活用事例

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スクールライフノート活用事例


各地で広がる「心の天気」―1000校、1日10万人が活用(日本教育新聞 提言2022年4月4日)

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各地で広がる「心の天気」―1000校、1日10万人が活用 管理職・教員は子どもの「今」を見つめて 玉置 崇 岐阜聖徳学園大学教授

 「心の天気」をご存じだろうか。1人1台端末を利用して、子どもと教師のつながりを生み出すシステムだ。導入校はサービス開始から2年で千校を超え、1日当たり10万人ほどの子どもが活用している。
 子どもは、登校後、情報端末の「心の天気」を立ち上げて、「はれ・くもり・あめ・かみなり」のいずれかの天気を選択して、そのときの心境を担任に知らせる。伝えたいことがある子どもは、書き込みもできる。下校時も同様だ。
 これだけのことだが、実践校からは、「心の天気」によって、これまでにない子どもと教師の関わりが生まれているとの報告が多く届いている。
 例えば、いつも「はれ」の子どもが、「あめ」や「かみなり」だったときは、一言、声を掛けるようにしているとのこと。「お母さんに怒られたから、あめ」などと言いながら、子どもはほほ笑むというのだ。子どもは、教師が自分の気持ちを知ってくれたことがうれしいのだ。
 小学校教師から聞いた話だ。教師机に集まってくる子どもの「心の天気」は気にならない。自分のそばに来ない子どもの「心の天気」が気になるという。そのような子どもとの会話のきっかけに「心の天気」が活用できるそうだ。また、「あめ」を示して「先生、Aさんはいつも一人ぼっちだと知っていますか?」と、級友の状況を書き込んだ子どもがいるそうだ。
 中学校では、指導に困難をやや感じる子どもが、「俺は、今日はかみなりだ」と口に出して端末入力をしたそうだ。すると、周りの子どもから「どうしたの?」と声が掛かった。本人はこうした声掛けをきっと期待していたに違いない。職員室に戻った担任は、学年の教師たちに「今日のBは、かみなりだから頼むね」と伝えたそうだ。どの教師も教室に入るたびに、Bに「かみなりだって。どうしたの?」などと声を掛けた。Bは下校時には「はれ」を押して帰ったという。「これまでは、このような子どもとのつながりはなかった。こんな単純なシステムが、ここまで教育的効果があるとは思いもしなかった」という声がある。
 管理職からも声が届いている。「心の天気」は、教職員なら誰もが見ることができるので、全校の「心の天気」を見ることを日課としている校長がいる。
 「かみなり」が続いた子どもがいる担任には、子どもの状況を把握しているか、確認するそうだ。既に声掛けをしたり、学年団で関わったりしているときには、感謝の言葉を掛ける。子どもの「今」を知ろうとする教師集団であることが分かり、校長として安心できるとのことだった。教師と管理職とのつながりを生み出すことにもきっと役立つことだろう。
 私は実は、このシステムのアイデアを提案するなど開発に携わってきた(開発元は校務支援システムのサービスなどで知られるEDUCOM)。教育者として全国の子どもや学校現場に役立っていると聞くと、心からうれしく思う。働き方改革の時代に、教師に負担を生まないことも長所だと感じている。
 子どもたちは新年度、期待と不安を胸に登校する。教師による見取りに加え、子ども発信の「今」の気持ちも見つめるようにしたい。

端末で児童の「心の天気」表す 民間ツール活用(日本教育新聞2021年7月19日 8面記事)

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 学校現場への校務支援システムの提供で知られるEDUCOM(愛知・春日井市)は6月20日、1人1台端末の活用に関するフォーラムをオンラインで開催した。1人1台端末を使った実践については、大阪市立滝川小学校の原宏次校長が同社の「心の天気」や「学びの天気」を使った取り組みなどを発表した。支援システムによる変化について3人の校長が討論するプログラムなどもあった。
 「心の天気」は、登下校時にその時の気分を、晴、曇、雨、雷から選択するもの。「学びの天気」は、授業のまとめや振り返りを記録する「学習ノート」上で、学習の理解度などを天気で表すことができる。
 原校長は、端末の配備について、学校目標の「児童一人一人が大切にされる学校づくり」を実現するチャンスと捉えたという。ツールとしては、学校生活での出来事を端末に記録できる「スクールライフノート」を活用、「心の天気」「学びの天気」は、この機能の一つだ。
 同機能の長所は、子どもが自分の気持ちを簡単に示すことができ、教職員もその変化に気付くことができる点。雨や雷を選択した子どもがいれば、すぐに「どうしたの?」と声を掛けることができる。
 同校では、児童たちの記録を、

 ・ライフログ(生活面)
 ・スタディログ(学習面)
 ・アシストログ(指導面)

 ―の三つに整理し、教職員で共有している。
 児童の情報を簡単に確認できることから、他学年や他の学級の様子をつかめるようになった。担任が一人で問題を抱えるような場面が減り、教職員全体で児童の課題にアプローチしやすくなったという。
 原校長は「教員がクラスの壁を越え、児童の現状を把握できるようになったおかげで、教員同士による子どもに関わる話題が増えた」と雰囲気の変化を語った。
 この日の「EDUCOM元気な学校づくりフォーラム2021」では、玉置崇・岐阜聖徳学園大学教授が総合司会を務め、EDUCOMの柳瀬貴夫代表取締役CEOや授業と学び研究所職員などが登壇した。

個別最適化学習アプリ導入に際して考えるべきこと(玉置)

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 GIGAスクール構想に伴い、個別最適化学習が話題になっています。

 個別最適化学習アプリを導入する際に考えておくべき事をまとめました。ぜひご覧ください。ここをクリックすると見ることができます。

大阪市教育委員会次世代学校支援事業の成果(玉置)

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 大阪市教育委員会が、3年間にわたって実証研究してきた「次世代学校支援事業」の成果をまとめた冊子が、文部科学省サイトから読めるようになりました。いずれもEDUCOM製品がフル活用されています。

 詳しくは冊子をお読みいただければと思いますが、事業の「目的」をここに掲載しておきます。

 学校の有益なデータ ( エビデンス ) の見える化により、教育の質の向上へ

 事業では、「校務支援システム」と「学習系システム」を安全かつ有効的に連携させ、これらのシステムを日常的に使うことによっておのずと蓄積される校務や学習にかかるデータを集約し、学校の状況や児童生徒の学びを一元化し、可視化する新システム「ダッシュボード」を導入しました。児童生徒自らの学習の振り返りや、教員の指導力の向上、学級・学校運営の改善や教育の質の向上を図る手段として、その活用方法やシステム要件(情報セキュリティ対策を含む)について検証するための実証研究を実施しました。

 「ダッシュボード」の活用により、児童生徒、教員、管理職のそれぞれにとって有益なデータ(エビデンス)の見える化を実現し、学級・学校運営の深化充実を目指すとともに、学校に新しい価値を提供し、教員や管理職の利便性を高めることを目的としています。

詳細は、ぜひ冊子をご覧ください。

【大阪市教育委員会】次世代学校支援事業ガイドブック(第1章〜第3章) (PDF:7.0MB) PDF

【大阪市教育委員会】次世代学校支援事業ガイドブック(第4章〜第5章) (PDF:3.4MB) PDF

ゼミ生スクールライフノートの活用について話し合う・その1(玉置)

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 玉置ゼミでは、今後、スクールライフノートの活用実践を始めます。そのために、以下のように、5期生で活用について話し合いを始めました。その記録です。

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 こんにちは!五期生の北神です。今回は、5月27日のゼミでの学びについて書きます。今回のゼミでは、「スクールライフノート」をどのように活用していくかについて話し合いました。

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 「スクールライフノート」では、「心の天気」を朝と帰りに押すことができます。まず、私達玉置ゼミ五期生は、今まで通り一日一回押すことにするのか、それとも一日二回押すことにするのかを話し合いました。

・嫌なことがあった日も最後が良ければ晴れでいいと考えており、一日の一番最後に天気をつけるようにしてきた。だから一回で良い。
・朝に雨を押したとしても、その後に良いことがあり、気分が変わったと感じた時には天気を変えてきた。二回の方が後から見てもその変化が分かりやすい。
・二回にすると、やらなければならないという思いが強くなり、本来の趣旨とズレてしまうのではないか。天気が変わったと感じた人だけが変えれば良い。
・心の天気は気軽に押すことができる所が良い所。時間は決めずに、変わったと思う時に押せば良いのではないか。

 上記のように、今までの「心の天気」の体験をもとにした意見がたくさん出てきました。自分にはない視点がたくさんあり、なるほどなと思う意見ばかりでした。最終的に、全員が一日一回は押し、天気が変わった人は二回押すことになりました。

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 また、「スクールライフノート」には「学びの天気」という機能も加わりました。時間割に合わせて、授業ごとに天気を押すことができます。私達玉置ゼミ五期生はゼミ後に行うことを決めました。そして、「心の天気」は非公開(教師のみ見ることができる)になっていることを踏まえ、「学びの天気」はどうするのかについて話し合いました。

・非公開の方が、素直な気持ちを表すことができるのではないか。「全然分からなかった」ということを全員に公開することには勇気がいる。
・まずは非公開にし、教師が他の子にも見せて良いと判断した場合に公開にする。
・子どもが公開か非公開を選択する。先生だけに伝えたい内容の時には非公開にしたい。

 私達のグループではこのような意見が出ましたが、こちらは全体の最終的な結論をまだ出していません。この時には、公開に対して肯定的な意見はあまりありませんでしたが、栗木先生のお話をお聞きした上で「学び合い」の視点から考えると、公開した方が子ども達同士で支え合うことができるのではないかと思い始めました。他のゼミ生の意見を聞いて更に学びを深めたいと思います。(北神)

玉置ゼミ生「心の天気」1ヶ月半の感想

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 玉置ゼミでは、EDUCOMとの共同研究をしています。その一つが「心の天気」の実践です。

 以下の資料は、2月中旬から3月まで、自分自身で「心の天気」を入力しつづけての感想です。お読みいただくと、学級経営に確かに生かせるものだと確信していただけると思います。

 <資料> 「心の天気」に取り組んだ1ヶ月半の感想

 長文ですが、ぜひお読みください。ぜひとも我が学校で、学級で活用したいと思っていただけると思います。(玉置)。

「心の天気」で心の変化を「見える化」(玉置)

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 小学館月刊誌「総合教育技術2020年6月号」では、「個別最適化」で子どもを伸ばす!という特集が組まれました。

 その中で、「『心の天気』で心の変化を『見える化』し、サインを見逃さず個に応じた生徒指導を」と題した私へのインタビュー記事が掲載されました。

 以下にそのごく一部を掲載します。全文はここをクリックしていただくと読んでいただけます。ぜひご一読ください。

声がけのきっかけになる

 個別最適化学習を進めるには、まずは個を知らなくては始まらないと思うのです。いくら個別最適化で子どもの習熟度に合わせた問題に取り組ませても、その子の気持ちが学習に向いていなければ、効果は期待できないでしょう。やはり、一人一人の心の状態を捉え、必要に応じて心理的な支援や生徒指導をしながら、学習の助言をしていく必要があります。

 そんなときに役立つのが「心の天気」システムです。操作はとても簡単で、子どもたちはタブレットで、「晴れ」「曇り」「雨」「雷」の4つの天気の中から、そのときの気持ちに最も近いマークを選んでタッチする、たったこれだけです。非常にシンプルですが、これにより子どもたち一人一人の気持ちが「見える化」され、毎日続けることで教員は子どもの心の変化を見取ることができます。子どもからのサインに気づきやすくなり、声掛けのきっかけになるのです。つまり、「心の天気」システムはICTを使った子どもとのコミュニケーション・ツールのひとつだと考えていただくといいと思います。

 「心の天気」は株式会社EDUCOM(エデュコム)が開発したシステムですが、実は私が出したアイディアが基になっています。(以下は、ここをクリックしてお読みください)

この事態における学び合い 先生の挑戦と生徒の思い その後<栗木>

以前、一公立中学校の社会科の挑戦を紹介しました。この先生の挑戦が、全教員に広がり、学校を元気にしたということも。その学校の「今」を教えてもらいました。

1 先生達の学び合いが始まった
5月11日に課題を生徒に配布し、休校中でも新学年の学習が始まりました。プリントを配って宿題にするだけではなく、ほぼすべての教科、すべての先生が動画を作って生徒に語りかけたり、生徒から送られてきたメールをつないでまた生徒に投げかけたりしています。返ってくるメールも日々増加し、今では全校生徒約4分の1数が毎日送られてくるようになりました。もちろんメールには「ありがとう」の一言を添えて各先生が返事を書いています。また、全職員がそれを読むこともできます。職員室のあちらこちらから「この考えいいね。」「〇〇君頑張っているね。」という言葉が聞こえます。最初は動画作りに躊躇していた先生達も挑戦するようになってきました。PowerPointに音声を入れて作る先生、生の声で臨場感たっぷりに語る先生、自宅にあるソフトを用いて工夫している先生・・とその方法も様々です。先生方の隠れた特技や個性が発揮されました。お互いに見合って、「これ、どうやって作ったの?やってみるから教えて。」「こういうのもいいね。」という先生方の「学び合い」が始まりました。

2 生徒の学び方が成長した
 動画とメールでの学び合いを継続する中で、気づいたことがあります。段々と生徒の学び方が成長しているのです。メールで「○○がわからない」だけではなく、「僕は〇〇と考えたけれど、その考え方であっていますか?」と質問してくる生徒が増えました。また、仲間の疑問に応えるメールでは、「僕もこれが気になって調べてみたら△△とあって、そこから××と考えました。」とありました。家には手元にICTがあります。それを用いて調べた上で考えを伝えてくるのです。まるで、これからの学びを象徴しているかのようです。

3 今後に活きる
学校が始まっても、またいつ休校になるかわかりません。その時にこの動画が役立ちます。音楽の先生は、自分でリコーダーを吹いている様子を撮影し、楽譜と合体させて運指が見やすい動画を作成しました。体育の先生は、学校独自のストレッチ体操を実演し、ポイントを紹介して動画にしました。それらは今後一人一台PC時代になったとき、配信して家庭でも学校でも練習を促すことができます。いつも会っている先生が実演しているところがいいのです。自分でやってみるとうまくできないことを先生はやれてしまう、そこが「すごいな」って思ってもらえます。逆にいつもはキリッとしている先生が動画の中で「あ、まちがえた。」とかつぶやいているのを見れば、親近感が湧きます。そういう人間性が垣間見えることも今後に必ず活きます。

5月15日、文部科学省は、「新型コロナウィルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における『学びの保障』の方向性等について」を通知しました。そこには、「新型コロナウィルス感染症とともに生きていかなければならないという認識に立ちつつ、子どもたちの健やかな学びを保障することとの両立を図っていくことが重要です。」とあります。学校が再開されても、今までと同じような教育活動をするわけではありません。先生も生徒も試行錯誤でしょう。でも、この学校のように手探りしながら前に進めば、必ず得るものや生まれてくるものがあります。その学校独自の「新しい学び」を創っていくのです。なんだかワクワクしませんか?先生と生徒の新たな挑戦と工夫の時がもうすぐやってきます。

この事態における学び合い オンライン模擬授業その4 <栗木>

オンライン模擬授業の最後です。授業後にフェローによる「授業深堀」をしていただきました。

テーマ1 オンラインで学び合いはできるか?
・オンラインだからというのではなく、人が人と繋げる繋がる環境が必要だ。生徒は人の意見を聞いて変化している。それは表情や発言からわかる。教師は無意識のうちに学びが起きる計算をしている。
・つなぐことで新しい学びができてくる。一方でわからないっていう言葉が出てこなかった。これがオンラインの苦しみ。
・発問で学びが引き出せる。聞いてもらえた?言えた?聞けた?聞くと話すの双方向指示が必要。話すではなく聞くを捕らえないとオンラインでは疲弊する。また、意図的使命に陥る危険性がある。

テーマ2 オンラインで学びを生みだす心得は?
・グループに入る時の投げかけ。聞けたか言えたか、二つの視点をなげかける。
・意図的使命ばかりではなく、子供同士の、この人の話が聞きたいという場を作る。
・質問や反対意見、もう少し聞きたいというのが出てくるような仕掛けをしていく。そしてそれが言えるような保障をしていく。
・表情を見ての指名は通常よりしにくい。つぶやきとか、「でもさあ」とか子供同士でやっていくのが通常。それが出来ない苦しさがある。
・分からなないや誰かが言ったことへのわからなさが出てこない。気持ちがわからないと学び合いにならない。
・どこから思ったの?と根拠で繋いでいた。それが大事。
・価値付けをする。オンラインであっても体全体で認める。
・反応やつぶやき、誰が言ったかがよく分からない。教室だとなんとなく感じられるちょっと待った機能とかあるといいかな?
・どうつなぐのか、つなぎ言葉が特にいる。言葉は武器になる。
・教師がつなぎ言葉で、つながったことへの価値づけをする。

授業者自身のふり返り
最後に、オンライン授業をするにあたってと望むことを記します。
一つ目は、教材の持つ力が大きいということです。教室でもオンラインでも基本的に授業作りは一緒です。学び合いの楽しさを知っている子どもたちは、自然につながって探究していきます。ただし、そこには子どもが知りたい考えたいという教材が必要です。そしてフェローの指摘のような工夫がいります。

二つ目は、教室でも同じことですが、よりいっそう言葉を選び正しく伝える必要性があると授業記録を見て感じました。教室なら何となく雰囲気で伝わります。それがないのですから、画面上の一人一人に語り掛けるように話すことが大切でしょう。

三つ目に、学び合いは形ではなく一人も落とさないという理念です。オンラインでは教師主導型に陥りやすいと感じます。加えて通常教室なら近くの仲間にわからないが言える子どもに育っていても、オンラインではできません。わからなさをどうにかして拾う手立てを考え、それをスタートにした学びを展開するという「ぶれない信念」をもちたいものです。「わからない、困った」を全体に広げ、考える視点を提示し、そして子どもに返す、その繰り返しでしょうか。幸いオンライン授業は毎時間記録できます。繰り返し見ることで授業の中での留意点が見つかるのではないでしょうか。ふり返りも大いに活用したいところです。今回、授業記録とふり返りを見て、何人かの生徒を置いてきてしまっていることに気づきます。ふり返りで曇りマークにした生徒のうち2人は授業で発言できていません。見落としです。目の前に生徒がいれば雰囲気や表情で感じることもできます。記録されたものを活用することで教師の「勘」を養いたいものです。

四つ目は、「学びの作法」です。模擬授業でも前日に「学び方」「聴き方」「ふり返り方」等を研修しました。生徒役は見事にそれを身に付けて参加しました。しかし、小中学生は一回でできるものではありません。まず、聴くことが難しいでしょう。通常の教室でも4月当初は「学びの種まき」から始めます。その一つとして、子どもたちが自分たちで大切にしたい作法オンラインバージョン(わからないことはわからないと言う・グループでは話していない子に声をかける・一人で考えたいときはちょっと待ってサインを出す等)を考えるとよいですね。

五つ目は一番大切、且つなくてはならないグループのことです。本来ならば安心を生むためにも教室の中では人と人との間隔をできるだけ狭くします。しかし、この事態はその逆です。よく行われる「コの字隊形」も大人数だと無理だし、少人数でもかなり広いコの字になります。全体で意見を交わし合うのは聞き取りにくくなります。そこで絶対に必要なのが、グループによる探究です。それなくして学びを起こすのは至難の業です。今回の模擬授業でも、グループ内で生じたことを多くの生徒が伝えていました。彼らはグループとグループをつないで、そこに化学反応が起きて学びが成立しました。近づくことなくグループという少人数探究の場をどのようにして生み出すのか。そこには、一人一台PCでのつながりが必要です。

学びはつながることで起こる、どんな形であれそれが一番だと感じました。

この事態における学び合い オンライン模擬授業その3 <栗木>

 その2では、授業後半の様子を授業記録で記しました。学びやその深まりは個人によって異なります。それを知る手立てがふり返りです。ふり返りを記録することで自分自身の変化、学びの足跡、他からの働きかけ等を再認識できます。また、それを読むことで、授業者は授業をふり返ったり、学びの成立や不成立等を確認できたりして
授業改善に生かせます。ふり返りの一部を紹介します。

<学びの天気 晴れの人のふり返り>
・eさんやfさんの話を聞いて、また別の命の見方もあると知った。命に関する考え方を自身でも捉えなおすことができた。
・eさんの”桜目線”じゃないかという話から、新たな歌の見方ができたように感じた。
・こんなにも様々な考えが生まれることは個人的には楽しかったし、意見交換をしていくことで考え方の幅を広げることが大切だと感じました。
・最終的に、桜が広く人間界を客観的にみているような場面が浮かびました。mさんの、「人間も肩の力抜いていけよ」みたいな考え方も素敵だと感じました。
・「桜目線ではないか」という意見が斬新で、目から鱗でした。歌を詠むときの頭に巡るイメージが、桜を見上げる視点から、人を見下ろす桜の視点に一気に変わって大変興味深かったです。
・aさんが「わが」は人ではなく桜の根本の生き物なのかもと考えたり、tさんの聞き手によって捉え方がかなり変わるのではという意見だったり、cさんの「死期が近い人が詠んだのかも」という考えに納得したり、他の人の意見を聞き、その意見に対する疑問を訊き、それを重ねたことで、はじめは自分では浮かばなかった映像という新しいものが生まれたことを実感し、とてもうれしく思った。
・自分には無かった見方がたくさん出てきて、それらを自分の中に落とし込むことが楽しかったです。
・はじめは作者の状況を想像することから句の意図を考えることを考えていたけれど、視点の転換の話があってから、話が広がりました。みんなの意見を聞いていくうちに自分の中で、解釈が固まっていった。
・あらかじめ「わからない」ことを聴くことを意識して取り組めたので、どうしてそういう考えが生まれたのかを聞いて話を広げることができた気がします。

<学びの天気 曇りの人のふり返り>
・もともと国語が苦手なので、話し合いでもほかの人の意見を聞いてなるほどと思ったり、発表で意外な見方が知れたりととても頭を使う授業でした。
・自分の脳みそのスカスカ感を感じ、地味にショックを受けている。
・この詩は何を伝えたかったのだろう、作者は何をイメージして作成したのだろうと考えるとモヤモヤが残る。

今回、ふり返りは「スクールライフノート」を使って記入しました。自分の学びを「晴れ」「曇り」「雨」「雷」で示すところから始まります。19名中5名が曇りで14名が晴れでした。スクールライフノートを用いれば互いのふり返りを読み合うこともできます。「〇〇さんの△△という考えで自分の考えが□□から××に変わった。」という記入が多く見られました。個人名が出てくるのは互いをリスペクトし合えているからであり、また、他の考えを謙虚に受け止めて自分の学びを深めているからでもあります。大人であっても認めてもらえたら嬉しいもの。子どもたちならその喜びは、自分への自信にもなるし、学びも楽しくなるでしょう。何よりもその教室での居場所が実感できます。そして、仲間の考えをもっともっと知りたくなって聴き上手、学び上手を育てます。また、この授業で何を考え、どう変化しどんなことが身についたのかを自分の言葉で蓄積していき、それを読み返すことで学びが定着します。通常の教室でもふり返りは欠かせませんが、今この事態だからこそ一層、オンライン上でのつながりを生む手だてになると思います。授業者の立場で見れば、ふり返りを授業改善に生かすこともできます。

その4に続きます。

この事態における学び合い オンライン模擬授業その2 <栗木>

模擬授業その1では、最初の課題(教材である短歌)提示と、音読、各自書き込み、1回目のグループで気づきや気になることの共有、その後全体で共有までを記しました。)授業記録の続きです。

T:みんなの話聞いてると、死期を悟っている意見もあったし、桜目線っていうのもあったんだけど、共通して「いのち」、ひらがなの「いのち」と漢字の「生命」ってあるんだけど、そこに心惹かれているのかなって感じたのね。
S:半分以上(頷き)
T:「いのち(生命)」っていうのを感じながら、もう1回この歌を味わってみるよ。今度はわかることよりも感じること、皆さんがこの歌を読んでどう感じるのか。命っていう言葉に注目しながら、もう1回この歌読んでみてください。
S:銘々読みと指名読み
T:どんなことを感じるか。グループで聞いてみて。自分の感覚を大切にね。
S:(2回目のグループ中)
T:どんなこと感じたか聴かせて。
i:考えれば考えるほどわからなくなってきていたんですけど、「いのちいっぱいに」っていうのが、「生命かけて」咲いてたんだよって、散っている様子を見て、あの時命いっぱいに咲いていたんだなーって思った。
k:「いのちいっぱいに」っていうのが、桜が満開に咲くっていうイメージが私にはあって、命ひとつひとつがいっぱいに咲いて、桜が人間界を見て、生命かけて見てるんだなあみたいな。
l:私は「命」っていうところに焦点を当てて考えた時に、生命かけてお花を咲かせているんだなと、ちょっと見方が変わったなーっていう風に感じました。
m:桜と「桜ばな」って見た時に、桜を思い浮かべた時に花を思い浮かべるのになんでわざわざ桜とはなを二つ重ねるんだろうなって思ったというのがまず先にあったんですけど、全体が桜なのに花だけを桜って言われるのをちょっと嫌だなーって思っているのかなと思いました。それから、この「いのちいっぱいに」っていうちょっと無邪気な感じと「生命をかけて」っていうちょっとシリアスな感じに疑問を持ったんですけど、nさんの「生命をかけてわが眺めたりは、なんか人間ってちょっとシリアスに考えすぎじゃない?みたいに(桜が)思ってるんじゃないのかな」っていう話を聞いて、そこから、なんかもうちょっと肩の力を抜いてもいいんだよって桜が教えてくれるのかなっていう気持ちになりました。
S:(反応)(参ったの顔)
n:最初のいのちはひらがなで、桜は普通にしてれば毎年繰り返して咲くけど二つ目の生命は人間だとしたら人間は1回きりになるので、なんかすごい重さを感じる。
T:可愛い、健気、こっちは重さを感じる。もっともっと聞きたいけど最後にもう1回自分でこの歌を自分の味わいで読んでみてください。
(授業記録はここまで)

・銘々短歌を読み味わう。そして、振り返りをする。
・ふり返りはスクールライフノートに書くよう指示。学びの天気をつけるのと自分の変化を記した。

 Iさんkさんは上の句の「いのちいっぱいに」でつながってともに、桜の満開な様子を想像し、それをlさんが下の句の「生命をかけて」につなげ、mさんnさんは二つの「いのち」「生命」を対比させました。もちろん本人たちがつなげて発言しようとしているか否かは不明です。その意識はないのかもしれません。でもこうしてみるとつながっているのです。大人の発言なので、実際は一人一人がかなり長く話しています。迷いながら話すので時間もかかります。生徒役は聴く力をかなりもっています。後半の発言で特徴的なのは、「〜だなあ」という表現が多いことです。情景を頭に浮かべ、感じているのではないでしょうか。

その3に続きます。

この事態における学び合い オンライン模擬授業その1 <栗木>

ZOOM機能を用いて、オンラインによる学び合い模擬授業の授業者役を体験させていただきました。ただし、生徒役は小中学生ではなく大人です。

ここのところ、オンライン飲み会なるものも流行し、テレビ番組でも普通にみかけるようになったオンライン会議。この1、2か月で急速に普及しました。学校が休校になり、一部地域の一部学校、あるいは学習塾等では「オンライン授業」が行われています。オンラインでどのような授業ができるのか、通常の教室で行われているような学び合いはできるのか、幾つかの課題に挑戦しました。
   
 ZOOMという機能の存在を知ったのは、授業日の約1週間前。生徒役の方々に出会った(あくまでも画面越しです)のも約5日前。ZOOMを使ったのは1日前。この短歌を用いた授業をするのは初めて。初めて尽くしの体験でした。どんな授業であったのかは、実際の授業記録を見ていただくことが一番です。一部省略しながら記します。

2020年4月8日 模擬授業 参加者19名(在宅) 授業者栗木
国語 短歌の模擬授業
「桜ばな いのちいっぱいに咲くからに 生命をかけてわが眺めたり」 岡本かの子
1 ホワイトボードに書いた歌を画面提示し、生徒にはノートに写す指示。写せたら各自で音読を繰り返す。続いて頭の中に映像を思い浮かべながら仲間の読みを聴く。ここまでは通常の授業通り。
2 「気になること気づくこと気に入ったこと」などをノートに書き込みを指示。当然だが手元が見えないので書けているかわからない。通常なら書けていない生徒や困っている生徒に声をかけるがそれができず顔の表情で判断するしかない。
3 ブレークアウトセッション(グループの人数指定やメンバー指定も可能)を用いてグループにする。気になったことがある人から声を出すように指示。グループの時に顔はとても自然。やはり少人数対話は必要。
4 全体で共有。考えが広がる。
(発言者 T:授業者 S:生徒役 小文字:個人名)
T:(全体に)戻ってきて。気になることを聞いてもらえた?自分から言えた?
S:(頷き)
T:気にあることのある人からどうぞ。
a:私たちのグループの中では、作者はもしかしたら死期を悟っているのではないかと。
S:(驚きの表情)
a:桜が一生懸命咲いているのを見て、自分も残された命を、命をかけて全うするっていう意見が出てきて。
T:その意見だしたbさんどこからそう思ったの?
b:命が二つ出ているので、二つの命を比較しているような感じかなと思ったんですけど、「生命をかけて」っていうところから死期を悟っているなって感じました。
T:(一番リアクションが大きかったc君指名)それ聞いてc君どう?
c:僕らの班ではそこまで深読みできなくって、なんで「いのち」ってひらがなと漢字(生命)で書いてあるんだろうっていうところから話していて、そこまで作者の状態とかなんでとか考えられなくって、本当にすごいなーって思いました
S(反応)
d:aさんは作者目線だって言っていたんですけど、私たちのグループでeさんは桜目線の話なんじゃないかとおっしゃっていて、すごくびっくりして。
S:すっげー。(誰が発生したかは不明)
T:ちょっと桜目線になってこの歌読んでみようか。
S:(銘々読み)
T:なんか生まれてきたことある?
f:桜の幹から桜を見ているというのにつながるのかなって。桜の幹が自分になっている花を見ている様子を歌っている。自分の前髪を見ているような感じ。
S:(みんなの顔が変わる。参ったという表情もあり)
T:誰かほーってなってるよね?それ聞いてどう?生まれてきたこと。
g:さっきのグループでhさんが言ってたんですけど、「いのちいっぱい」の方がちょっと軽めで、「生命をかけて」の方が結構一生懸命さがあって、その生命をかけてみている人間たちを、客観的に見ているみたいな、そんなイメージを感じました。

 一回目のグループの後の全体共有では、このような発言や反応が続きました。aさんはグループで聴いたbさんの考えを紹介し、それに触発されてcさんに感動が生まれ、一方でⅾさんがグループで聴いたeさんの違う新しい視点を皆に広げます。思いもよらなかった発想を謙虚に受け止めたfさんが自らの考えを深め、gさんは「見ている」という点で、前述のcさんの疑問点につなげます。それぞれの発言が羅列のようでいてつながっている、そんな様子です。

続きはその2で。

月刊誌PHPに「心の天気」掲載(玉置)

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 月刊誌「PHP 2020年6月号」の連載「学校の快談」で「心の天気で子どもたちの気持ちを知る」と題した拙稿を掲載されました。出版社に許可を得ましたので、以下にこの原稿を掲載します。

 ***「心の天気」で子どもたちの気持ちを知る***

 文部科学省は、現在、子どもたち一人一人にコンピュータを渡し、学校での学びをより豊かにする施策を進めようとしています。すでにこれが現実化されている学校があります。その学校での取組を紹介します。

 その学校では、私が発案した「心の天気」というシステムを使っていただいています。「心の天気」は、子どもが登校したときや一日を終えたときに、システムを立ち上げて、今の自分の気持ちを「晴・曇・雨・雷」のいずれかのマークで示すだけの単純なものです。学級担任は自分の学級の子どもの「心の天気」、学年主任は学年全体、校長は全校の子どもの「心の天気」を手元のコンピュータで見ることができるようになっています。

 たったこれだけのことなのですが、学校内に大きな変化が生まれてきています。子どもと先生の距離が、グッと縮まったのです。

 例えば、前日「晴」だった子どもが、突然「雷」になることがあります。担任は、その理由を聞きたくなります。「何かあったの?」とさり気なく聞いてみると、昨晩、家庭でスマホの使い方で厳しく怒られたとのこと。そして、こう言った子どもがいたそうです。「先生に言ったら、すっきりしたよ」と。ちょっとしたことですが、「心の天気」がコミュニケーションを生み出すきっかけになっているのです。

 実は、私のゼミ生も「心の天気」を毎日入力しています。この「心の天気」でゼミ生といつも結び付いているなという感覚を持つことができています。学級担任時代を思い出しています。   

 ある学生が「雷」マークだったので、聞いてみると、バイト先で重要な役目をもらったのに、うまく出来なかったことが「雷」の原因だったそうです。さっそくコメントを返して、その学生と会話を楽しみました。

 「心の天気」について、次のように書いたゼミ生がいます。
 「晴、晴、晴と連日、晴が続いていた私ですが、とうとう雷になりました。私は、雷はイライラしたときの気持ちやどうにも言葉にできない気持ちを表すものだと思っています。
 昨夜、雷になってしまいました。自分の情けなさや周りに対しての不満。自分で頑張っていると思っていた事を心ない言葉で否定されると、もう、何というか、言葉にできなくて。私の「心の天気」が雷になりました。
 このことで『心の天気』は、とても良い仕組みだと感じました。言葉にならない気持ちを吐き出すことができる小さな避難場所です。この避難場所があることがどれだけ救いになることか。言葉にできない黒く重い気持ちは、その人の心にずっと靄のように居続けます。その靄は自分一人の力では吐き出せません。そんな時にこの心の天気は大活躍すると感じています」
 
 今日もゼミ生たちの「心の天気」を気にしている私です。(玉置)

この事態における学び合い 先生の挑戦と生徒の思い <栗木>

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小学校では今年から、新学習指導要領に基づいた教育が完全実施です。というよりは、完全実施されるはずでしたという方が妥当でしょうか。今学期が始まっていない学校が多いのですから。

新学習指導要領には、「これからの社会が、どんなに変化して予測困難になっても、 自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい。」という願いが込められています。改訂の考え方として強く打ち出されてきたのが、「主体的・対話的で深い学び」を目指す授業改善です。教師の教えを一方的に受信する教育や知識・技能の習得を急ぐ教育ではなく、子どもが主体となってわからなさや困難さに自ら向き合い、仲間と協同しながら探究、思考、発見、創造していく「学び」にあふれた授業が大切です。ところが、今、その「学び」の場が奪われています。まさに、「予測困難」な事態が起こってしまったために・・。

世間では長期化する休校に、学習の遅れを危惧する声が高まり、各自治体や学校が工夫して、子どもたちの学力を保障しようとしています。ここでいう「学力」が、単に知識や技能の習得だけであってはならないと考えます。学力は「学び力」です。探究し、思考し、発見し、創造していく力がストップしてしまうことを恐れています。

ここに、離れていながらも僅かなつながりを活かして、「学び力」の継続に挑戦した一人の先生の工夫と生徒の思いを記します。
一公立中学校の社会科の先生です。二年生で歴史を担当していた昨年度末、全国一斉休校により単元の一部を積み残して終えることになってしまいました。四月になっても休校は続き、加えて、新年度は担当学年が変わることになりました。生徒たちは社会を、そして学びを楽しみ、なぜだろう、どうしてだろうと、同時代性に立って歴史を考えることを身に付けてきました。何とかして学び力を継続させたい、そう思った先生は、オンライン授業を考えました。オンラインといってもその学校にあるのは、学校ホームページと学校メール。一人一台のPCもありません。それでも、一方的な知識の伝達にならない方法はないか模索し、たどり着いたのが動画配信とメール送受信です。

教室で行われていた授業は、毎時間資料の提示から始まります。歴史ならば風刺画や当時を反映した絵画等が主です。生徒はそこから気づいたことや気になったこと、浮かんだ疑問を見つけ、仲間と対話しながら探究し、考えを繋ぎながら当時の人間の生き方や思想に迫っていくという授業でした。それと同じことを動画で行ったのです。一本目の動画は課題提示として資料を投げかけます。生徒には気づきをメールで送ってほしいと伝えました。始める前、返事は来ないと思っていたそうです。ところが、予想に反して初日から返事がきました。しかも複数。「上の絵は、何かが燃えていて、それを見て人々が喜んでいることに気が付いた。」「真ん中の絵は、武器を持って反乱している人々を政府の人達が止めている様子かなと考えた。また、上で燃えているのも反乱の一部なのかなと考えた。日露戦争に勝ったばかりなのにどうしてだろう。」これらを先生がつなげ二つ目の動画にして配信します。それを見た生徒がまた考えたり調べたりして考えを深めます。「僕は、この頃の国民は政府に『もっと戦争をしろ』というだろうと考えた。なぜなら日清戦争・日露戦争と二回続けて勝っていて、国民は苦しくても国自体は一度も攻撃されたことがないから、国民は負けることについてあまり考えないだろうし、日清戦争では賠償金がもらえ、いい思いをしただろうから、国民は『戦争をして勝てばいい思いできる』という考えになりそうだなと考えたからである。」というようなふり返りがメールで送られてきて、それをまた3本目の動画で紹介します。これを続けること約1か月。回を重ねていくうちに参加生徒も増え、最後の動画にはこんなメールが。「毎回メールすることは出来なかったけど、ただ教科書を見て暗記するだけでなく、ちゃんと考えて勉強できました。3年生なっても、話し合いと発言を大事にします!」
 
さらに予期せぬプレゼントが届きました。生徒の代表がラインで仲間の声を集め、先生にお礼のメッセージを送ってきてくれたのです。半数以上の生徒が参加していました。「人とかかわらないことがどれだけ人をだめにするか。かかわることの大切さを学べるのは学校がもつ意味の一つ。」先生の信念と愛情が生徒の心と学び力を動かしました。

この先生の挑戦は今、全教員に広がり、学校を元気にしました。顔は見られなくても心はつながります。つながることで学びは続きます。また、学びはその学級の先生と児童生徒のあうんの呼吸で育まれるもの。学級色豊かな学びが続いていくことを願います。

、「スクールライフノート」の機能を使えば、こういうつながりが生まれることも記しておきます。

「この事態における授業づくり授業技術四方山話」(和田) 振り返りで書く力をのばそう!

★ 図書館にある人気本「ズッコケ三人組」の作者は児童文学作家の那須正幹さんです。
那須さんは、「休校が続く今を“学びの機会”としてプラスに捉えよう」と次のようなメッセージを子どもたちにおくっています。
 ≪日記をつけて自分のことを振り返ろう≫
ぜひ、やってもらいたいことは、日記をつけることです。こういうときこそ、自分の身の回りで起こったことをなんでも記録しておくということがすごく大切じゃないかと思います。自分のことを振り返るというのは大人になっても大切なこと。
いずれ必ず役に立つときがきます。           
  ★ 心理カウンセラーや臨床心理士の方もいろいろな場で提唱されています。
  ≪褒め言葉で自己肯定感を高めよう≫
  ノートやスマホのメモ機能などを活用して「今日、よかったことを三つ書く」「ほめ日記で自分を褒める」などを実践すると自己決定感や自己有用感が高まります。
  ★ 新学習指導要領では、以下のように示されています。
新学習指導要領 総則編(第1章第4の2(4))より一部抜粋
≪各教科等の指導に当たっては、児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるように工夫すること≫
各教科等の指導に当たっては,児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるように工夫することが重要であることを記述したものである。具体的には,例えば,授業の冒頭に当該授業での学習の見通しを児童に理解させたり,授業の後に児童が当該授業で学習した内容を振り返る機会を設けたりといった取組の充実や児童が家庭において学習の見通しを立てて予習をしたり学習した内容を振り返って復習したりする習慣の確立などを図ることが重要である。これらの指導を通じ,児童の学習意欲が向上するとともに,児童が学習している事項について,事前に見通しを立てたり,事後に振り返ったりすることで学習内容の確実な定着が図られ,思考力・判断力・表現力等の育成にも資するものと考えられる。

ステイホームの間、「話す活動」はかなり制限されました。
逆に「書く活動」は個人差はあってもいつもより増えたのではないでしょうか。この状況を活用して学校再開時には、「振り返り」を習慣化し書く力を高めることにつなげていきたいものです。今まで実践していなかった先生もこれを機会にチャレンジしてみましょう。
≪振り返りのワンポイント≫
1 授業の終わりに振り返る時間を設定します。
2 毎日続けることで学びを振り返る習慣が身に付きます。
3 個に応じて書く量に差があります。
4 「よくわかった」ではなく、「・・・と言う考え方がよくわかった」と考えた内容や過程を書くようにします。
5 苦手な子は他者の振り返りを聞いて、自分に近い考えを選択することからスタートします。
6 振り返りの内容は次時の導入や課題設定に活用できます。

この事態における授業づくりと授業技術四方山話」(和田)子どもとの絆を深める学習規律 (小学校版)

三つの密(三密)についてのお話
(1)風通しのよくない「ムンムン」する建物やお部屋にいないようにする
(2)人が「ギュウギュウ」と、たくさんいる場所には行かない
(3)人とお話するときは、「ガヤガヤ」と近づいて話をしない
 これは、小学校1年生でもわかるように「三つの密」について知事がテレビで伝えた内容です。先生が朝の会で毎日お話をし、帰りの会ではそれが守れたかどうかを確認するそうです。高学年には優しすぎるという意見もありましたが、「ムンムン」「ギュウギュウ」「ガヤガヤ」という表現は子どもにはとても分かりやすく好評のようです。合言葉のように子どもの心に残るキーワードを取り入れたことがよかったのでしょう。
 つまり、三密を伝える側(教師)、受け取る側(子ども)の双方にとって簡単で覚えやすく合言葉のようになると周知徹底しやすくなるのです。まさに、学習規律の基本と言えるでしょう。
 今、学校が再開しても入学、進級したときと同じように学習規律を身に付けることからスタートしなくてはなりません。コロナの状況から三密に関することも含めて教師はたくさんの規律を子どもに徹底させなければいけない状況にいます。しかし、子どもは登校し、友達と再会できた喜びでいっぱいのはずです。禁止行動ばかりを話すスタートではなく、笑顔で学習規律が身に付くように工夫していきたいものです。その一例を書いてみます。
1 禁止行動より推進行動を示す
  「廊下を走らない」ではなく「静かに歩こう」
  「大きな声を出さない」ではなく「〜ぐらいの声で話そう」
  「〜してはいけません」と禁止するときは、どうしてもきつい口調になり注意している雰囲気になります。「〜しよう」と望ましい行動を促すときは温かな雰囲気が伝わります。人の名前を呼ぶ時に「○○」と呼び捨てにすると、どうしてもその後にネガティブな言葉が続くが、「○○さん」と呼んでから話し始めると落ち着いて話ができると先輩から教えてもらいました。特に生徒指導のときに役立った経験があります。挨拶も「○○さん、おはようございます」と名前がつくとより絆が深まります。
2 自分で振り返りをする
  「ルールを守れましたか? 守れた人は手を挙げてください」という教師の言葉をよく耳にします。手を挙げた人数が評価の基準となっています。守っていなくても挙手する子が出てきてしまったという経験はありませんか。授業も含め、学習規律の徹底にも子ども自身の振り返りを共有することをお勧めします。
T: 「ギユウギユウはどうでしたか」と発問をする
C1: よく守れた。手が届くようなところに人がいなかったよ。
C2: 手を洗う時にちょっとギュウギュウに近くなっちゃった。もっと離れて後ろで待てばよかった。
 他の子どもたちもC1やC2の意見を聞いて自分はギュウギュウを守れたと言っていいかどうかを判断し、明日からの行動を考えるようになります。
 近づきすぎると「ギュウギュウになっているよ。もう少し後ろで待ってね」と子ども同士が声かけ合うようになれば、規律がかなり徹底されてきたと言えるでしょう。
 教師は、子ども同士の温かくなるような声かけ場面をみつけ、その事例を広めることに力を注ぎましょう。「先生、そんなことまで見ていてくれたんだ。嬉しいな」と子どもが思うような場面紹介ができると信頼が深まります。

この事態における学校でのICT活用四方山話 Stage4<神戸>

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 今までは、授業に関することを書いてきましたが、今回は、学校生活について書いてみたいと思います。

★ 人と人との接触を減らす
 学校生活が少しずつ始められるようになったら、感染拡大防止のため人と人の接触を減らしたり、大きな声での会話を控えたりすることになるでしょう。そうなると、毎朝の健康観察の結果集計のために、養護教諭が各教室をまわることも止めなければならないし、子どもたちへの朝の口頭連絡も減らす必要が出てきます。同様に、職員間の打合せも口頭ではなく文字で伝えることが望まれます。こんなときこそ、ICTの活用を考えるとよいと思います。担任が教室からタブレットを使って、出欠席を入力するだけで、養護教諭の手元のPCに集計結果が表示される。養護教諭は各教室をまわらず、短時間で把握でき、的確な対応ができるようになります。連絡事項も口頭ではなく、掲示板機能を使って教室のディスプレや大型提示装置に表示すれば、概ねの連絡は完了できます。1人1台のPCが実現できていれば、子どもたちのPCに連絡事項が表示されます。職員間は、現状の統合型校務支援システムをフル活用すればいいわけです。ネットワーク環境はかなり整備されています。人の移動や接触を極力減らすために、ICTをどう活用するかを考えていくことが重要になるのではないでしょうか。今までとは違った、新しい学校生活を築くつもりで。

★ 使い回しのタブレット
 GIGAスクール構想が注目されていますが、1人1台のPCを実現している自治体・学校は、まだまだ少ないです。しかし、この事態ですから、授業が再開されれば、学校のタブレットを子どもたちに貸し出すことが考えられます。それでも、1人1台のPCが実現できる学校は少なく、1台のタブレットを何人かの子どもで使い回すことになるのではないでしょうか。手洗いを徹底させている状況ですから、タブレットも、使うたびに消毒・除菌を行わなければならないでしょう。しかし、そんなことは、現実的ではないです。そんなとき、次のような方法で活用しようとしている学校があります。それは、タブレットを無色透明な袋の中に入れて使い、使い終わったら袋を廃棄する。次の学級も同様の方法でタブレットを使う。こうすれば、タブレットの消毒・除菌を行う手間は省けます。袋への入れ替えは、先生が使い捨て手袋で行うそうです。
(こんな時だからこそ、許される使い方かもしれません。静電気や熱には十分注意)
 これだけのことをしてまでもタブレットを使うのには、「3密」を避けながらも子どもたちの学びを保障していこうとする姿勢からだと思います。

★ 子どもを守る、職員を守る
 さて、とっても難しい課題があります。それは、職員室です。想像してください。職員室の先生方の机の配置と机上の様子を。かなり密な配列がされ、たくさんの資料や本が山積み、空いているスペースなどほとんどないのではないでしょうか。子どもたちの安全を守るためには、子どもたちの前に出る先生方が安全な環境で仕事ができていなければならないはずです。毎日、毎時間かは分かりませんが、定期的に机上の消毒・除菌をする必要が出てくるのではないでしょうか。「3密」を避けるのは、子どもたちだけでなく、先生方も同様のはずです。
まずは、机上の整理整頓から。(ICTに関係ありませんでした。)

この事態における学校でのICT活用四方山話 Stage3<神戸>

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Stage2の「動画配信」は、ある意味一方通行な部分があることは否めません。普段の授業は、教師の発問や動きに対して、何らかの反応が子どもたちにあるものです。その反応が、さらに深い学びへとつながっていくところに授業の面白さがあると思います。
 そこで、オンライン授業を少しでも普段の授業に近づけていきたいという思いから、四方山話を書いてみようと思います。

Stage3 つながるための双方向授業づくり
★ 動画配信のその後に
いろいろな形で動画配信が行われています。しかし、その動画を観た子どもたちの「分からない」「何故だろう」という疑問や感想・意見をどう子どもたちにつなげていくのかで、先生方は苦慮しているようです。ある学校では、動画の最後に、「意見や質問はメールで!」と示し、学校の代表メールアドレスを紹介していました。これだけでも、子どもたちの学びを大切にしようとしていることが感じられます。学校と子どもがつながる手段として、メールを使うのはICT活用としても意義のあることだと思います。その後、その疑問を発信者に返すのみでなく、新たな課題として、学年の子どもたちへ投げかけ、子どもと子どもをつないでいこうとしているのです。ただ単に動画配信するより、かなり有効だと思いませんか。しかし、どうしてもタイムラグがあるため、間延びしないよう、つなぐ内容も、普段の授業以上に吟味しなければならないようです。
GoogleのClassroomやEDUCOMのスクールライフノート等を使うことで、疑問や意見を即座に共有することができます。そこから、友だちの考えやアドバイスを読み、課題を解決したり、学びを深めたりしていくことが可能性になっていくと考えられます。(通常の授業でも活用でき、さらに大きな効果が期待できます)
 この事態、動画配信を行うことは、とても価値のあることだと思います。しかし、それだけではもったいないと思いませんか。動画配信のその後に、チャット的なものや、ポートフォリオ的なものを入れることで、子どもをつなぎ、学びを深められれば、さらに価値あるものになっていくと思います。

★ テレビ会議システムの活用
このような事態になり、急激に学校教育に入ってきた「テレビ会議システム」を活用した「オンライン授業」。「動画配信」との違いは、リアルタイムに授業者が子どもたちの顔を見ることができること、子どもたちが授業者や友だちの顔を見ながら、授業に参加できることです。子どもたちの表情が見られるから意図的指名ができ、子どもの「分からない」をすぐに共有でき、子ども同士の話し合い・聴き合いができるところです。さらに、グループでの学び合いも可能になります。そう考えると、かなり普段の授業に近いことができるようです。しかし、目の前に子どもがいるわけではないですから、手元でやっていることが分からなかったり、分からない子どもが、隣の子にそっと聞いたり、周りの子の様子をモニタリングしたりすることは難しいです。こんな点から、授業者が子どもと子どもをいかにつないでいくかが、とても大切な要素となっていきます。
 授業スタイルは、Stage2の「動画配信」でも書いたように、普段の授業を行ってほしいと思います。スライドショーを一方的に説明しているような、よく見かける動画配信のスタイルではなく、子どもたちの思考に寄り添って、子どもたちの言葉を板書したりして、一時間の授業の流れが、カメラを通して子どもたちに分かるようにしていくとよいのではないでしょうか。折角、画面を通して、対面しているのですから。そのメリットが十分に発揮できるようにしてほしいものです。
それでも、目の前に子どもたちがいる教室での授業のようには、なかなか出来ないと思います。
得意な子どもは、それなりに学んでいくでしょうが、不得意な子は、一人だけでは困難な場面が多くなり、孤立してしまうかもしれません。「分からない」子どもを、通常の授業以上に大切にし、生かしていくよう心がけていく必要があります。また、保護者の協力は不可欠だと思います。十分な理解が得られるように努め、子どもたちを支援していただき、授業を進めていけることを願っています。

担任になったつもりで「心の天気」を説明(玉置)

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 我がゼミでは、EDUCOM「心の天気」を日々入力しながら、この「心の天気」の効用を実体験する取組を行っています。

 その中で、ゼミ生の金子さんが、もしこの事態(長期休校)で学級担任だったら、「子どもたちにこう呼びかけて「心の天気」を使って子どもたちと結びつきたい」という思いを動画で表してくれました。

 以下のところをクリックしていただくと、2分間の「心の天気説明動画」をご覧いただけます。ぜひご覧ください。(玉置)

https://drive.google.com/file/d/1o2ob-QtHeyzwku...

「心の天気」に関わってわずか1週間で(玉置)

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 大学人としての発信です。ゼミ生にEDUCOM製品の「心の天気」に日々取り組ませています。わずか1週間で、次のような感想を書いた学生がいます。「心の天気」のよさがよく分かっていただけると思います。

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 心の天気の研究に携わらせていただいてから、1週間が過ぎました。

 晴れ、晴れ、晴れと連日、晴れが続いていた私ですが、とうとう雷になりました。私は勝手に雷はイライラしたときの気持ちやどうにも言葉にできない気持ちを表すものだと解釈しています。

 昨日の夜遅く、雷になってしまいました。自分の情けなさや、周りに対しての不満。それらが雷の原因となりました。自分で頑張っていると思っていた事を心ない言葉で否定されると、もう、何というか、言葉にできなくて。雷雨になりました。

 頑張りは他人からは見えづらく、そして伝わりにくいです。また、自分が頑張っていると思っていても、人にはそれぞれキャパというものがあり、どうしても人は自分のキャパで人の頑張りを測ってしまいます。

 自分でもそれは重々承知です。自分も必ずキャパで人を測る一面を持っています。だから、日頃、私はなるべくその人のキャパでその人を見ることができるようによーくその人を見て、支えたり、支えられたらしてきたつもりです。

 でも、それが、なかなか上手くいきません。決して自分はできる人ではありません。だからこそ、周りと一緒に頑張りたいのに。

 志賀内泰弘さんの本にあった「気張る」それを私はまだできていないのでしょうか。あの言葉を見てからそれができるように心がけてきたのに、とてもとても難しいですね。

 心の天気はとても良い仕組みだとこの1週間感じました。心の言葉にならない気持ちを吐き出すことのできる小さな避難場所です。この避難場所があることがどれだけいいことか。言葉にできない黒く重い気持ちはその人の心にずっと靄のように居続けます。その靄は自分一人の力では吐き出せません。そんな時にこの心の天気は大活躍すると感じています。

 晴れになれるよう、美味しいものを食べたり、友達と話したりします!