日本教社説 GIGA端末の可能性 不登校傾向を早期発見(日本教育新聞2022年6月13日)

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 熊本市の遠藤洋路教育長の著書「みんなの『今』を幸せにする学校」の中に、「不登校の子供たちもオンラインなら授業に参加できるという思わぬ結果」という項目がある。
 この「思わぬ」という文言に注目しておきたい。記載データによると、「前年度に不登校だった児童生徒のうち、オンラインによる健康観察や課題のやりとりに参加できた子供が五割以上、オンラインによる授業に参加できた子供が三〜四割以上、学校再開後に登校できるようになった子供が三〜四割」という結果だったそうだ。このデータを目の当たりにして、予想を超える「思わぬ」があったわけだ。
 遠藤氏は「双方向のコミュニケーションによって、とにかく学校とのつながりを保つ、という取組が一定の成果を上げたことは間違いない」とし、ICT活用が不登校への対応に有効な一手段であると述べている。
 以前に紹介した「心の天気」を活用している学校からの報告では、不登校の子どもも、家庭から「心の天気」を入力しているそうだ。担任がその子どもと電話をする際、「心の天気」を見て、「昨日の心の天気は『はれ』だったね。何か良いことがあったようだね」などと、会話のきっかけに使っているという。これもICTを活用した不登校への対応の一つだ。
 文科省「不登校に関する調査研究協力者会議報告書(案)」の中においても、「一人一台端末を活用した早期発見」という項目で、ICT活用の有効性を示している。
 「これまで教職員の経験で対応していた児童生徒の見立てが、ICTを活用することでより組織的かつ客観的に把握でき、これまで見過ごしていた児童生徒の変化に気付くきっかけとなるなど、困難を抱える児童生徒の早期発見や早期対応が可能になる」
 GIGAスクール構想で配備された1人1台端末の有効活用法例と捉えて、学校全体での取り組みを考えたらどうか。
 次の調査結果も重要視したい。「最初に学校に行きづらい、休みたいと感じてから、実際に休み始めるまでの間で、学校に行きづらいと誰かに相談したか」の質問に、「誰にも相談しなかった」という回答が、小学生では35・9%、中学生では41・7%。つまり、4割近くの児童・生徒が「誰にも相談せずに学校に行きづらい気持ちを一人で抱えている」というのだ。
 学校現場では、1人1台の情報端末が授業での活用だけに偏りつつあるように感じている。個々に示した事実を参考に、ICT活用の幅を広げるとよい。
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