この事態における学び合い オンライン模擬授業その3 <栗木>
その2では、授業後半の様子を授業記録で記しました。学びやその深まりは個人によって異なります。それを知る手立てがふり返りです。ふり返りを記録することで自分自身の変化、学びの足跡、他からの働きかけ等を再認識できます。また、それを読むことで、授業者は授業をふり返ったり、学びの成立や不成立等を確認できたりして
授業改善に生かせます。ふり返りの一部を紹介します。 <学びの天気 晴れの人のふり返り> ・eさんやfさんの話を聞いて、また別の命の見方もあると知った。命に関する考え方を自身でも捉えなおすことができた。 ・eさんの”桜目線”じゃないかという話から、新たな歌の見方ができたように感じた。 ・こんなにも様々な考えが生まれることは個人的には楽しかったし、意見交換をしていくことで考え方の幅を広げることが大切だと感じました。 ・最終的に、桜が広く人間界を客観的にみているような場面が浮かびました。mさんの、「人間も肩の力抜いていけよ」みたいな考え方も素敵だと感じました。 ・「桜目線ではないか」という意見が斬新で、目から鱗でした。歌を詠むときの頭に巡るイメージが、桜を見上げる視点から、人を見下ろす桜の視点に一気に変わって大変興味深かったです。 ・aさんが「わが」は人ではなく桜の根本の生き物なのかもと考えたり、tさんの聞き手によって捉え方がかなり変わるのではという意見だったり、cさんの「死期が近い人が詠んだのかも」という考えに納得したり、他の人の意見を聞き、その意見に対する疑問を訊き、それを重ねたことで、はじめは自分では浮かばなかった映像という新しいものが生まれたことを実感し、とてもうれしく思った。 ・自分には無かった見方がたくさん出てきて、それらを自分の中に落とし込むことが楽しかったです。 ・はじめは作者の状況を想像することから句の意図を考えることを考えていたけれど、視点の転換の話があってから、話が広がりました。みんなの意見を聞いていくうちに自分の中で、解釈が固まっていった。 ・あらかじめ「わからない」ことを聴くことを意識して取り組めたので、どうしてそういう考えが生まれたのかを聞いて話を広げることができた気がします。 <学びの天気 曇りの人のふり返り> ・もともと国語が苦手なので、話し合いでもほかの人の意見を聞いてなるほどと思ったり、発表で意外な見方が知れたりととても頭を使う授業でした。 ・自分の脳みそのスカスカ感を感じ、地味にショックを受けている。 ・この詩は何を伝えたかったのだろう、作者は何をイメージして作成したのだろうと考えるとモヤモヤが残る。 今回、ふり返りは「スクールライフノート」を使って記入しました。自分の学びを「晴れ」「曇り」「雨」「雷」で示すところから始まります。19名中5名が曇りで14名が晴れでした。スクールライフノートを用いれば互いのふり返りを読み合うこともできます。「〇〇さんの△△という考えで自分の考えが□□から××に変わった。」という記入が多く見られました。個人名が出てくるのは互いをリスペクトし合えているからであり、また、他の考えを謙虚に受け止めて自分の学びを深めているからでもあります。大人であっても認めてもらえたら嬉しいもの。子どもたちならその喜びは、自分への自信にもなるし、学びも楽しくなるでしょう。何よりもその教室での居場所が実感できます。そして、仲間の考えをもっともっと知りたくなって聴き上手、学び上手を育てます。また、この授業で何を考え、どう変化しどんなことが身についたのかを自分の言葉で蓄積していき、それを読み返すことで学びが定着します。通常の教室でもふり返りは欠かせませんが、今この事態だからこそ一層、オンライン上でのつながりを生む手だてになると思います。授業者の立場で見れば、ふり返りを授業改善に生かすこともできます。 その4に続きます。 この事態における学び合い オンライン模擬授業その2 <栗木>
模擬授業その1では、最初の課題(教材である短歌)提示と、音読、各自書き込み、1回目のグループで気づきや気になることの共有、その後全体で共有までを記しました。)授業記録の続きです。
T:みんなの話聞いてると、死期を悟っている意見もあったし、桜目線っていうのもあったんだけど、共通して「いのち」、ひらがなの「いのち」と漢字の「生命」ってあるんだけど、そこに心惹かれているのかなって感じたのね。 S:半分以上(頷き) T:「いのち(生命)」っていうのを感じながら、もう1回この歌を味わってみるよ。今度はわかることよりも感じること、皆さんがこの歌を読んでどう感じるのか。命っていう言葉に注目しながら、もう1回この歌読んでみてください。 S:銘々読みと指名読み T:どんなことを感じるか。グループで聞いてみて。自分の感覚を大切にね。 S:(2回目のグループ中) T:どんなこと感じたか聴かせて。 i:考えれば考えるほどわからなくなってきていたんですけど、「いのちいっぱいに」っていうのが、「生命かけて」咲いてたんだよって、散っている様子を見て、あの時命いっぱいに咲いていたんだなーって思った。 k:「いのちいっぱいに」っていうのが、桜が満開に咲くっていうイメージが私にはあって、命ひとつひとつがいっぱいに咲いて、桜が人間界を見て、生命かけて見てるんだなあみたいな。 l:私は「命」っていうところに焦点を当てて考えた時に、生命かけてお花を咲かせているんだなと、ちょっと見方が変わったなーっていう風に感じました。 m:桜と「桜ばな」って見た時に、桜を思い浮かべた時に花を思い浮かべるのになんでわざわざ桜とはなを二つ重ねるんだろうなって思ったというのがまず先にあったんですけど、全体が桜なのに花だけを桜って言われるのをちょっと嫌だなーって思っているのかなと思いました。それから、この「いのちいっぱいに」っていうちょっと無邪気な感じと「生命をかけて」っていうちょっとシリアスな感じに疑問を持ったんですけど、nさんの「生命をかけてわが眺めたりは、なんか人間ってちょっとシリアスに考えすぎじゃない?みたいに(桜が)思ってるんじゃないのかな」っていう話を聞いて、そこから、なんかもうちょっと肩の力を抜いてもいいんだよって桜が教えてくれるのかなっていう気持ちになりました。 S:(反応)(参ったの顔) n:最初のいのちはひらがなで、桜は普通にしてれば毎年繰り返して咲くけど二つ目の生命は人間だとしたら人間は1回きりになるので、なんかすごい重さを感じる。 T:可愛い、健気、こっちは重さを感じる。もっともっと聞きたいけど最後にもう1回自分でこの歌を自分の味わいで読んでみてください。 (授業記録はここまで) ・銘々短歌を読み味わう。そして、振り返りをする。 ・ふり返りはスクールライフノートに書くよう指示。学びの天気をつけるのと自分の変化を記した。 Iさんkさんは上の句の「いのちいっぱいに」でつながってともに、桜の満開な様子を想像し、それをlさんが下の句の「生命をかけて」につなげ、mさんnさんは二つの「いのち」「生命」を対比させました。もちろん本人たちがつなげて発言しようとしているか否かは不明です。その意識はないのかもしれません。でもこうしてみるとつながっているのです。大人の発言なので、実際は一人一人がかなり長く話しています。迷いながら話すので時間もかかります。生徒役は聴く力をかなりもっています。後半の発言で特徴的なのは、「〜だなあ」という表現が多いことです。情景を頭に浮かべ、感じているのではないでしょうか。 その3に続きます。 「授業アドバイスツール」で手軽にはじめる授業改善(玉置)タブレット等の携帯型端末を利用したこのツールは、授業シーンを振り返りながら授業検討を行う際や、指導や助言を行う際に、気軽に使用できるツールです。 愛知県海部郡大治町では、2019 年春より、「授業アドバイスツール」を使用した授業検討や指導を実践していただきました。 4 人の校長先生から、ツールの有用性や活用方法などをお伺い、「手軽にできる授業改善ツール」である実践ができましたので、具体的活用方法や効果などをリーフレットで発信しています。 ぜひここをクリックして、詳細をお読みください。(玉置) この事態における学び合い オンライン模擬授業その1 <栗木>
ZOOM機能を用いて、オンラインによる学び合い模擬授業の授業者役を体験させていただきました。ただし、生徒役は小中学生ではなく大人です。
ここのところ、オンライン飲み会なるものも流行し、テレビ番組でも普通にみかけるようになったオンライン会議。この1、2か月で急速に普及しました。学校が休校になり、一部地域の一部学校、あるいは学習塾等では「オンライン授業」が行われています。オンラインでどのような授業ができるのか、通常の教室で行われているような学び合いはできるのか、幾つかの課題に挑戦しました。 ZOOMという機能の存在を知ったのは、授業日の約1週間前。生徒役の方々に出会った(あくまでも画面越しです)のも約5日前。ZOOMを使ったのは1日前。この短歌を用いた授業をするのは初めて。初めて尽くしの体験でした。どんな授業であったのかは、実際の授業記録を見ていただくことが一番です。一部省略しながら記します。 2020年4月8日 模擬授業 参加者19名(在宅) 授業者栗木 国語 短歌の模擬授業 「桜ばな いのちいっぱいに咲くからに 生命をかけてわが眺めたり」 岡本かの子 1 ホワイトボードに書いた歌を画面提示し、生徒にはノートに写す指示。写せたら各自で音読を繰り返す。続いて頭の中に映像を思い浮かべながら仲間の読みを聴く。ここまでは通常の授業通り。 2 「気になること気づくこと気に入ったこと」などをノートに書き込みを指示。当然だが手元が見えないので書けているかわからない。通常なら書けていない生徒や困っている生徒に声をかけるがそれができず顔の表情で判断するしかない。 3 ブレークアウトセッション(グループの人数指定やメンバー指定も可能)を用いてグループにする。気になったことがある人から声を出すように指示。グループの時に顔はとても自然。やはり少人数対話は必要。 4 全体で共有。考えが広がる。 (発言者 T:授業者 S:生徒役 小文字:個人名) T:(全体に)戻ってきて。気になることを聞いてもらえた?自分から言えた? S:(頷き) T:気にあることのある人からどうぞ。 a:私たちのグループの中では、作者はもしかしたら死期を悟っているのではないかと。 S:(驚きの表情) a:桜が一生懸命咲いているのを見て、自分も残された命を、命をかけて全うするっていう意見が出てきて。 T:その意見だしたbさんどこからそう思ったの? b:命が二つ出ているので、二つの命を比較しているような感じかなと思ったんですけど、「生命をかけて」っていうところから死期を悟っているなって感じました。 T:(一番リアクションが大きかったc君指名)それ聞いてc君どう? c:僕らの班ではそこまで深読みできなくって、なんで「いのち」ってひらがなと漢字(生命)で書いてあるんだろうっていうところから話していて、そこまで作者の状態とかなんでとか考えられなくって、本当にすごいなーって思いました S(反応) d:aさんは作者目線だって言っていたんですけど、私たちのグループでeさんは桜目線の話なんじゃないかとおっしゃっていて、すごくびっくりして。 S:すっげー。(誰が発生したかは不明) T:ちょっと桜目線になってこの歌読んでみようか。 S:(銘々読み) T:なんか生まれてきたことある? f:桜の幹から桜を見ているというのにつながるのかなって。桜の幹が自分になっている花を見ている様子を歌っている。自分の前髪を見ているような感じ。 S:(みんなの顔が変わる。参ったという表情もあり) T:誰かほーってなってるよね?それ聞いてどう?生まれてきたこと。 g:さっきのグループでhさんが言ってたんですけど、「いのちいっぱい」の方がちょっと軽めで、「生命をかけて」の方が結構一生懸命さがあって、その生命をかけてみている人間たちを、客観的に見ているみたいな、そんなイメージを感じました。 一回目のグループの後の全体共有では、このような発言や反応が続きました。aさんはグループで聴いたbさんの考えを紹介し、それに触発されてcさんに感動が生まれ、一方でⅾさんがグループで聴いたeさんの違う新しい視点を皆に広げます。思いもよらなかった発想を謙虚に受け止めたfさんが自らの考えを深め、gさんは「見ている」という点で、前述のcさんの疑問点につなげます。それぞれの発言が羅列のようでいてつながっている、そんな様子です。 続きはその2で。 月刊誌PHPに「心の天気」掲載(玉置)***「心の天気」で子どもたちの気持ちを知る*** 文部科学省は、現在、子どもたち一人一人にコンピュータを渡し、学校での学びをより豊かにする施策を進めようとしています。すでにこれが現実化されている学校があります。その学校での取組を紹介します。 その学校では、私が発案した「心の天気」というシステムを使っていただいています。「心の天気」は、子どもが登校したときや一日を終えたときに、システムを立ち上げて、今の自分の気持ちを「晴・曇・雨・雷」のいずれかのマークで示すだけの単純なものです。学級担任は自分の学級の子どもの「心の天気」、学年主任は学年全体、校長は全校の子どもの「心の天気」を手元のコンピュータで見ることができるようになっています。 たったこれだけのことなのですが、学校内に大きな変化が生まれてきています。子どもと先生の距離が、グッと縮まったのです。 例えば、前日「晴」だった子どもが、突然「雷」になることがあります。担任は、その理由を聞きたくなります。「何かあったの?」とさり気なく聞いてみると、昨晩、家庭でスマホの使い方で厳しく怒られたとのこと。そして、こう言った子どもがいたそうです。「先生に言ったら、すっきりしたよ」と。ちょっとしたことですが、「心の天気」がコミュニケーションを生み出すきっかけになっているのです。 実は、私のゼミ生も「心の天気」を毎日入力しています。この「心の天気」でゼミ生といつも結び付いているなという感覚を持つことができています。学級担任時代を思い出しています。 ある学生が「雷」マークだったので、聞いてみると、バイト先で重要な役目をもらったのに、うまく出来なかったことが「雷」の原因だったそうです。さっそくコメントを返して、その学生と会話を楽しみました。 「心の天気」について、次のように書いたゼミ生がいます。 「晴、晴、晴と連日、晴が続いていた私ですが、とうとう雷になりました。私は、雷はイライラしたときの気持ちやどうにも言葉にできない気持ちを表すものだと思っています。 昨夜、雷になってしまいました。自分の情けなさや周りに対しての不満。自分で頑張っていると思っていた事を心ない言葉で否定されると、もう、何というか、言葉にできなくて。私の「心の天気」が雷になりました。 このことで『心の天気』は、とても良い仕組みだと感じました。言葉にならない気持ちを吐き出すことができる小さな避難場所です。この避難場所があることがどれだけ救いになることか。言葉にできない黒く重い気持ちは、その人の心にずっと靄のように居続けます。その靄は自分一人の力では吐き出せません。そんな時にこの心の天気は大活躍すると感じています」 今日もゼミ生たちの「心の天気」を気にしている私です。(玉置) この事態における学校と保護者と地域四方山話 みんなで一緒に安心安全な学校を!編 <栗木>
学校再開に向けて、各校で様々な対応を考えていらっしゃると思います。取り巻く事情はそれぞれに違うのですから、学校ごとの工夫が必要になってきます。「お帰りなさいプロジェクト 〇〇モデルを作ろう!」と、全職員が分担してアイデアを出し、再開に向けてのシミュレーションをしている学校もあります。
感染予防は、二重三重に考えます。ひとたび感染が起きれば、最低でも1か月単位の待機になるのですから、ここまでやるのかというぐらいの徹底が必要です。そこには人員の確保や費用、環境、物資不足など、様々な困難も生じます。そんな時、学校の外に視野を広げてみませんか?学校にはそれを支えてくださる保護者や地域という、強い味方がいるではありませんか。その力を頼らず、学校だけで何とかしようとしていませんか?一生懸命考えれば考えるほど、学校は学校の中だけで解決しようとする特性をもっています。もっと視野を広げればよいアイデアが出てきたり、支援者が出てきたりします。眠らせておくのはもったいない。違う視点でいえば、地域の財産を活用するのも学校の役割の一つです。今こそ、学校が学校で完結しないで、「私たちと一緒に安心安全な学校作りをしましょう」と声を出す時です。「困ったらSOSを出す。困っていると言われたら手を差し伸べる。」それが「自立」です。 1 保護者の声を聴く 再開に際して、いち早く理解と協力をお願いするのは当然保護者です。登下校の送迎、体調管理などこれまで以上に家庭に委ねることが多くなります。何よりも、ご家庭がお子さんの安全に高い関心を寄せていらっしゃいます。各学校での対応を一早く決め、周知をしていくことです。「学校はこういう対応を考えています。」と具体的な対応を示し、加えて「ご心配なことはありませんか?足りないことは何ですか?」と聴いてみてはどうでしょう。ご高齢者のいる家庭、医療従事者である保護者など、家庭事情によって心配する観点も異なります。すべてを網羅することはできないとしても、「聴く耳」をもち、時には個別対応も考えていく姿勢が安心につながります。ある学校は、希望保護者にモニターとして学校参観をしてもらい、ご意見をいただいた上で修正していくことを検討しています。それが「一緒に作る」ことです。 そのうえで、お願いすることもたくさんあります。保健室対応もその一つ。体調を崩した時、一時的に預かることもこの事態ではできません。いつでもすぐに連絡がつくことと、いち早く迎えに来てもらうことを強く依頼していくことです。文書やメールだけでは意図が伝わりにくいもの。直接電話や対面でお願いしましょう。 2 支援者を募る 感染予防のため、校内に教職員以外の人が入ることを心配する気持ちはわかりますが、人員不足により安全が守れなかったという事態にならないためには、地域や保護者の支援を募るのも一つの手段だと考えます。例えば、「給食ボランティア」「授業見守りボランティア」などはいかがでしょう。給食配膳はこれまでのような給食当番制はできません。先生だけではなくお母さん方に手伝ってもらうのです。授業はT2を地域の教員OBにお願いしてみましょう。授業研究もできて一石二鳥です。 3 物資支援を声にしてみる 学校を、子どもを守るために、これがあれば・・と思いながらも、諦めてしまうことはありませんか?また、校内だけで何とかしようとしていませんか?社会には、誰かの役に立ちたいと思っている人たちや企業がたくさんあります。畑違いの商品を作って社会貢献してくださっているのもその一つだと思います。地域にある商店、企業、あるいは個人、きっと学校の、いや子どもや先生のために役立ちたいと思っている方がたくさんいるはずです。「こういうのを作って助けてもらえませんか?」と申し出てみましょう。それが地域を活性化することにつながるのですから。 最後に、学校の対応が形になったとき、必ず第三者に客観的に見てもらうことをお勧めします。先述の保護者モニターも一つですし、地域有識者のアドバイスをもらうこともできます。自分たちで何とかする・・それはそれで立派な心構えです。でも、これからの社会はそれだけではたちうちできません。だから「社会に開かれた教育」をするのです。いかに多くの仲間を集うか。まずは学校が、その姿勢を示しましょう。 「学びて思はざれば則ち罔し 思ひて学ばざれば則ち殆し。」です。 この事態における教員ICT研修四方山話Part3<和敏>
この事態、遠隔授業・オンライン授業が注目され、今まであまり縁のなかったテレビ会議システムの導入を検討する学校が多くなっているようです。そこで、少しテレビ会議システムについての四方山話を書いてみます。
テレビ会議システムと言ってもいろいろあります。この事態、授業として使うとなると、どんな授業を考えているかによるところが大きいと思います。学校としては、設定が簡単で、セキュリティ面での不安も少なく、子どもたちが参加しやすいもの。子どもたちとしては、操作が分かりやすく、授業に集中しやすいものになってくると思います。何よりも、安定したネットワーク接続が維持されるものであることは言うまでもないことです。 それでは、もう少し耳にした特徴を書いてみましょう。(無料で使用することを前提として) (1) アカウント (一部、変更箇所あり) A B C すべて、主催者は、それぞれのアカウントが必須。 アカウントは、無料で作成可能。 (2) 一画面に表示できる人数 A 通常25人(拡大表示49人:PCのスペックに左右される) B 16人 C 9人 (3) 同時接続人数 A 100人 B 100人 C 250人 (4) チャット機能 A B C すべて可能 (5) 画面共有(教師や子どもの画面をみんなの画面に表示する) A B C すべて可能 (6) 制限事項 A 3人以上の場合40分間 B 9月30日までは、連続300時間 それ以降60分間 詳細は、まだまだあるようですが、この事態で使うとなると、まず知っておきたい内容ではないでしょうか。 A、B、C どれが優れているかではなく、どれが、自校のめざす授業に近いかを検討することが大切になるでしょう。個別指導に使うのか、普段のような授業に使うのかで、適するシステムは変わってきます。 いずれも、無料版がありますから、一度試してみることが一番でしょう。 ※ 四方山話です。間違いがありましたらお許しください。 A:Zoomミーティング B:Google Meet C:Microsoft Teams この事態も、いつか落ち着きをみせ、いずれワクチンや治療薬が開発されることでしょう。しかし、それでもインフルエンザのように、ある時期、ある地域で感染が拡大し、学級閉鎖や学校閉鎖をしなければならない事態が起こることは想像できます。そんなときに、今回の経験からオンライン授業を実施する学校が出てくるかもしれません。「新しい日常」と同様に「新しい学校」として。そんなときのためにも、落ち着きを見せたときこそ、学級等を閉鎖するときの対策を検討していくべきかもしれません。 この事態における学び合い 先生の挑戦と生徒の思い <栗木>新学習指導要領には、「これからの社会が、どんなに変化して予測困難になっても、 自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい。」という願いが込められています。改訂の考え方として強く打ち出されてきたのが、「主体的・対話的で深い学び」を目指す授業改善です。教師の教えを一方的に受信する教育や知識・技能の習得を急ぐ教育ではなく、子どもが主体となってわからなさや困難さに自ら向き合い、仲間と協同しながら探究、思考、発見、創造していく「学び」にあふれた授業が大切です。ところが、今、その「学び」の場が奪われています。まさに、「予測困難」な事態が起こってしまったために・・。 世間では長期化する休校に、学習の遅れを危惧する声が高まり、各自治体や学校が工夫して、子どもたちの学力を保障しようとしています。ここでいう「学力」が、単に知識や技能の習得だけであってはならないと考えます。学力は「学び力」です。探究し、思考し、発見し、創造していく力がストップしてしまうことを恐れています。 ここに、離れていながらも僅かなつながりを活かして、「学び力」の継続に挑戦した一人の先生の工夫と生徒の思いを記します。 一公立中学校の社会科の先生です。二年生で歴史を担当していた昨年度末、全国一斉休校により単元の一部を積み残して終えることになってしまいました。四月になっても休校は続き、加えて、新年度は担当学年が変わることになりました。生徒たちは社会を、そして学びを楽しみ、なぜだろう、どうしてだろうと、同時代性に立って歴史を考えることを身に付けてきました。何とかして学び力を継続させたい、そう思った先生は、オンライン授業を考えました。オンラインといってもその学校にあるのは、学校ホームページと学校メール。一人一台のPCもありません。それでも、一方的な知識の伝達にならない方法はないか模索し、たどり着いたのが動画配信とメール送受信です。 教室で行われていた授業は、毎時間資料の提示から始まります。歴史ならば風刺画や当時を反映した絵画等が主です。生徒はそこから気づいたことや気になったこと、浮かんだ疑問を見つけ、仲間と対話しながら探究し、考えを繋ぎながら当時の人間の生き方や思想に迫っていくという授業でした。それと同じことを動画で行ったのです。一本目の動画は課題提示として資料を投げかけます。生徒には気づきをメールで送ってほしいと伝えました。始める前、返事は来ないと思っていたそうです。ところが、予想に反して初日から返事がきました。しかも複数。「上の絵は、何かが燃えていて、それを見て人々が喜んでいることに気が付いた。」「真ん中の絵は、武器を持って反乱している人々を政府の人達が止めている様子かなと考えた。また、上で燃えているのも反乱の一部なのかなと考えた。日露戦争に勝ったばかりなのにどうしてだろう。」これらを先生がつなげ二つ目の動画にして配信します。それを見た生徒がまた考えたり調べたりして考えを深めます。「僕は、この頃の国民は政府に『もっと戦争をしろ』というだろうと考えた。なぜなら日清戦争・日露戦争と二回続けて勝っていて、国民は苦しくても国自体は一度も攻撃されたことがないから、国民は負けることについてあまり考えないだろうし、日清戦争では賠償金がもらえ、いい思いをしただろうから、国民は『戦争をして勝てばいい思いできる』という考えになりそうだなと考えたからである。」というようなふり返りがメールで送られてきて、それをまた3本目の動画で紹介します。これを続けること約1か月。回を重ねていくうちに参加生徒も増え、最後の動画にはこんなメールが。「毎回メールすることは出来なかったけど、ただ教科書を見て暗記するだけでなく、ちゃんと考えて勉強できました。3年生なっても、話し合いと発言を大事にします!」 さらに予期せぬプレゼントが届きました。生徒の代表がラインで仲間の声を集め、先生にお礼のメッセージを送ってきてくれたのです。半数以上の生徒が参加していました。「人とかかわらないことがどれだけ人をだめにするか。かかわることの大切さを学べるのは学校がもつ意味の一つ。」先生の信念と愛情が生徒の心と学び力を動かしました。 この先生の挑戦は今、全教員に広がり、学校を元気にしました。顔は見られなくても心はつながります。つながることで学びは続きます。また、学びはその学級の先生と児童生徒のあうんの呼吸で育まれるもの。学級色豊かな学びが続いていくことを願います。 尚、「スクールライフノート」の機能を使えば、こういうつながりが生まれることも記しておきます。 ピンチをチャンスに変えよう(大西)
ピンチをチャンスに変えるとよく言われますが、今回の新型コロナウイルス対応のピンチをチャンスにできる学校は何が違うのかを考えてみたいと思います。
公立の学校では国や設置者である市町の教育員会の判断・指示に従うことが必要です。そのため今何をすべきかを自校で判断できない、また積極的に考えようとしなかった学校が多かったかと思います。もちろん、その一方で、今子どもたちに必要なことは何か、自分たちにできることは何かを考え実行した学校もたくさん目にします。学校全体でこうしようと考え判断したところもありますし、先生方が一人ひとりで今自分にできることを考え工夫している学校もあります。結果に100%満足できなかったとしても、自分たちで考え工夫し実行したことは先生方に大きな手ごたえと自信を感じさせたのではないでしょうか。やがて学校は再開されるでしょうが、未知の状況で新しい学校運営が求められることになります。この時、自分たちで考え・判断して行動した達成感は大きな力となると思います。ピンチがこれからの学校をつくるための基礎体力をつけるチャンスとなったのです。 質はともかく、この事態に対して私立学校の多くは素早く対応しているように思います。公立と違って自校単独で経営判断できることが大きな要因と思います。 公立の学校にそのまま当てはまらないことが多いかもしれませんが、私立の中学校高等学校での取り組みを紹介します。1人1台にiPadがある恵まれた環境だからできることが多いのですが、学校が、先生が変わるために大切なことが見えてくると思います。 政府による臨時休校措置の要請を受けた時には既に学期末だったために、目先の授業進度のことはそれほど大きな問題ではありませんでした。そこで今後のことを考えてICTの活用研修を集中的に行いました。この学校では役に立ちそうなアプリケーションやサービスを積極的に導入しています。有料のものも導入されていますが、一度導入したからといって翌年以降も自動継続というわけではありません。私立の学校は生徒や保護者からいただいているお金という意識が強いので、活用しながら積極的に見直しと入れ替えを行っています。新しいものが入ればその都度研修が必要になりますが、積極的に参加する先生ばかりではありませんでした。しかし、今回のことで、課題配布や提出にICTが有効なことはどの先生も実感しました。予想以上に多くの方が前向きに参加し、学校で使えるアプリケーションやサービスについての基礎的なスキルを身につけました。 積極的な先生は、休校中にオンラインで講演会を開き振り返りを全体で共有するといった先進的な取り組みを行いますが、誰にでもすぐにできることではありません。研修は受けたものの、課題のやり取りをオンラインで行なう程度にとどまる先生がまだ多数でした。この状況を変えたのが、新学年になっても休校が延長されたことです。「このままではいけない」と、先生たちの中に危機意識が生まれてきます。子どもたちの「学びを止めない」が先生方の思いとして共有されました。このことが、ピンチをチャンスに変える原動力になったと思います。 できることをやってみよう。教科主任会が中心となって、ゴールデンウイークまでに一度はオンラインで双方向の取り組みに挑戦しようと呼びかけました。これを使ってこうやってくださいと具体的に指示するのではなく、自分にできることをやろうという呼びかけでした。先生たちは交代で自宅勤務ですので、直接会って相談することもなかなかできません。どうしていいかわからない、何をしようかと悩む先生も多かったと思います。ここでポイントとなるのがホームページを活用した先生方の取り組みの見える化です。学年での取り組みや学級、教科での取り組みを簡単に紹介するのです。 同じように課題を与えて提出させるといっても、通常のワークシートをデジタル化しただけのものもあれば、自分で制作した自己アピールの動画や英語のスピーチといったものもあります。中国のある時代の成立から滅亡までをいろいろなツールを活用してグループごとにスライドにまとめるといった世界史の課題もありました。作ったスライドはオンライン会議システムを使って発表し、その評価をいろいろなツールを活用して共有します。事前に動画を見てからそれぞれ振り返りを提出し、よくわからなかったところを中心にオンラインで解説する授業もあります。また、ネット上でグループの考えをしゃべりながら、共通の画面で作業しまとめ、授業者は子どもたちの作業中はオンライン会議システムの音声だけを使って支援する道徳の授業も行われました。同じようなツールを使っても先生ごとに多様な試みがなされています。 自宅勤務が続きコミュニケーションが取れない時だからこそ、他の先生がどのような取り組みをしているのか気になります。取り組みの様子がホームページ上で紹介されることで、よい刺激とたくさんのヒントが得られます。多様な取り組みがあるから、自分にできそうなことが見つかるはずです。実際にオンラインの授業に挑戦した先生は子どもたちの関わりたい、学びたいという思いを痛いほど感じるようです。オンラインでの取り組みに挑戦する先生の姿がどんどんアップされていきました。 ホームページの記事の中で、「こんな時期だからこそ、自らの興味からより深い内容を追究していける力をつけてくれることを期待しています」といった、先生の思いが書かれていることがあります。ふだん他の先生の授業に対する思いを聞くことは意外と少ないものです。こういう思いを共有することも、先生方が授業を変えていくエネルギーにつながっていくと思います。 もう一つ鍵となるのが、校長の発信です。強制するのではなく、各自でできることに取り組んでもらい、その取り組みを共有する環境をつくった上で、ホームページ上で先生方の取り組みを価値付けしています。こういう状況だからこそ、ホームページは保護者や地域だけでなく、先生をつなぐ道具としても有効になっています。 今回のピンチをチャンスに変えるためには、機器の整備や研修といった環境面の課題が多いことは間違いありません。しかし、環境面が整っているから上手くいくとは限りません。授業と学びコラム「できない理由を探すことより、できることから始めましょう(大西)」でも述べましたが、現在の環境の中でできることからとにかくやることです。それが学校全体の取り組みでなくてもよいのです。たとえ個人の取り組みでも、一人ひとりができることをやろうとする空気をつくることが大切です。管理職は、「できない人がいるからやらないように」と足を引っ張るのではなく、その取り組みを共有し、「できることをやっている」ことを価値付けしてほしいと思います。その有効なツールがホームページです。ピンチをチャンスに変えようとしているかどうかはホームページに現れると思います。 今回のピンチをチャンスに変えることができたどうかは、学校再開後にはっきりするでしょう。一校でも多くの学校が、チャンスに変えられることを願っています。 「この事態における授業づくり授業技術四方山話」(和田) 振り返りで書く力をのばそう!
★ 図書館にある人気本「ズッコケ三人組」の作者は児童文学作家の那須正幹さんです。
那須さんは、「休校が続く今を“学びの機会”としてプラスに捉えよう」と次のようなメッセージを子どもたちにおくっています。 ≪日記をつけて自分のことを振り返ろう≫ ぜひ、やってもらいたいことは、日記をつけることです。こういうときこそ、自分の身の回りで起こったことをなんでも記録しておくということがすごく大切じゃないかと思います。自分のことを振り返るというのは大人になっても大切なこと。 いずれ必ず役に立つときがきます。 ★ 心理カウンセラーや臨床心理士の方もいろいろな場で提唱されています。 ≪褒め言葉で自己肯定感を高めよう≫ ノートやスマホのメモ機能などを活用して「今日、よかったことを三つ書く」「ほめ日記で自分を褒める」などを実践すると自己決定感や自己有用感が高まります。 ★ 新学習指導要領では、以下のように示されています。 新学習指導要領 総則編(第1章第4の2(4))より一部抜粋 ≪各教科等の指導に当たっては、児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるように工夫すること≫ 各教科等の指導に当たっては,児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるように工夫することが重要であることを記述したものである。具体的には,例えば,授業の冒頭に当該授業での学習の見通しを児童に理解させたり,授業の後に児童が当該授業で学習した内容を振り返る機会を設けたりといった取組の充実や児童が家庭において学習の見通しを立てて予習をしたり学習した内容を振り返って復習したりする習慣の確立などを図ることが重要である。これらの指導を通じ,児童の学習意欲が向上するとともに,児童が学習している事項について,事前に見通しを立てたり,事後に振り返ったりすることで学習内容の確実な定着が図られ,思考力・判断力・表現力等の育成にも資するものと考えられる。 ステイホームの間、「話す活動」はかなり制限されました。 逆に「書く活動」は個人差はあってもいつもより増えたのではないでしょうか。この状況を活用して学校再開時には、「振り返り」を習慣化し書く力を高めることにつなげていきたいものです。今まで実践していなかった先生もこれを機会にチャレンジしてみましょう。 ≪振り返りのワンポイント≫ 1 授業の終わりに振り返る時間を設定します。 2 毎日続けることで学びを振り返る習慣が身に付きます。 3 個に応じて書く量に差があります。 4 「よくわかった」ではなく、「・・・と言う考え方がよくわかった」と考えた内容や過程を書くようにします。 5 苦手な子は他者の振り返りを聞いて、自分に近い考えを選択することからスタートします。 6 振り返りの内容は次時の導入や課題設定に活用できます。 日本教育新聞社に「C4th Home&School」の実践掲載教育現場のネットワークシステムなどを扱うEDUCOM(愛知県春日井市)が提供していると題しての記事です。次のように紹介されています(一部のみ紹介) 同システムは、インターネットを通した学校から保護者への連絡機能が中⼼。保護者がスマートフォンに専用アプリをダウンロードし、学校から配布されたIDとパスワードで登録すると利用できる。ログインできるのは本人のみだ。教員も保護者と同様に登録し、アプリや校務用パソコンから保護者に情報を発信したり、登録している教員同士でやりとりをしたりする。 情報のカテゴリーは、「校長先生からの言葉」「クラスからの連絡・宿題」「お便り・資料連絡」「グループ通知」など。 ※詳しくは本研究所サイトの「研究所&EDUCOM関連発信」に掲載した記事からお読みください。 この事態における授業づくりと授業技術四方山話」(和田)子どもとの絆を深める学習規律 (小学校版)
三つの密(三密)についてのお話
(1)風通しのよくない「ムンムン」する建物やお部屋にいないようにする (2)人が「ギュウギュウ」と、たくさんいる場所には行かない (3)人とお話するときは、「ガヤガヤ」と近づいて話をしない これは、小学校1年生でもわかるように「三つの密」について知事がテレビで伝えた内容です。先生が朝の会で毎日お話をし、帰りの会ではそれが守れたかどうかを確認するそうです。高学年には優しすぎるという意見もありましたが、「ムンムン」「ギュウギュウ」「ガヤガヤ」という表現は子どもにはとても分かりやすく好評のようです。合言葉のように子どもの心に残るキーワードを取り入れたことがよかったのでしょう。 つまり、三密を伝える側(教師)、受け取る側(子ども)の双方にとって簡単で覚えやすく合言葉のようになると周知徹底しやすくなるのです。まさに、学習規律の基本と言えるでしょう。 今、学校が再開しても入学、進級したときと同じように学習規律を身に付けることからスタートしなくてはなりません。コロナの状況から三密に関することも含めて教師はたくさんの規律を子どもに徹底させなければいけない状況にいます。しかし、子どもは登校し、友達と再会できた喜びでいっぱいのはずです。禁止行動ばかりを話すスタートではなく、笑顔で学習規律が身に付くように工夫していきたいものです。その一例を書いてみます。 1 禁止行動より推進行動を示す 「廊下を走らない」ではなく「静かに歩こう」 「大きな声を出さない」ではなく「〜ぐらいの声で話そう」 「〜してはいけません」と禁止するときは、どうしてもきつい口調になり注意している雰囲気になります。「〜しよう」と望ましい行動を促すときは温かな雰囲気が伝わります。人の名前を呼ぶ時に「○○」と呼び捨てにすると、どうしてもその後にネガティブな言葉が続くが、「○○さん」と呼んでから話し始めると落ち着いて話ができると先輩から教えてもらいました。特に生徒指導のときに役立った経験があります。挨拶も「○○さん、おはようございます」と名前がつくとより絆が深まります。 2 自分で振り返りをする 「ルールを守れましたか? 守れた人は手を挙げてください」という教師の言葉をよく耳にします。手を挙げた人数が評価の基準となっています。守っていなくても挙手する子が出てきてしまったという経験はありませんか。授業も含め、学習規律の徹底にも子ども自身の振り返りを共有することをお勧めします。 T: 「ギユウギユウはどうでしたか」と発問をする C1: よく守れた。手が届くようなところに人がいなかったよ。 C2: 手を洗う時にちょっとギュウギュウに近くなっちゃった。もっと離れて後ろで待てばよかった。 他の子どもたちもC1やC2の意見を聞いて自分はギュウギュウを守れたと言っていいかどうかを判断し、明日からの行動を考えるようになります。 近づきすぎると「ギュウギュウになっているよ。もう少し後ろで待ってね」と子ども同士が声かけ合うようになれば、規律がかなり徹底されてきたと言えるでしょう。 教師は、子ども同士の温かくなるような声かけ場面をみつけ、その事例を広めることに力を注ぎましょう。「先生、そんなことまで見ていてくれたんだ。嬉しいな」と子どもが思うような場面紹介ができると信頼が深まります。 この事態における学校でのICT活用四方山話 Stage4<神戸>
今までは、授業に関することを書いてきましたが、今回は、学校生活について書いてみたいと思います。
★ 人と人との接触を減らす 学校生活が少しずつ始められるようになったら、感染拡大防止のため人と人の接触を減らしたり、大きな声での会話を控えたりすることになるでしょう。そうなると、毎朝の健康観察の結果集計のために、養護教諭が各教室をまわることも止めなければならないし、子どもたちへの朝の口頭連絡も減らす必要が出てきます。同様に、職員間の打合せも口頭ではなく文字で伝えることが望まれます。こんなときこそ、ICTの活用を考えるとよいと思います。担任が教室からタブレットを使って、出欠席を入力するだけで、養護教諭の手元のPCに集計結果が表示される。養護教諭は各教室をまわらず、短時間で把握でき、的確な対応ができるようになります。連絡事項も口頭ではなく、掲示板機能を使って教室のディスプレや大型提示装置に表示すれば、概ねの連絡は完了できます。1人1台のPCが実現できていれば、子どもたちのPCに連絡事項が表示されます。職員間は、現状の統合型校務支援システムをフル活用すればいいわけです。ネットワーク環境はかなり整備されています。人の移動や接触を極力減らすために、ICTをどう活用するかを考えていくことが重要になるのではないでしょうか。今までとは違った、新しい学校生活を築くつもりで。 ★ 使い回しのタブレット GIGAスクール構想が注目されていますが、1人1台のPCを実現している自治体・学校は、まだまだ少ないです。しかし、この事態ですから、授業が再開されれば、学校のタブレットを子どもたちに貸し出すことが考えられます。それでも、1人1台のPCが実現できる学校は少なく、1台のタブレットを何人かの子どもで使い回すことになるのではないでしょうか。手洗いを徹底させている状況ですから、タブレットも、使うたびに消毒・除菌を行わなければならないでしょう。しかし、そんなことは、現実的ではないです。そんなとき、次のような方法で活用しようとしている学校があります。それは、タブレットを無色透明な袋の中に入れて使い、使い終わったら袋を廃棄する。次の学級も同様の方法でタブレットを使う。こうすれば、タブレットの消毒・除菌を行う手間は省けます。袋への入れ替えは、先生が使い捨て手袋で行うそうです。 (こんな時だからこそ、許される使い方かもしれません。静電気や熱には十分注意) これだけのことをしてまでもタブレットを使うのには、「3密」を避けながらも子どもたちの学びを保障していこうとする姿勢からだと思います。 ★ 子どもを守る、職員を守る さて、とっても難しい課題があります。それは、職員室です。想像してください。職員室の先生方の机の配置と机上の様子を。かなり密な配列がされ、たくさんの資料や本が山積み、空いているスペースなどほとんどないのではないでしょうか。子どもたちの安全を守るためには、子どもたちの前に出る先生方が安全な環境で仕事ができていなければならないはずです。毎日、毎時間かは分かりませんが、定期的に机上の消毒・除菌をする必要が出てくるのではないでしょうか。「3密」を避けるのは、子どもたちだけでなく、先生方も同様のはずです。 まずは、机上の整理整頓から。(ICTに関係ありませんでした。) この事態における学校でのICT活用四方山話 Stage3<神戸>そこで、オンライン授業を少しでも普段の授業に近づけていきたいという思いから、四方山話を書いてみようと思います。 Stage3 つながるための双方向授業づくり ★ 動画配信のその後に いろいろな形で動画配信が行われています。しかし、その動画を観た子どもたちの「分からない」「何故だろう」という疑問や感想・意見をどう子どもたちにつなげていくのかで、先生方は苦慮しているようです。ある学校では、動画の最後に、「意見や質問はメールで!」と示し、学校の代表メールアドレスを紹介していました。これだけでも、子どもたちの学びを大切にしようとしていることが感じられます。学校と子どもがつながる手段として、メールを使うのはICT活用としても意義のあることだと思います。その後、その疑問を発信者に返すのみでなく、新たな課題として、学年の子どもたちへ投げかけ、子どもと子どもをつないでいこうとしているのです。ただ単に動画配信するより、かなり有効だと思いませんか。しかし、どうしてもタイムラグがあるため、間延びしないよう、つなぐ内容も、普段の授業以上に吟味しなければならないようです。 GoogleのClassroomやEDUCOMのスクールライフノート等を使うことで、疑問や意見を即座に共有することができます。そこから、友だちの考えやアドバイスを読み、課題を解決したり、学びを深めたりしていくことが可能性になっていくと考えられます。(通常の授業でも活用でき、さらに大きな効果が期待できます) この事態、動画配信を行うことは、とても価値のあることだと思います。しかし、それだけではもったいないと思いませんか。動画配信のその後に、チャット的なものや、ポートフォリオ的なものを入れることで、子どもをつなぎ、学びを深められれば、さらに価値あるものになっていくと思います。 ★ テレビ会議システムの活用 このような事態になり、急激に学校教育に入ってきた「テレビ会議システム」を活用した「オンライン授業」。「動画配信」との違いは、リアルタイムに授業者が子どもたちの顔を見ることができること、子どもたちが授業者や友だちの顔を見ながら、授業に参加できることです。子どもたちの表情が見られるから意図的指名ができ、子どもの「分からない」をすぐに共有でき、子ども同士の話し合い・聴き合いができるところです。さらに、グループでの学び合いも可能になります。そう考えると、かなり普段の授業に近いことができるようです。しかし、目の前に子どもがいるわけではないですから、手元でやっていることが分からなかったり、分からない子どもが、隣の子にそっと聞いたり、周りの子の様子をモニタリングしたりすることは難しいです。こんな点から、授業者が子どもと子どもをいかにつないでいくかが、とても大切な要素となっていきます。 授業スタイルは、Stage2の「動画配信」でも書いたように、普段の授業を行ってほしいと思います。スライドショーを一方的に説明しているような、よく見かける動画配信のスタイルではなく、子どもたちの思考に寄り添って、子どもたちの言葉を板書したりして、一時間の授業の流れが、カメラを通して子どもたちに分かるようにしていくとよいのではないでしょうか。折角、画面を通して、対面しているのですから。そのメリットが十分に発揮できるようにしてほしいものです。 それでも、目の前に子どもたちがいる教室での授業のようには、なかなか出来ないと思います。 得意な子どもは、それなりに学んでいくでしょうが、不得意な子は、一人だけでは困難な場面が多くなり、孤立してしまうかもしれません。「分からない」子どもを、通常の授業以上に大切にし、生かしていくよう心がけていく必要があります。また、保護者の協力は不可欠だと思います。十分な理解が得られるように努め、子どもたちを支援していただき、授業を進めていけることを願っています。 この事態における学校と保護者と地域四方山話 できるといいなあ編 <栗木>
前回は現職としての体験を記しました。今回は、現職を離れて、こんなことができるといいなあという願いを込めて記します。
2重構造できるといいなあ 前回の最後に、学校ホームページ作成機能を使って、卒業式の様子を配信したことを書きました。卒業式に限らず学校で何かあると、アクセス数が急増します。時には児童生徒数の数倍になることもあります。アクセス数はいわば、その学校への関心度のバロメーターだとも言えます。今、この事態になって、学校ホームページが学校と児童生徒・保護者をつなぐ大きな役割を果たしていることは間違いありません。ある地域では、ホームページで先生方が児童生徒に励ましの言葉を伝え、それを見て「帰る場所がある」と子どもたちが感じたというすてきなニュースがありました。学校ホームページは心の拠り所でもあるという証です。それは児童生徒と保護者だけではありません。ホームページの一画から校歌を聞けるようにしたら、瞬く間に卒業生に広がったという話も聞きました。地域の方々、今までその学校に携わってくださった教職員、そして卒業生。皆さんがいつまでも学校を応援してくださってホームページを見てくださいます。それだけに、学校はより多くの応援者を意識した発信をする必要があります。同時に全世界に発信されているのですから、守るべきものも多々あります。このことからも、「C4th Home&School」で学校と保護者、児童生徒ががっちりつながり、同時にちょっと広い視野に立った発信を、ホームページ機能で行う、2重構造で行くという方策ができるといいなあ。 双方向できるといいなあ 学校ホームページや緊急メール配信を使っての学校としての発信は、多くの学校で行われています。しかし、ふと不安になることはありませんか?一方的な発信ばかりでよいのだろうかと。この事態になって児童生徒にも会えない今、求められるのはやはり双方向のつながりです。ある学校でこんなことがありました。生徒会執行部が学校ホームページを使って、全校生徒にある呼びかけをしたいとお願いしたそうです。その呼びかけとは、「こんな時だけど一日ひとつ、誰かを幸せにしよう、幸せをもらおう」というプロジェクトです。学校では会えないけれど、生徒会が大切にしてきた互いの良さやがんばりを認め合う活動を続けたいからと、それを学校代表メールに報告してもらって、ホームページで紹介することにもしました。呼びかけの翌日、早速生徒からメールが届きました。予想外に、保護者からもメールが届きました。そこには、「暗いニュースばかりが続く毎日、先生や生徒会の皆さんの取り組みを知り、涙が出ました。」「書きたいことはたくさんあります。でもまずはありがとうと伝えたいです。」と書いてありました。生徒も先生も心がほっこりして、つながりのリングができました。生徒会はさらに、学習する意欲づくりにつながる働きかけを生徒同士でできるチャットのようなものが学校ホームページにもあったらなと願っているそうです。 どんな事態になっても、いやこんな事態だからこそ、みんなが前を向けるのは、互いの「声」が交わせるからです。児童生徒・保護者・地域と学校が双方向コミュニケーションできるといいなあ。 開催できるといいなあ 昨今、多くの地域で「コミュニティスクール」が導入され、「学校運営協議会」が立ち上がっています。導入はまだでも、「学校評議員会」制度を取り入れている学校もあるのではないでしょうか。通常4月5月に、第一回目の会が実施されます。さて、今年はどうなのでしょうか?「三密」を避ける意味で見送られるかもしれません。個人的には、この事態だからこそ学校運営協議会が開催されることを望みます。そこで今、学校で起きていること、困っていることや望んでいることなどを伝え、保護者代表から家庭での様子や要望を聞き、それをもとに今できることを熟議することも可能です。児童生徒が外に出なくなって、地域の方にも子どもたちの様子が見えにくくなっていることでしょう。学校の中で何が起きているかが見えなければ、社会に開かれた教育の実現は難しく、一昔前の学校に逆戻りです。今こそ、学校運営協議会を開催して地域・家庭・学校が一体となるときではないでしょうか。そこで、できるといいなあの3つ目は、三密を避けるためのオンライン会議です。政府の示した「新しい生活様式」にも、オンライン会議の推奨が盛り込まれました。今すぐのオンライン授業はハードルが高くても、校内にそれができる環境が一つでもあれば、まずは大人がそれを体感することから始められます。メリットデメリットも体感して初めて得られるのですから。この事態が収束したあとも活用できれば、来校して参加する委員と家庭から参加する委員があって、出席者も増え、より多方面から熟議できます。開催できるといいなあ。 この事態における教員養成四方山話 (愛知教育大学教職大学院 野木森)
教職大学院生にとって、修了報告書の作成につながる教育実習は、最も大切な学修です。ところが、この事態で実習計画を何度も作り直す事態となっています。
まず、「協調学習」を実践しようとしていた学生は、現場から「授業で話し合いをするのはダメ」と言われ、やむなくテーマを「振り返り学習」に切り替えて理論を書き直しています。また、体育の学生は、「マット運動」で一単元分の指導案をほぼ完成させたところで、「カリキュラムを組み直したので、ハードル走になった」と言われ、新たに指導案を作り始めました。 現職の院生は、現任校で若手を指導する「メンター実習」で苦慮しています。計画では、若手教員に授業カンファレンス等を行い、指導助言をした上で効果的な指導のあり方について省察するという内容です。ある院生は、メールで「メンター実習を、昨年度の未履修分野の内容が終了し、且つ分散登校の対応が終了する6月1日から開始します。実習時間が35時間以上とあるので、およそ6月1日から2,3週間でしょうか。今後、休校期間や分散登校の期間が延びた場合、実習の開始日がずれ込むことが予想されます。いつ実施できるか分かりません。」と相談してきました。授業日に行うという、平時の実習モデルにこだわっています。今は緊急時です。発想を転換する必要があります。私が返したメールの概要は、以下の通りです。 ―以下、メール文― コロナの影響で、授業再開が見通せない中、苦慮していらっしゃることと思います。そこで、提案ですが、思い切ってこの機会を利用してはどうしょうか。つまり、教材研究は、子どものいない今こそチャンスです。教材づくりや単元計画、及びその助言は、子どもがいない今でもできます。むしろ、休校中に子どもに出すべき適切な課題の検討や、遠隔授業のやり方を共に研究するなど、この事態に適した内容を取り入れてもいいかもしれません。授業カンファレンスも、模擬授業を通せばできます。複数の先生方に生徒役になっていただくなど、ご協力いただけばいいのです。授業日に2〜3週間などと固定的に考える必要はありません。授業再開を待たず、できる時に随時行いましょう。いやむしろ、既に行っているのではありませんか。教科に関して相談されることがあれば、それは既に若手育成の実習です。 それらの日時や指導内容を随時記録して35時間に達すればいいのです。そして、それらを最後に振り返って、自分の若手育成にどんな効果があったか、どんな課題が残ったかを自己省察して報告書にまとめれば、実習は成立します。この機会に、当該若手教員への指導の機会を積極的に仕組んでください。今後、事態の悪化は、いくらでも起こり得ます。手をこまねいていては、時間が過ぎるばかりです。これを機会に、自らの実習をセルフコーディネートしてみてください。今できることに取り組みましょう。 ―メール文、以上― いかがでしょうか。折しも、学習指導要領が示す「予測困難な時代」が、こんな形で急来してしまいました。今必要なのは、「変化に受け身で対応するのではなく主体的に向き合い、自らの人生を切り拓く力」(どこかで聞いたような言葉ですが・笑)です。教員こそが柔軟に対応したいものです。 できない理由を探すことより、できることから始めましょう(大西)
今回の緊急事態宣言で、学校と子どもたちのつながりこれまでなかったほど分断されてしまいました。子どもたちや保護者との直接のコミュニケーション手段が制限されてしまった今、子どもたちの状況を何とかして知りたいと先生方は思っていることでしょう。学校休校でも先生方はこの状況に対応するため忙しく働き、頭を悩ませていることと思います。
学校がこのような事態に対応するために持っているリソース(資源)は限られています。そのリソースをどのように使うかが状況改善の鍵となります。 学校では平等であることを非常に重んじます。今では普通になった保護者への一斉メール配信も、「携帯を持っていない保護者がいるから全員には知らせられない」といった理由ですぐに実現しなかったことを思い出します。この他にも、「緊急なのにすぐに見ない人はどうする」「個人情報の問題でメールアドレスを教えてもらうことはまずい」といったことも実現を妨げる理由となりました。 ここで考えてほしいことは、2つあります。一つは、全員同じでなくてもそのことで大多数に大きなメリットがあれば、やるべきだということです。だからといって少数を切り捨てろということではありません。少数への対応をていねいにすればいいだけなのです。携帯を持っていない、登録を拒否する方への代替手段を講じればよいのです。 もう一つは、できない理由ではなく、そのできない理由をクリアすることを考えることです。ネガティブを見て止まってしまうのではなく、ネガティブを克服すれば前へ進めると考えるのです。メール配信をすぐに見てくれないことへは、「事前にこのような事態になったときは、メール配信で連絡します」とくり返し周知することや、ホームページや電話連絡などの代替手段を考えることです。私が開発のお手伝いをしたシステムでは、メールを読んだことを知らせてもらう機能をつけ、読んでない方には別の方法で知らせるようにしました。また、個人情報であるメールアドレスを登録するのに、学校からは登録サイトを保護者に知らせるだけにして個人情報を直接管理しないようになっています。要はできるようにするために工夫をすることなのです。 子どもたちの様子を知りたいという先生から、オンラインの会議システムを使いたいという要望をよく聞きますが、それに対して、全員を対象とできないからとそこで検討を止める学校と実現する方向で知恵を絞る学校とに分かれています。地域によって学校や保護者の状況は違いますから一概には言えませんが、オンライン会議に参加できる環境があるかを調査し、条件を満たす子どもが一定数いるので、できない子どもには学校の機器を貸与して実現している学校もあります。一方、全員と連絡できない、用紙を回収して集計が大変・・・といったことで、環境の調査すらしていない学校もあります。 子どもの課題を先生が一生懸命印刷して、子どもたちに時差出校させている学校もあります。ホームページを通じて各家庭でダウンロードしてもらい、その環境がない子どもにだけ紙で配布している学校もあります。全員同じにこだわらず、学校にある限られたリソースの一つであるホームページを有効活用しようとする姿勢があるかどうかの違いで状況は大きく変わるのです。 そしてもう一つ、こういった柔軟な対応を妨げるのは学校や先生の横並び意識です。ある学校が先陣を切って新しい対応をすると「あの学校がやっているのに何でやらないのか」といった苦情が保護者からくるので、全員で足並みをそろえようと待ったがかかる。ある先生が子どもたちへのメッセージを動画でアップしたいと言ったら、「私はできないからやってもらっては困る」と止められたりすることもあります。今は非常時です。少しでも子どもたちプラスになることを素早く実行することが求められます。そうではなく、「私たちもやりたいから教えて、手伝って」と言ってほしいのです。 アンケートをつくってオンラインで集計することができるホームページシステムもあります。全員に電話で様子を聞くことは大変ですが、こういったアンケートを使うことで、手軽に子どもたちの様子を知ることができます。連絡のない子ども、アンケートの結果が気がかりな子どもに対象を絞ってていねいに対応することができます。学校と保護者の双方向の連絡ができるシステムを使えばより緊密なコミュニケーションをとることが可能です。こういったシステムがないからできないと諦めるのではなく、少しでもそこに近づけるよう工夫して動いてほしいのです。 企業も学校を助けるためにいろいろな支援を無料で行っています。無料だと言っても使うためには準備も手間もかかります。それを乗り越えようとするかどうかの姿勢が問われているのです。 今回の事態への対応が、これからの時代に対応できる学校かどうかの試金石となります。子どもたちのために学校や先生が何をやろうとしているかを地域や保護者もみています。できることから始めましょう。 この事態における学校と保護者と地域四方山話 実体験編 <栗木>
世界中で、人類の「生命」を守るための取り組みがなされています。医療現場でご自身や家族の危険を感じながら懸命な治療にあたってくださっている多くの人々、感謝の言葉も見つかりません。事の大小を問わず「生命」の安全確保に向けて自粛したり、知恵を出し合ったりしている今、「想定外」の出来事の連続に葛藤しながらも、今まで築いてきたものを根本から見直す、そんな機会が訪れています。とりわけ学校は、その「見直し」を最も余儀なくされています。しかし、現実は、休校に次ぐ休校で「見直し」どころか「やり直し」の連続。正直疲れてしまっている学校関係者も多いのではないでしょうか。その気持ちは痛いほど理解できます。
というのも、個人的な話になってしまいますが、この3月末まで現職として学校現場にいたからです。コラム一回目はその経験と感じたことを「生き証人」として記します。 昨年末頃から囁かれ始めたコロナ感染への心配。大変なことになりそうだと思いながらも、どこか他人事でした。目の前に迫った卒業式に向けて学校が一丸となって動いていた時期でしたから。2月末、状況は一転しました。教頭という立場上、様々な決断や先を見越しての準備はもちろん、地域や保護者への説明や対応にも追われました。一つ計画して対応しても次の日には違う事態になってやり直し。次の日ならまだしも朝と夕方では対応を変えないといけないこともありました。緊急メール配信には大変お世話になりました。お詫びの連続でしたけれども。 中でもつらかった対応は、「卒業式への来賓、在校生参加不可」の時です。勤務校は小規模校で地域密着型の中学校でした。保護者も地域関係者も「おらが町の子どもたち」として見守ってくださり、80%近い生徒が地域行事にボランティア参加する学校です。ある区長さんは「あの子たちを祝ってやれんのか」と残念がってくださいました。今でもその時の声が頭の隅に残っています。職業人体験でお世話になった地域の花屋さんが、「人が少なくて会場も寂しいでしょう、これを飾ってください。」と大きな大きな胡蝶蘭を貸してくださいました。生徒がボランティアで訪れていた児童館の職員さんが、「会場に入れないのならせめて」と手作りの横断幕をもって沿道から見送ってくださいました。つらいのは学校だけではなく、地域の皆さんも一緒でした。それでも学校に力を貸してくださることにただただ感謝でした。地域とともにある学校づくりをすすめてきてよかったと思いました。 卒業式で、地域の方々の思いを卒業生に伝えました。「皆さんを直接お祝いできなかったことをとても残念がっていらっしゃいました。皆さんは、地域の一員として今まで育ててもらいました。そして、これからもその一員であることに変わりはありません。地域を守り、地域を育てていける人としてこれからも温かい気持ちを大切にしていきましょう。」と。卒業生は頷いて聞いてくれました。学校のホームページ作成機能を使って、卒業証書授与の様子を掲載しました。ホームページをご覧になれないご高齢の方もいらっしゃるので、その写真と文章を通信にして回覧して頂きました。今思えば、出席いただけなくてもメールで餞の言葉を頂戴したり、あるいは通信をお礼の手紙に添えてお渡ししたりすればよかったと後悔しています。が、バタバタしているうちに退職してしまいました。 今回のことで、もしかして「来賓参加を見直せた」という方もいるかもしれません。でも、学校というのはやはり学校だけで完結するものではないし、教職員や児童生徒だけの場ではありません。いずれは地域に帰っていく児童生徒を預かって育てるのが学校です。新学習指導要領で求められている「社会に開かれた教育」の必要性を実感しました。また、今までやってきたことの本質が想定外の事態の時に表れるとも思いました。 「見直す」のは時短のためではありません。「不易流行」、芭蕉の精神です。 この事態における教員ICT研修四方山話Part2<和敏>
5月1日に、文部科学省から「分散登校を行う際には、進路の指導の配慮が必要な小学校第6学年・中学校第3学年等の最終学年の児童生徒が優先的に学習活動を開始できるよう配慮すること。併せて、最終学年以外の指導においては、教師による対面での学習支援が特に求められる小学校第1学年の児童にも配慮すること。」という通知文が出されました。他の学年の学力保障はどうなるのか?という問題は、今は取り扱わないことにします。
しかし、児童生徒がどのような形であれ登校すれば、「3密」対策は必須でしょう。各学校は、どのように対応するのか、今から考えておかなければ間に合わないと思います。 いずれにしても40人近くの児童生徒が一つの教室で授業を行うことは難しいと思われます。分散登校というが、そんなに簡単なことではないように思います。1クラスを2つに分けて・・・ということも言われていますが、人材の確保等非常に難しい問題があります。 期待に胸膨らませ、登校してきた子どもたちの思いに応えられるよう、まだまだ学校は工夫の日々を続けていく必要があると思います。 ICTを積極的に活用して、こんな取組・研修を行っているという、四方山話を書いてみたいと思います。 =子どもたちを迎え入れる前に= ★校内LANの活用 登校可能になっても、今まで通りの学校生活は難しいと思われます。皆さんは、どんな学校生活を想像しているのでしょうか。キーになるのは「3密」でしょう。「3密」を回避しながらの授業は、遠隔授業に近いものではないでしょうか。そう考えると、ICTの活用も必要になってくると思います。登校できない今、様々な取組を行っている学校や自治体があります。登校可能になったときには、これらのノウハウが必ず役立つことでしょう。 登校できないときは、インターネット経由ということで、いろいろ制限があったことと思いますが、登校してくれば、校内LAN(WiFi)で実施でき、少しは自由度が増すのではないでしょうか。端末もある程度は整備されていると思います。やれなかったことが、やれるようになるかもしれません。(文部科学省2019年3月 教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数5.6人/台 校内LAN整備率90.2% 無線LAN整備率34.5%) ある学校では、1クラスを2つに分け、同時に授業を進めていく方法を模索していると聞きました。ICTを使うとすれば、テレビ会議システムを活用したり、カメラとプロジェクタをつないだりして、子どもたちが互いの教室の様子を観ることができる環境を作り、授業を進めていくことを考えているようです。(空き教室があれば)また、集会等も諦めるのではなく、学校にある設備等でやれる方法はないか、真剣に考えておられます。 先生方みんなで考え、取り組んでいけば、必ず可能性が見えてくると思います。今は、そんなことを考え、準備する時間も確保していくことが重要かもしれません。 ★主体的・対話的で深い学び 文部科学省の通知には、「身体的距離を確保した座席配置」として、「児童生徒の席の間に可能な限り距離を確保し(おおむね1〜2メートル)、対面とならないような形で教育活動を行うことが望ましい。」と書いてあります。 一方、学習指導要領には、「主体的・対話的で深い学び」とあります。 感染症対策として「3密」は避けなければならいですが、授業を行うものとしては、グループでの対話は、実施していきたいと願っているのではないでしょうか。こんな時も、ICTを活用したグループ活動はできないかと、話し合うことが大切だと思います。テレビ会議システムが校内でも活用できれば、グループでの対話は簡単にできます。また、イヤホンマイクを使って、グループの話し合いを行うことも考えられるでしょう。授業を進めることばかり考え、以前のような一斉型詰め込み授業に戻ってしまうことは避けなければならないと思います。テレビ会議システムを使ってのグループセッションも、家庭から行っていたときより、他のグループの様子が観られることによって、効果が大きくなると期待できます。 学校現場は、子どもたちが登校し始めてからの学校生活をシミュレーションしていくことが大切になっています。そんな中、「3密」を避けることを考えると、やはりICTを活用することになると思います。そして、ここでの活用が、1人1台のPC時代を築く土台となっていくのではないでしょうか。 また、子どもたちとどんな学校生活・授業を行っていくか話し合い・研修を重ねていくことで、きっと素晴らしいアイデアが生まれ、これまでと違う学校生活・授業が創り上げられていくのではないでしょうか。 担任になったつもりで「心の天気」を説明(玉置)その中で、ゼミ生の金子さんが、もしこの事態(長期休校)で学級担任だったら、「子どもたちにこう呼びかけて「心の天気」を使って子どもたちと結びつきたい」という思いを動画で表してくれました。 以下のところをクリックしていただくと、2分間の「心の天気説明動画」をご覧いただけます。ぜひご覧ください。(玉置) https://drive.google.com/file/d/1o2ob-QtHeyzwku... |
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