学校を進化させましょう(大西)

ほとんどの地区で学校が再開されていると思いますが、その状況はまちまちだと思います。子どもたちを2つのグループに分けて隔日登校とし、オンライン会議システムを使って通常の時間割で校内と家庭同時に授業をしている学校もあります。登下校や給食、掃除の進め方などの工夫に多くの労力を割かれ、授業は子ども同士の接触を避けるといった指示だけで授業者の裁量に任されているという学校もあります。接触を避けながらどうやって子ども同士のかかわりを生み出そうと悩んでいる先生もたくさんいらっしゃいますし、自分がしゃべる量を減らして、板書を増やして子どもたちに写させることを中心にしている方も目にします。教科書すべてを授業で網羅するのではなく、学校ではどこを中心にどんな活動するのか、家庭ではどんな学習を求めるのかを考え工夫している先生もいらっしゃいます。
どれが正解ということはありませんが、この事態に対応するためにどの先生もいろいろな工夫をしています。

ただ気になるのが、「いつになったら以前に戻れるのだろう」「早く以前と同じに戻ってほしい」と今の状態を一時的なものと考え、新型コロナウイルスが登場する以前に戻ることを願っている学校や先生が一定数いることです。今回の新型コロナウイルスによる学校の変化は一過性のものではありません。ICT機器の活用が進み、授業の進め方も不可逆的に変わっていきます。以前と違った授業がよいということではありません。今行われている授業と以前の授業を比較し、それぞれのよいところと課題を評価しながらよりよい授業へと進化させることが大切です。「今までの授業ではほとんど質問や発言しなかった子どもがオンライン授業では自分の意見を発信したり質問を送ってきたりした。これまでの授業で発言しにくい雰囲気をつくっていたのかもしれない」と授業を見なおすヒントを得た先生もいらっしゃいます。
学校全体が進化していくためには、こういった先生方の学びを共有することが大切になります。週案などに書かれたよい気づきを統合型校務支援システムで公開して共有するのも一つの方法です。また、日常的に授業を見合い、互いのよいところを学び合うこともとても有効ですが、いまの状況では物理的に難しいかもしれません。管理職を中心に先生方の授業を積極的に観察し、よい点を評価して学校全体に共有していくことが求められます。統合型校務支援システムを活用して内部に発信し、先生同士の交流のきっかけにするとよいでしょう。授業のよいところやポイントを動画とコメントで簡単に紹介する授業アドバイスツール(EDUCOMで開発、実証実験中)などもこれから世に出てきます。先生方が試行錯誤しながら授業を変えようとしている時だからこそ、それを評価し、共有し、学校全体でよりよいものにしていく工夫をお願いしたいと思います。

発信するという視点では、ホームページで授業を紹介するのも有効です。地域や保護者に学校がどのように変わろうとしているのかをわかりやすく伝えることができます。全国一斉の休校措置から続く一連の動きで、世間の注目は学校に集まっています。マスコミを通じて連日のように学校の様子が紹介され、ホームページなどでも各学校の取り組みを簡単に知ることができます。学校ごとの取り組みの違いが保護者の目にもはっきりと見えています。他の地域と自分の子どもたちが通う学校を比較して、なぜこのような授業をやらないのかと保護者が声を上げる時代になりました。他の地域と比較されてこうしてほしいと言われても、現場の環境は異なるので同じようにはできません。学校の環境がどうなのか、その上でどのような工夫をしているのか、そのねらいや意図を含めてわかりやすく伝えることが大切です。環境のせいでできないと言い訳をするのではなく、その環境の中でできることを工夫していることを伝えるのです。環境が整うことを待っているのではなく、常に工夫して対応していることを知ってもらうことで学校への信頼は増すはずです。今後、信頼を得る学校、なくす学校の差が大きくなると予想しています。

今学校は変革の波の真っただ中にいます。この状況を一時的なものとみて、早く元に戻りたいと願うのではなく、環境の変化に適応して、学校を進化させることを意識してほしいと思います。
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