多く見られました。個人名が出てくるのは互いをリスペクトし合えているからであり、また、他の考えを謙虚に受け止めて自分の学びを深めているからでもあります。大人であっても認めてもらえたら嬉しいもの。子どもたちならその喜びは、自分への自信にもなるし、学びも楽しくなるでしょう。何よりもその教室での居場所が実感できます。そして、仲間の考えをもっともっと知りたくなって聴き上手、学び上手を育てます。また、この授業で何を考え、どう変化しどんなことが身についたのかを自分の言葉で蓄積していき、それを読み返すことで学びが定着します。通常の教室でもふり返りは欠かせませんが、今この事態だからこそ一層、オンライン上でのつながりを生む手だてになると思います。授業者の立場で見れば、ふり返りを授業改善に生かすこともできます。

その4に続きます。


この事態における学び合い オンライン模擬授業その2 <栗木>

模擬授業その1では、最初の課題(教材である短歌)提示と、音読、各自書き込み、1回目のグループで気づきや気になることの共有、その後全体で共有までを記しました。)授業記録の続きです。

T:みんなの話聞いてると、死期を悟っている意見もあったし、桜目線っていうのもあったんだけど、共通して「いのち」、ひらがなの「いのち」と漢字の「生命」ってあるんだけど、そこに心惹かれているのかなって感じたのね。
S:半分以上(頷き)
T:「いのち(生命)」っていうのを感じながら、もう1回この歌を味わってみるよ。今度はわかることよりも感じること、皆さんがこの歌を読んでどう感じるのか。命っていう言葉に注目しながら、もう1回この歌読んでみてください。
S:銘々読みと指名読み
T:どんなことを感じるか。グループで聞いてみて。自分の感覚を大切にね。
S:(2回目のグループ中)
T:どんなこと感じたか聴かせて。
i:考えれば考えるほどわからなくなってきていたんですけど、「いのちいっぱいに」っていうのが、「生命かけて」咲いてたんだよって、散っている様子を見て、あの時命いっぱいに咲いていたんだなーって思った。
k:「いのちいっぱいに」っていうのが、桜が満開に咲くっていうイメージが私にはあって、命ひとつひとつがいっぱいに咲いて、桜が人間界を見て、生命かけて見てるんだなあみたいな。
l:私は「命」っていうところに焦点を当てて考えた時に、生命かけてお花を咲かせているんだなと、ちょっと見方が変わったなーっていう風に感じました。
m:桜と「桜ばな」って見た時に、桜を思い浮かべた時に花を思い浮かべるのになんでわざわざ桜とはなを二つ重ねるんだろうなって思ったというのがまず先にあったんですけど、全体が桜なのに花だけを桜って言われるのをちょっと嫌だなーって思っているのかなと思いました。それから、この「いのちいっぱいに」っていうちょっと無邪気な感じと「生命をかけて」っていうちょっとシリアスな感じに疑問を持ったんですけど、nさんの「生命をかけてわが眺めたりは、なんか人間ってちょっとシリアスに考えすぎじゃない?みたいに(桜が)思ってるんじゃないのかな」っていう話を聞いて、そこから、なんかもうちょっと肩の力を抜いてもいいんだよって桜が教えてくれるのかなっていう気持ちになりました。
S:(反応)(参ったの顔)
n:最初のいのちはひらがなで、桜は普通にしてれば毎年繰り返して咲くけど二つ目の生命は人間だとしたら人間は1回きりになるので、なんかすごい重さを感じる。
T:可愛い、健気、こっちは重さを感じる。もっともっと聞きたいけど最後にもう1回自分でこの歌を自分の味わいで読んでみてください。
(授業記録はここまで)

・銘々短歌を読み味わう。そして、振り返りをする。
・ふり返りはスクールライフノートに書くよう指示。学びの天気をつけるのと自分の変化を記した。

 Iさんkさんは上の句の「いのちいっぱいに」でつながってともに、桜の満開な様子を想像し、それをlさんが下の句の「生命をかけて」につなげ、mさんnさんは二つの「いのち」「生命」を対比させました。もちろん本人たちがつなげて発言しようとしているか否かは不明です。その意識はないのかもしれません。でもこうしてみるとつながっているのです。大人の発言なので、実際は一人一人がかなり長く話しています。迷いながら話すので時間もかかります。生徒役は聴く力をかなりもっています。後半の発言で特徴的なのは、「〜だなあ」という表現が多いことです。情景を頭に浮かべ、感じているのではないでしょうか。

その3に続きます。

「授業アドバイスツール」で手軽にはじめる授業改善(玉置)

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 授業と学び研究所とEDUCOMでは、数年前から「授業アドバイスツール」の開発をしてきました。

 タブレット等の携帯型端末を利用したこのツールは、授業シーンを振り返りながら授業検討を行う際や、指導や助言を行う際に、気軽に使用できるツールです。

 愛知県海部郡大治町では、2019 年春より、「授業アドバイスツール」を使用した授業検討や指導を実践していただきました。

 4 人の校長先生から、ツールの有用性や活用方法などをお伺い、「手軽にできる授業改善ツール」である実践ができましたので、具体的活用方法や効果などをリーフレットで発信しています。

 ぜひここをクリックして、詳細をお読みください。(玉置)

この事態における学び合い オンライン模擬授業その1 <栗木>

ZOOM機能を用いて、オンラインによる学び合い模擬授業の授業者役を体験させていただきました。ただし、生徒役は小中学生ではなく大人です。

ここのところ、オンライン飲み会なるものも流行し、テレビ番組でも普通にみかけるようになったオンライン会議。この1、2か月で急速に普及しました。学校が休校になり、一部地域の一部学校、あるいは学習塾等では「オンライン授業」が行われています。オンラインでどのような授業ができるのか、通常の教室で行われているような学び合いはできるのか、幾つかの課題に挑戦しました。
   
 ZOOMという機能の存在を知ったのは、授業日の約1週間前。生徒役の方々に出会った(あくまでも画面越しです)のも約5日前。ZOOMを使ったのは1日前。この短歌を用いた授業をするのは初めて。初めて尽くしの体験でした。どんな授業であったのかは、実際の授業記録を見ていただくことが一番です。一部省略しながら記します。

2020年4月8日 模擬授業 参加者19名(在宅) 授業者栗木
国語 短歌の模擬授業
「桜ばな いのちいっぱいに咲くからに 生命をかけてわが眺めたり」 岡本かの子
1 ホワイトボードに書いた歌を画面提示し、生徒にはノートに写す指示。写せたら各自で音読を繰り返す。続いて頭の中に映像を思い浮かべながら仲間の読みを聴く。ここまでは通常の授業通り。
2 「気になること気づくこと気に入ったこと」などをノートに書き込みを指示。当然だが手元が見えないので書けているかわからない。通常なら書けていない生徒や困っている生徒に声をかけるがそれができず顔の表情で判断するしかない。
3 ブレークアウトセッション(グループの人数指定やメンバー指定も可能)を用いてグループにする。気になったことがある人から声を出すように指示。グループの時に顔はとても自然。やはり少人数対話は必要。
4 全体で共有。考えが広がる。
(発言者 T:授業者 S:生徒役 小文字:個人名)
T:(全体に)戻ってきて。気になることを聞いてもらえた?自分から言えた?
S:(頷き)
T:気にあることのある人からどうぞ。
a:私たちのグループの中では、作者はもしかしたら死期を悟っているのではないかと。
S:(驚きの表情)
a:桜が一生懸命咲いているのを見て、自分も残された命を、命をかけて全うするっていう意見が出てきて。
T:その意見だしたbさんどこからそう思ったの?
b:命が二つ出ているので、二つの命を比較しているような感じかなと思ったんですけど、「生命をかけて」っていうところから死期を悟っているなって感じました。
T:(一番リアクションが大きかったc君指名)それ聞いてc君どう?
c:僕らの班ではそこまで深読みできなくって、なんで「いのち」ってひらがなと漢字(生命)で書いてあるんだろうっていうところから話していて、そこまで作者の状態とかなんでとか考えられなくって、本当にすごいなーって思いました
S(反応)
d:aさんは作者目線だって言っていたんですけど、私たちのグループでeさんは桜目線の話なんじゃないかとおっしゃっていて、すごくびっくりして。
S:すっげー。(誰が発生したかは不明)
T:ちょっと桜目線になってこの歌読んでみようか。
S:(銘々読み)
T:なんか生まれてきたことある?
f:桜の幹から桜を見ているというのにつながるのかなって。桜の幹が自分になっている花を見ている様子を歌っている。自分の前髪を見ているような感じ。
S:(みんなの顔が変わる。参ったという表情もあり)
T:誰かほーってなってるよね?それ聞いてどう?生まれてきたこと。
g:さっきのグループでhさんが言ってたんですけど、「いのちいっぱい」の方がちょっと軽めで、「生命をかけて」の方が結構一生懸命さがあって、その生命をかけてみている人間たちを、客観的に見ているみたいな、そんなイメージを感じました。

 一回目のグループの後の全体共有では、このような発言や反応が続きました。aさんはグループで聴いたbさんの考えを紹介し、それに触発されてcさんに感動が生まれ、一方でⅾさんがグループで聴いたeさんの違う新しい視点を皆に広げます。思いもよらなかった発想を謙虚に受け止めたfさんが自らの考えを深め、gさんは「見ている」という点で、前述のcさんの疑問点につなげます。それぞれの発言が羅列のようでいてつながっている、そんな様子です。

続きはその2で。

月刊誌PHPに「心の天気」掲載(玉置)

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 月刊誌「PHP 2020年6月号」の連載「学校の快談」で「心の天気で子どもたちの気持ちを知る」と題した拙稿を掲載されました。出版社に許可を得ましたので、以下にこの原稿を掲載します。

 ***「心の天気」で子どもたちの気持ちを知る***

 文部科学省は、現在、子どもたち一人一人にコンピュータを渡し、学校での学びをより豊かにする施策を進めようとしています。すでにこれが現実化されている学校があります。その学校での取組を紹介します。

 その学校では、私が発案した「心の天気」というシステムを使っていただいています。「心の天気」は、子どもが登校したときや一日を終えたときに、システムを立ち上げて、今の自分の気持ちを「晴・曇・雨・雷」のいずれかのマークで示すだけの単純なものです。学級担任は自分の学級の子どもの「心の天気」、学年主任は学年全体、校長は全校の子どもの「心の天気」を手元のコンピュータで見ることができるようになっています。

 たったこれだけのことなのですが、学校内に大きな変化が生まれてきています。子どもと先生の距離が、グッと縮まったのです。

 例えば、前日「晴」だった子どもが、突然「雷」になることがあります。担任は、その理由を聞きたくなります。「何かあったの?」とさり気なく聞いてみると、昨晩、家庭でスマホの使い方で厳しく怒られたとのこと。そして、こう言った子どもがいたそうです。「先生に言ったら、すっきりしたよ」と。ちょっとしたことですが、「心の天気」がコミュニケーションを生み出すきっかけになっているのです。

 実は、私のゼミ生も「心の天気」を毎日入力しています。この「心の天気」でゼミ生といつも結び付いているなという感覚を持つことができています。学級担任時代を思い出しています。   

 ある学生が「雷」マークだったので、聞いてみると、バイト先で重要な役目をもらったのに、うまく出来なかったことが「雷」の原因だったそうです。さっそくコメントを返して、その学生と会話を楽しみました。

 「心の天気」について、次のように書いたゼミ生がいます。
 「晴、晴、晴と連日、晴が続いていた私ですが、とうとう雷になりました。私は、雷はイライラしたときの気持ちやどうにも言葉にできない気持ちを表すものだと思っています。
 昨夜、雷になってしまいました。自分の情けなさや周りに対しての不満。自分で頑張っていると思っていた事を心ない言葉で否定されると、もう、何というか、言葉にできなくて。私の「心の天気」が雷になりました。
 このことで『心の天気』は、とても良い仕組みだと感じました。言葉にならない気持ちを吐き出すことができる小さな避難場所です。この避難場所があることがどれだけ救いになることか。言葉にできない黒く重い気持ちは、その人の心にずっと靄のように居続けます。その靄は自分一人の力では吐き出せません。そんな時にこの心の天気は大活躍すると感じています」
 
 今日もゼミ生たちの「心の天気」を気にしている私です。(玉置)

この事態における学校と保護者と地域四方山話 みんなで一緒に安心安全な学校を!編 <栗木>

 学校再開に向けて、各校で様々な対応を考えていらっしゃると思います。取り巻く事情はそれぞれに違うのですから、学校ごとの工夫が必要になってきます。「お帰りなさいプロジェクト 〇〇モデルを作ろう!」と、全職員が分担してアイデアを出し、再開に向けてのシミュレーションをしている学校もあります。

感染予防は、二重三重に考えます。ひとたび感染が起きれば、最低でも1か月単位の待機になるのですから、ここまでやるのかというぐらいの徹底が必要です。そこには人員の確保や費用、環境、物資不足など、様々な困難も生じます。そんな時、学校の外に視野を広げてみませんか?学校にはそれを支えてくださる保護者や地域という、強い味方がいるではありませんか。その力を頼らず、学校だけで何とかしようとしていませんか?一生懸命考えれば考えるほど、学校は学校の中だけで解決しようとする特性をもっています。もっと視野を広げればよいアイデアが出てきたり、支援者が出てきたりします。眠らせておくのはもったいない。違う視点でいえば、地域の財産を活用するのも学校の役割の一つです。今こそ、学校が学校で完結しないで、「私たちと一緒に安心安全な学校作りをしましょう」と声を出す時です。「困ったらSOSを出す。困っていると言われたら手を差し伸べる。」それが「自立」です。

1 保護者の声を聴く
 再開に際して、いち早く理解と協力をお願いするのは当然保護者です。登下校の送迎、体調管理などこれまで以上に家庭に委ねることが多くなります。何よりも、ご家庭がお子さんの安全に高い関心を寄せていらっしゃいます。各学校での対応を一早く決め、周知をしていくことです。「学校はこういう対応を考えています。」と具体的な対応を示し、加えて「ご心配なことはありませんか?足りないことは何ですか?」と聴いてみてはどうでしょう。ご高齢者のいる家庭、医療従事者である保護者など、家庭事情によって心配する観点も異なります。すべてを網羅することはできないとしても、「聴く耳」をもち、時には個別対応も考えていく姿勢が安心につながります。ある学校は、希望保護者にモニターとして学校参観をしてもらい、ご意見をいただいた上で修正していくことを検討しています。それが「一緒に作る」ことです。
 そのうえで、お願いすることもたくさんあります。保健室対応もその一つ。体調を崩した時、一時的に預かることもこの事態ではできません。いつでもすぐに連絡がつくことと、いち早く迎えに来てもらうことを強く依頼していくことです。文書やメールだけでは意図が伝わりにくいもの。直接電話や対面でお願いしましょう。

2 支援者を募る
 感染予防のため、校内に教職員以外の人が入ることを心配する気持ちはわかりますが、人員不足により安全が守れなかったという事態にならないためには、地域や保護者の支援を募るのも一つの手段だと考えます。例えば、「給食ボランティア」「授業見守りボランティア」などはいかがでしょう。給食配膳はこれまでのような給食当番制はできません。先生だけではなくお母さん方に手伝ってもらうのです。授業はT2を地域の教員OBにお願いしてみましょう。授業研究もできて一石二鳥です。

3 物資支援を声にしてみる
 学校を、子どもを守るために、これがあれば・・と思いながらも、諦めてしまうことはありませんか?また、校内だけで何とかしようとしていませんか?社会には、誰かの役に立ちたいと思っている人たちや企業がたくさんあります。畑違いの商品を作って社会貢献してくださっているのもその一つだと思います。地域にある商店、企業、あるいは個人、きっと学校の、いや子どもや先生のために役立ちたいと思っている方がたくさんいるはずです。「こういうのを作って助けてもらえませんか?」と申し出てみましょう。それが地域を活性化することにつながるのですから。

 最後に、学校の対応が形になったとき、必ず第三者に客観的に見てもらうことをお勧めします。先述の保護者モニターも一つですし、地域有識者のアドバイスをもらうこともできます。自分たちで何とかする・・それはそれで立派な心構えです。でも、これからの社会はそれだけではたちうちできません。だから「社会に開かれた教育」をするのです。いかに多くの仲間を集うか。まずは学校が、その姿勢を示しましょう。

「学びて思はざれば則ち罔し 思ひて学ばざれば則ち殆し。」です。
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この事態における教員ICT研修四方山話Part3<和敏>

 この事態、遠隔授業・オンライン授業が注目され、今まであまり縁のなかったテレビ会議システムの導入を検討する学校が多くなっているようです。そこで、少しテレビ会議システムについての四方山話を書いてみます。
 
 テレビ会議システムと言ってもいろいろあります。この事態、授業として使うとなると、どんな授業を考えているかによるところが大きいと思います。学校としては、設定が簡単で、セキュリティ面での不安も少なく、子どもたちが参加しやすいもの。子どもたちとしては、操作が分かりやすく、授業に集中しやすいものになってくると思います。何よりも、安定したネットワーク接続が維持されるものであることは言うまでもないことです。

それでは、もう少し耳にした特徴を書いてみましょう。(無料で使用することを前提として)

(1) アカウント (一部、変更箇所あり)
   A B C すべて、主催者は、それぞれのアカウントが必須。
        アカウントは、無料で作成可能。
(2) 一画面に表示できる人数
   A 通常25人(拡大表示49人:PCのスペックに左右される)
   B 16人   C 9人
(3) 同時接続人数
   A 100人  B 100人  C 250人
(4) チャット機能
   A B C すべて可能
(5) 画面共有(教師や子どもの画面をみんなの画面に表示する)
   A B C すべて可能
(6) 制限事項
   A 3人以上の場合40分間
   B 9月30日までは、連続300時間 それ以降60分間

詳細は、まだまだあるようですが、この事態で使うとなると、まず知っておきたい内容ではないでしょうか。
 A、B、C どれが優れているかではなく、どれが、自校のめざす授業に近いかを検討することが大切になるでしょう。個別指導に使うのか、普段のような授業に使うのかで、適するシステムは変わってきます。
いずれも、無料版がありますから、一度試してみることが一番でしょう。

※ 四方山話です。間違いがありましたらお許しください。
A:Zoomミーティング  B:Google Meet   C:Microsoft Teams

 この事態も、いつか落ち着きをみせ、いずれワクチンや治療薬が開発されることでしょう。しかし、それでもインフルエンザのように、ある時期、ある地域で感染が拡大し、学級閉鎖や学校閉鎖をしなければならない事態が起こることは想像できます。そんなときに、今回の経験からオンライン授業を実施する学校が出てくるかもしれません。「新しい日常」と同様に「新しい学校」として。そんなときのためにも、落ち着きを見せたときこそ、学級等を閉鎖するときの対策を検討していくべきかもしれません。

この事態における学び合い 先生の挑戦と生徒の思い <栗木>

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小学校では今年から、新学習指導要領に基づいた教育が完全実施です。というよりは、完全実施されるはずでしたという方が妥当でしょうか。今学期が始まっていない学校が多いのですから。

新学習指導要領には、「これからの社会が、どんなに変化して予測困難になっても、 自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい。」という願いが込められています。改訂の考え方として強く打ち出されてきたのが、「主体的・対話的で深い学び」を目指す授業改善です。教師の教えを一方的に受信する教育や知識・技能の習得を急ぐ教育ではなく、子どもが主体となってわからなさや困難さに自ら向き合い、仲間と協同しながら探究、思考、発見、創造していく「学び」にあふれた授業が大切です。ところが、今、その「学び」の場が奪われています。まさに、「予測困難」な事態が起こってしまったために・・。

世間では長期化する休校に、学習の遅れを危惧する声が高まり、各自治体や学校が工夫して、子どもたちの学力を保障しようとしています。ここでいう「学力」が、単に知識や技能の習得だけであってはならないと考えます。学力は「学び力」です。探究し、思考し、発見し、創造していく力がストップしてしまうことを恐れています。

ここに、離れていながらも僅かなつながりを活かして、「学び力」の継続に挑戦した一人の先生の工夫と生徒の思いを記します。
一公立中学校の社会科の先生です。二年生で歴史を担当していた昨年度末、全国一斉休校により単元の一部を積み残して終えることになってしまいました。四月になっても休校は続き、加えて、新年度は担当学年が変わることになりました。生徒たちは社会を、そして学びを楽しみ、なぜだろう、どうしてだろうと、同時代性に立って歴史を考えることを身に付けてきました。何とかして学び力を継続させたい、そう思った先生は、オンライン授業を考えました。オンラインといってもその学校にあるのは、学校ホームページと学校メール。一人一台のPCもありません。それでも、一方的な知識の伝達にならない方法はないか模索し、たどり着いたのが動画配信とメール送受信です。

教室で行われていた授業は、毎時間資料の提示から始まります。歴史ならば風刺画や当時を反映した絵画等が主です。生徒はそこから気づいたことや気になったこと、浮かんだ疑問を見つけ、仲間と対話しながら探究し、考えを繋ぎながら当時の人間の生き方や思想に迫っていくという授業でした。それと同じことを動画で行ったのです。一本目の動画は課題提示として資料を投げかけます。生徒には気づきをメールで送ってほしいと伝えました。始める前、返事は来ないと思っていたそうです。ところが、予想に反して初日から返事がきました。しかも複数。「上の絵は、何かが燃えていて、それを見て人々が喜んでいることに気が付いた。」「真ん中の絵は、武器を持って反乱している人々を政府の人達が止めている様子かなと考えた。また、上で燃えているのも反乱の一部なのかなと考えた。日露戦争に勝ったばかりなのにどうしてだろう。」これらを先生がつなげ二つ目の動画にして配信します。それを見た生徒がまた考えたり調べたりして考えを深めます。「僕は、この頃の国民は政府に『もっと戦争をしろ』というだろうと考えた。なぜなら日清戦争・日露戦争と二回続けて勝っていて、国民は苦しくても国自体は一度も攻撃されたことがないから、国民は負けることについてあまり考えないだろうし、日清戦争では賠償金がもらえ、いい思いをしただろうから、国民は『戦争をして勝てばいい思いできる』という考えになりそうだなと考えたからである。」というようなふり返りがメールで送られてきて、それをまた3本目の動画で紹介します。これを続けること約1か月。回を重ねていくうちに参加生徒も増え、最後の動画にはこんなメールが。「毎回メールすることは出来なかったけど、ただ教科書を見て暗記するだけでなく、ちゃんと考えて勉強できました。3年生なっても、話し合いと発言を大事にします!」
 
さらに予期せぬプレゼントが届きました。生徒の代表がラインで仲間の声を集め、先生にお礼のメッセージを送ってきてくれたのです。半数以上の生徒が参加していました。「人とかかわらないことがどれだけ人をだめにするか。かかわることの大切さを学べるのは学校がもつ意味の一つ。」先生の信念と愛情が生徒の心と学び力を動かしました。

この先生の挑戦は今、全教員に広がり、学校を元気にしました。顔は見られなくても心はつながります。つながることで学びは続きます。また、学びはその学級の先生と児童生徒のあうんの呼吸で育まれるもの。学級色豊かな学びが続いていくことを願います。

、「スクールライフノート」の機能を使えば、こういうつながりが生まれることも記しておきます。

ピンチをチャンスに変えよう(大西)

ピンチをチャンスに変えるとよく言われますが、今回の新型コロナウイルス対応のピンチをチャンスにできる学校は何が違うのかを考えてみたいと思います。

公立の学校では国や設置者である市町の教育員会の判断・指示に従うことが必要です。そのため今何をすべきかを自校で判断できない、また積極的に考えようとしなかった学校が多かったかと思います。もちろん、その一方で、今子どもたちに必要なことは何か、自分たちにできることは何かを考え実行した学校もたくさん目にします。学校全体でこうしようと考え判断したところもありますし、先生方が一人ひとりで今自分にできることを考え工夫している学校もあります。結果に100%満足できなかったとしても、自分たちで考え工夫し実行したことは先生方に大きな手ごたえと自信を感じさせたのではないでしょうか。やがて学校は再開されるでしょうが、未知の状況で新しい学校運営が求められることになります。この時、自分たちで考え・判断して行動した達成感は大きな力となると思います。ピンチがこれからの学校をつくるための基礎体力をつけるチャンスとなったのです。

質はともかく、この事態に対して私立学校の多くは素早く対応しているように思います。公立と違って自校単独で経営判断できることが大きな要因と思います。
公立の学校にそのまま当てはまらないことが多いかもしれませんが、私立の中学校高等学校での取り組みを紹介します。1人1台にiPadがある恵まれた環境だからできることが多いのですが、学校が、先生が変わるために大切なことが見えてくると思います。

政府による臨時休校措置の要請を受けた時には既に学期末だったために、目先の授業進度のことはそれほど大きな問題ではありませんでした。そこで今後のことを考えてICTの活用研修を集中的に行いました。この学校では役に立ちそうなアプリケーションやサービスを積極的に導入しています。有料のものも導入されていますが、一度導入したからといって翌年以降も自動継続というわけではありません。私立の学校は生徒や保護者からいただいているお金という意識が強いので、活用しながら積極的に見直しと入れ替えを行っています。新しいものが入ればその都度研修が必要になりますが、積極的に参加する先生ばかりではありませんでした。しかし、今回のことで、課題配布や提出にICTが有効なことはどの先生も実感しました。予想以上に多くの方が前向きに参加し、学校で使えるアプリケーションやサービスについての基礎的なスキルを身につけました。

積極的な先生は、休校中にオンラインで講演会を開き振り返りを全体で共有するといった先進的な取り組みを行いますが、誰にでもすぐにできることではありません。研修は受けたものの、課題のやり取りをオンラインで行なう程度にとどまる先生がまだ多数でした。この状況を変えたのが、新学年になっても休校が延長されたことです。「このままではいけない」と、先生たちの中に危機意識が生まれてきます。子どもたちの「学びを止めない」が先生方の思いとして共有されました。このことが、ピンチをチャンスに変える原動力になったと思います。
できることをやってみよう。教科主任会が中心となって、ゴールデンウイークまでに一度はオンラインで双方向の取り組みに挑戦しようと呼びかけました。これを使ってこうやってくださいと具体的に指示するのではなく、自分にできることをやろうという呼びかけでした。先生たちは交代で自宅勤務ですので、直接会って相談することもなかなかできません。どうしていいかわからない、何をしようかと悩む先生も多かったと思います。ここでポイントとなるのがホームページを活用した先生方の取り組みの見える化です。学年での取り組みや学級、教科での取り組みを簡単に紹介するのです。
同じように課題を与えて提出させるといっても、通常のワークシートをデジタル化しただけのものもあれば、自分で制作した自己アピールの動画や英語のスピーチといったものもあります。中国のある時代の成立から滅亡までをいろいろなツールを活用してグループごとにスライドにまとめるといった世界史の課題もありました。作ったスライドはオンライン会議システムを使って発表し、その評価をいろいろなツールを活用して共有します。事前に動画を見てからそれぞれ振り返りを提出し、よくわからなかったところを中心にオンラインで解説する授業もあります。また、ネット上でグループの考えをしゃべりながら、共通の画面で作業しまとめ、授業者は子どもたちの作業中はオンライン会議システムの音声だけを使って支援する道徳の授業も行われました。同じようなツールを使っても先生ごとに多様な試みがなされています。
自宅勤務が続きコミュニケーションが取れない時だからこそ、他の先生がどのような取り組みをしているのか気になります。取り組みの様子がホームページ上で紹介されることで、よい刺激とたくさんのヒントが得られます。多様な取り組みがあるから、自分にできそうなことが見つかるはずです。実際にオンラインの授業に挑戦した先生は子どもたちの関わりたい、学びたいという思いを痛いほど感じるようです。オンラインでの取り組みに挑戦する先生の姿がどんどんアップされていきました。
ホームページの記事の中で、「こんな時期だからこそ、自らの興味からより深い内容を追究していける力をつけてくれることを期待しています」といった、先生の思いが書かれていることがあります。ふだん他の先生の授業に対する思いを聞くことは意外と少ないものです。こういう思いを共有することも、先生方が授業を変えていくエネルギーにつながっていくと思います。
もう一つ鍵となるのが、校長の発信です。強制するのではなく、各自でできることに取り組んでもらい、その取り組みを共有する環境をつくった上で、ホームページ上で先生方の取り組みを価値付けしています。こういう状況だからこそ、ホームページは保護者や地域だけでなく、先生をつなぐ道具としても有効になっています。

今回のピンチをチャンスに変えるためには、機器の整備や研修といった環境面の課題が多いことは間違いありません。しかし、環境面が整っているから上手くいくとは限りません。授業と学びコラム「できない理由を探すことより、できることから始めましょう(大西)」でも述べましたが、現在の環境の中でできることからとにかくやることです。それが学校全体の取り組みでなくてもよいのです。たとえ個人の取り組みでも、一人ひとりができることをやろうとする空気をつくることが大切です。管理職は、「できない人がいるからやらないように」と足を引っ張るのではなく、その取り組みを共有し、「できることをやっている」ことを価値付けしてほしいと思います。その有効なツールがホームページです。ピンチをチャンスに変えようとしているかどうかはホームページに現れると思います。
今回のピンチをチャンスに変えることができたどうかは、学校再開後にはっきりするでしょう。一校でも多くの学校が、チャンスに変えられることを願っています。

「この事態における授業づくり授業技術四方山話」(和田) 振り返りで書く力をのばそう!

★ 図書館にある人気本「ズッコケ三人組」の作者は児童文学作家の那須正幹さんです。
那須さんは、「休校が続く今を“学びの機会”としてプラスに捉えよう」と次のようなメッセージを子どもたちにおくっています。
 ≪日記をつけて自分のことを振り返ろう≫
ぜひ、やってもらいたいことは、日記をつけることです。こういうときこそ、自分の身の回りで起こったことをなんでも記録しておくということがすごく大切じゃないかと思います。自分のことを振り返るというのは大人になっても大切なこと。
いずれ必ず役に立つときがきます。           
  ★ 心理カウンセラーや臨床心理士の方もいろいろな場で提唱されています。
  ≪褒め言葉で自己肯定感を高めよう≫
  ノートやスマホのメモ機能などを活用して「今日、よかったことを三つ書く」「ほめ日記で自分を褒める」などを実践すると自己決定感や自己有用感が高まります。
  ★ 新学習指導要領では、以下のように示されています。
新学習指導要領 総則編(第1章第4の2(4))より一部抜粋
≪各教科等の指導に当たっては、児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるように工夫すること≫
各教科等の指導に当たっては,児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるように工夫することが重要であることを記述したものである。具体的には,例えば,授業の冒頭に当該授業での学習の見通しを児童に理解させたり,授業の後に児童が当該授業で学習した内容を振り返る機会を設けたりといった取組の充実や児童が家庭において学習の見通しを立てて予習をしたり学習した内容を振り返って復習したりする習慣の確立などを図ることが重要である。これらの指導を通じ,児童の学習意欲が向上するとともに,児童が学習している事項について,事前に見通しを立てたり,事後に振り返ったりすることで学習内容の確実な定着が図られ,思考力・判断力・表現力等の育成にも資するものと考えられる。

ステイホームの間、「話す活動」はかなり制限されました。
逆に「書く活動」は個人差はあってもいつもより増えたのではないでしょうか。この状況を活用して学校再開時には、「振り返り」を習慣化し書く力を高めることにつなげていきたいものです。今まで実践していなかった先生もこれを機会にチャレンジしてみましょう。
≪振り返りのワンポイント≫
1 授業の終わりに振り返る時間を設定します。
2 毎日続けることで学びを振り返る習慣が身に付きます。
3 個に応じて書く量に差があります。
4 「よくわかった」ではなく、「・・・と言う考え方がよくわかった」と考えた内容や過程を書くようにします。
5 苦手な子は他者の振り返りを聞いて、自分に近い考えを選択することからスタートします。
6 振り返りの内容は次時の導入や課題設定に活用できます。

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