社説 政府の子ども自殺対策 端末使い SOSを見逃すな(日本教育新聞2023年6月19日)施策の一つとして、「1人1台端末の活用等により、自殺リスクの把握や適切な支援につなげるシステム活用」を明記した。子どもが自分専用の情報端末を活用することで、教師にSOSを出しやすくなると捉えたい。 こうした趣旨を踏まえたシステムが、幾つか運用されている。その一例として、「心の天気」がある。このシステムでは、子どもが今の心境を「はれ・くもり・あめ・かみなり」から選んで入力する。 教師へ伝えたいことがあれば、メッセージも入力できる。入力情報は、学級担任をはじめ、校長や養護教諭など、他の教職員も見られる。 「あめ」や「かみなり」が数日間続いている子どもを見逃すことがないよう、システムから「要注目」といったメッセージが届くようにもできる。 このシステムによって、苦しんでいる子どもが把握でき、学校ぐるみで早期に対応できた事例がある。 ある子どもの「心の天気」の状況(あめ・かみなりが多い)を見て、学年主任や養護教諭からも、その子どもへの早期のアプローチが必要との意見が出され、担任が時間をかけて面談をして、危機を脱することができたという。 もっとも、「かみなり」の全てが緊急事態ではない。例えば、「お母さんに怒られたから」とか、「友達とケンカしたから」といった理由で「かみなり」を入力する子どももいる。 ある教師は、子どもが「かみなり」を入力するのは、日常とは違った気持ちになっていると捉えて、一声掛けたり、注意深く観察したりしているとのことだ。 先に紹介した事例の学校では、「かみなり」が何日も続いていれば、子どもはなんらかのストレスを抱えていて、「先生、助けて!」という子どもからの訴えだと、まずは考えてみるという。 学級担任が「かみなりが続いているのは、何かあるんだね」と寄り添い、子どもの心境をつかみ、管理職や養護教諭、学年主任などと情報を共有する。チームで子どもに関わり、精神的な支えになろうとしているという。 こうしたことができるのは、1人1台端末活用によって、子どもと教師の結び付きがより密になっているからだ。 また、子どもや教師にとって心理的安全性が高い学級・学校運営がされているからこそ、適切な支援ができるシステムになっていることを補足しておきたい。 |
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