各地で広がる「心の天気」―1000校、1日10万人が活用(日本教育新聞 提言2022年4月4日)

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各地で広がる「心の天気」―1000校、1日10万人が活用 管理職・教員は子どもの「今」を見つめて 玉置 崇 岐阜聖徳学園大学教授

 「心の天気」をご存じだろうか。1人1台端末を利用して、子どもと教師のつながりを生み出すシステムだ。導入校はサービス開始から2年で千校を超え、1日当たり10万人ほどの子どもが活用している。
 子どもは、登校後、情報端末の「心の天気」を立ち上げて、「はれ・くもり・あめ・かみなり」のいずれかの天気を選択して、そのときの心境を担任に知らせる。伝えたいことがある子どもは、書き込みもできる。下校時も同様だ。
 これだけのことだが、実践校からは、「心の天気」によって、これまでにない子どもと教師の関わりが生まれているとの報告が多く届いている。
 例えば、いつも「はれ」の子どもが、「あめ」や「かみなり」だったときは、一言、声を掛けるようにしているとのこと。「お母さんに怒られたから、あめ」などと言いながら、子どもはほほ笑むというのだ。子どもは、教師が自分の気持ちを知ってくれたことがうれしいのだ。
 小学校教師から聞いた話だ。教師机に集まってくる子どもの「心の天気」は気にならない。自分のそばに来ない子どもの「心の天気」が気になるという。そのような子どもとの会話のきっかけに「心の天気」が活用できるそうだ。また、「あめ」を示して「先生、Aさんはいつも一人ぼっちだと知っていますか?」と、級友の状況を書き込んだ子どもがいるそうだ。
 中学校では、指導に困難をやや感じる子どもが、「俺は、今日はかみなりだ」と口に出して端末入力をしたそうだ。すると、周りの子どもから「どうしたの?」と声が掛かった。本人はこうした声掛けをきっと期待していたに違いない。職員室に戻った担任は、学年の教師たちに「今日のBは、かみなりだから頼むね」と伝えたそうだ。どの教師も教室に入るたびに、Bに「かみなりだって。どうしたの?」などと声を掛けた。Bは下校時には「はれ」を押して帰ったという。「これまでは、このような子どもとのつながりはなかった。こんな単純なシステムが、ここまで教育的効果があるとは思いもしなかった」という声がある。
 管理職からも声が届いている。「心の天気」は、教職員なら誰もが見ることができるので、全校の「心の天気」を見ることを日課としている校長がいる。
 「かみなり」が続いた子どもがいる担任には、子どもの状況を把握しているか、確認するそうだ。既に声掛けをしたり、学年団で関わったりしているときには、感謝の言葉を掛ける。子どもの「今」を知ろうとする教師集団であることが分かり、校長として安心できるとのことだった。教師と管理職とのつながりを生み出すことにもきっと役立つことだろう。
 私は実は、このシステムのアイデアを提案するなど開発に携わってきた(開発元は校務支援システムのサービスなどで知られるEDUCOM)。教育者として全国の子どもや学校現場に役立っていると聞くと、心からうれしく思う。働き方改革の時代に、教師に負担を生まないことも長所だと感じている。
 子どもたちは新年度、期待と不安を胸に登校する。教師による見取りに加え、子ども発信の「今」の気持ちも見つめるようにしたい。
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