この事態における学び合い オンライン模擬授業その4 <栗木>

オンライン模擬授業の最後です。授業後にフェローによる「授業深堀」をしていただきました。

テーマ1 オンラインで学び合いはできるか?
・オンラインだからというのではなく、人が人と繋げる繋がる環境が必要だ。生徒は人の意見を聞いて変化している。それは表情や発言からわかる。教師は無意識のうちに学びが起きる計算をしている。
・つなぐことで新しい学びができてくる。一方でわからないっていう言葉が出てこなかった。これがオンラインの苦しみ。
・発問で学びが引き出せる。聞いてもらえた?言えた?聞けた?聞くと話すの双方向指示が必要。話すではなく聞くを捕らえないとオンラインでは疲弊する。また、意図的使命に陥る危険性がある。

テーマ2 オンラインで学びを生みだす心得は?
・グループに入る時の投げかけ。聞けたか言えたか、二つの視点をなげかける。
・意図的使命ばかりではなく、子供同士の、この人の話が聞きたいという場を作る。
・質問や反対意見、もう少し聞きたいというのが出てくるような仕掛けをしていく。そしてそれが言えるような保障をしていく。
・表情を見ての指名は通常よりしにくい。つぶやきとか、「でもさあ」とか子供同士でやっていくのが通常。それが出来ない苦しさがある。
・分からなないや誰かが言ったことへのわからなさが出てこない。気持ちがわからないと学び合いにならない。
・どこから思ったの?と根拠で繋いでいた。それが大事。
・価値付けをする。オンラインであっても体全体で認める。
・反応やつぶやき、誰が言ったかがよく分からない。教室だとなんとなく感じられるちょっと待った機能とかあるといいかな?
・どうつなぐのか、つなぎ言葉が特にいる。言葉は武器になる。
・教師がつなぎ言葉で、つながったことへの価値づけをする。

授業者自身のふり返り
最後に、オンライン授業をするにあたってと望むことを記します。
一つ目は、教材の持つ力が大きいということです。教室でもオンラインでも基本的に授業作りは一緒です。学び合いの楽しさを知っている子どもたちは、自然につながって探究していきます。ただし、そこには子どもが知りたい考えたいという教材が必要です。そしてフェローの指摘のような工夫がいります。

二つ目は、教室でも同じことですが、よりいっそう言葉を選び正しく伝える必要性があると授業記録を見て感じました。教室なら何となく雰囲気で伝わります。それがないのですから、画面上の一人一人に語り掛けるように話すことが大切でしょう。

三つ目に、学び合いは形ではなく一人も落とさないという理念です。オンラインでは教師主導型に陥りやすいと感じます。加えて通常教室なら近くの仲間にわからないが言える子どもに育っていても、オンラインではできません。わからなさをどうにかして拾う手立てを考え、それをスタートにした学びを展開するという「ぶれない信念」をもちたいものです。「わからない、困った」を全体に広げ、考える視点を提示し、そして子どもに返す、その繰り返しでしょうか。幸いオンライン授業は毎時間記録できます。繰り返し見ることで授業の中での留意点が見つかるのではないでしょうか。ふり返りも大いに活用したいところです。今回、授業記録とふり返りを見て、何人かの生徒を置いてきてしまっていることに気づきます。ふり返りで曇りマークにした生徒のうち2人は授業で発言できていません。見落としです。目の前に生徒がいれば雰囲気や表情で感じることもできます。記録されたものを活用することで教師の「勘」を養いたいものです。

四つ目は、「学びの作法」です。模擬授業でも前日に「学び方」「聴き方」「ふり返り方」等を研修しました。生徒役は見事にそれを身に付けて参加しました。しかし、小中学生は一回でできるものではありません。まず、聴くことが難しいでしょう。通常の教室でも4月当初は「学びの種まき」から始めます。その一つとして、子どもたちが自分たちで大切にしたい作法オンラインバージョン(わからないことはわからないと言う・グループでは話していない子に声をかける・一人で考えたいときはちょっと待ってサインを出す等)を考えるとよいですね。

五つ目は一番大切、且つなくてはならないグループのことです。本来ならば安心を生むためにも教室の中では人と人との間隔をできるだけ狭くします。しかし、この事態はその逆です。よく行われる「コの字隊形」も大人数だと無理だし、少人数でもかなり広いコの字になります。全体で意見を交わし合うのは聞き取りにくくなります。そこで絶対に必要なのが、グループによる探究です。それなくして学びを起こすのは至難の業です。今回の模擬授業でも、グループ内で生じたことを多くの生徒が伝えていました。彼らはグループとグループをつないで、そこに化学反応が起きて学びが成立しました。近づくことなくグループという少人数探究の場をどのようにして生み出すのか。そこには、一人一台PCでのつながりが必要です。

学びはつながることで起こる、どんな形であれそれが一番だと感じました。
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