夏休みの端末活用促進へ 全国の取り組みは(日本教育新聞2022年7月11日 )

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 夏休みの課題に1人1台の情報端末をどう活用するか。全国の小・中学校が考えを巡らせている。教育委員会も端末活用を促すための準備を進めている。

防災マップ作りで写真撮影

子どもへの課題
 茨城県つくば市立二の宮小学校は今夏、5年生に情報端末で防災マップ作りに取り組んでもらう予定だ。子どもたちの「登校班」ごとに防火水槽や危険な時に逃げ込む「子ども110番の家」などの場所を地図に記録し、カメラ機能で写真も撮ってもらう。夏休み明けに班ごとの地図を持ち寄り、発表を行うという。
 6年生には職業人から話を聞くキャリア教育の一環として、保護者に仕事についてのインタビューをし、端末に記録する課題を出す予定だ。
 宮良昌雄教諭は「端末を使えば紙に比べて、効率良くまとめたり発表したりできる。通常の授業のときと同じように活用の仕方を考えていきたい」と話す。
 長野県南木曽町立南木曽小学校は昨年度、タブレット端末の基本操作に慣れることを目的に全学年共通でタイピングの練習、写真撮影の課題を出した。
 学習教材のeライブラリを使用し、1学期までの復習にも取り組ませた。本年度はこうした内容に加え、自由研究や絵日記なども端末で作ってきてもらう予定だ。
 夏休みにタブレット端末を活用した狙いのもう一つが、臨時休業への備えだ。
 いつでもオンラインへの切り替えができるようにと、Zoomの使い方を知るために子どもたちとオンラインで交流した。Zoomによる交流は5、6年生を対象に学級ごとに実施した。夏休みの生活の様子を報告し合う場となった。
 教育委員会も学校の活用を促す取り組みを始めている。

教委、自由研究用のサイト開設

 三重県四日市市教委は、夏休みの自由研究時に使ってもらおうと学習サイトを開設。5教科の学習教材の他、プログラミング教材や市の歴史・文化・産業のリンクを載せた。市教委の前田賢一指導課長は「地域をテーマに調べ学習する際などに利用してほしい」と話す。
 つくば市教委もプログラミング講座や「極めましょうコンクール」と題して、夏休みの30日間、何かにチャレンジした様子を写真や動画で送ってもらうイベントなどを開催する。中学生対象にインターネットの専用サーバーを構築する講習も開く。

「心の天気」記録させ、状況把握

学習以外では
 学習以外にも活用が広がっている。児童数19人の鹿児島県垂水市立新城小学校。昨年の夏休み中も児童は端末を持ち帰った。端末には、自分の気持ちを天気になぞらえて記録し、教員と共有する「心の天気」という機能がある。コメントを書き込むこともでき、昨年は、児童が寄せたコメントから教員が夏休み中の登校日に対応。トラブル回避に至ったという。
 同市では、端末持ち帰りを積極的に進め、インターネットにつながらない家庭には、モバイルルーターを貸し出している。
 「心の天気」は、岐阜聖徳学園大学の玉置崇教授の発案に基づき商品化されている。毎日、複数回にわたって、「はれ」「くもり」「あめ」「かみなり」で自分の気持ちを表現して記録できる。
 EDUCOM(愛知・春日井市)が提供しているソフトウエアの中に組み込まれており、同市ではこのソフトを導入している。
 同小学校の児童は一日に2度、「心の天気」を記録する。授業がある期間は、校長・教頭が児童の書き込みを毎日確認。気になることがあれば担任に伝え、必要に応じて行動を起こす。
 このソフトには1週間分の「心の天気」を一覧できる機能がある。夏休み中は、この機能を使い、児童のコメントも読んで、状況を把握する。必要があれば保護者に連絡し、より詳しく児童の状況を捉える。
 昨年の夏休みは、友達との仲が悪くなったとの書き込みがあった。登校日に、書き込んだ児童とその友達の関係を改善させた。児童数がわずかな学校だが、管理職が児童の心理状況を把握することに意義があるという。
 今月21日から始まる夏休みも児童は端末を持ち帰り、「心の天気」を記録する。来月末までの休み中、2度の登校日がある。久木田昌之校長は、「子どもたちの心の状況を把握し、アクションを起こす上で有効だ。似たアプリもあるようだ。ぜひ取り入れていただきたい」と話した。

使用ルール
 一方、端末を使うことで気になるのが使用のルールだ。長時間の使用や学習目的外の利用を心配する保護者の声もある。
 南木曽町立南木曽小は、子どもたちのネットトラブルを防ぐため、検索機能を使用しないなどのルールを設けた。
 つくば市立二の宮小では、各クラスで夏休みの使用方法について話し合う「ルールメイキング」の活動に取り組み、児童の代表委員が端末使用の心得を発信した。5日にはPTA役員に、ルール作りの進捗状況を報告した。

 文科省は6月下旬に、夏休み中の端末活用を求める通知を教育委員会などに出した。「保護者の理解を得ながら、基礎的内容の定着のための学習や、創造的な課題に取り組ませることも考えられる」としている。
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